糖尿病 Ⅲ【中半】若年発症成人型糖尿病 インスリン受容体異…
妊娠糖尿病
詳細は「妊娠糖尿病」を参照
症状
主要な症状
通常糖尿病患者は自覚症状はないと考えることが多い。下記に列挙するような手足のしびれや便秘などが実はあるのだが、特別な症状と考えていないことがある。血糖値がかなり高くなってくると、口渇・多飲・多尿という明白な典型的症状が生じる。これらは血糖値が高いということをそのまま反映した症状なので、治療により血糖値が低下するとこれらの症状は収まる。血糖値がさらに高くなると、重篤な糖尿病性昏睡を来たし、意識障害、腹痛などをきたすこともある。いっぽう発症初期の血糖高値のみでこむら返りなどの特異的な神経障害がおこることがある。また発症初期に急激に血糖値が上昇した場合、体重が減少することが多い(血液中に糖分が多い一方、脂肪細胞などは糖分が枯渇した状態になるためである)。
その他の症状は、たいてい糖尿病慢性期合併症にもとづくものである。
余命への影響
1971年から1980年のデータで糖尿病患者と日本人一般の平均寿命を比べると男性で約10年、女性では約15年の寿命の短縮が認められた。このメカニズムとして高血糖が生体のタンパク質を非酵素的に糖化させ、タンパク質本来の機能を損うことによって障害が発生する。この糖化による影響は、例えば血管の主要構成成分であるコラーゲンや水晶体蛋白クリスタリンなど寿命の長いタンパク質ほど大きな影響を受ける。例えば白内障は老化によって引き起こされるが、血糖が高い状況ではこの老化現象がより高度に進行することになる。同様のメカニズムにより動脈硬化や微小血管障害も進行する。また、糖化反応により生じたフリーラジカル等により酸化ストレスも増大させる。
糖尿病合併症
詳細は「糖尿病慢性期合併症」を参照
糖尿病合併症は3つの合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)が特徴的であり、総称して細小血管障害と呼ばれる。
- 糖尿病性神経障害
- 3つの合併症の中で最初に出現することが多く、末梢神経障害による手足先端のしびれや感覚の低下、自律神経障害による便秘・立ちくらみ(起立性低血圧)・勃起不全などを引き起こす。また、温痛覚が鈍り他の疾患の自覚症状に乏しくなることがある。臨床的には心筋梗塞の胸痛、重症虫垂炎の腹膜刺激症状、低温やけどなどが重要である。
- 糖尿病性網膜症
- 発症すると、硝子体や網膜の出血が起きるようになり、繰り返すごとに視力が低下する。生命を脅かすことはないが、QOLの観点から重要な合併症である。また突然の失明の危険性から激しい運動療法が禁忌になるため、治療自体の妨げにもなる。
- 糖尿病性腎症
- 3つの合併症の中で最も晩期に出現するが、最終的な寿命に大きな影響を与える合併症である。最初はごく微量のアルブミン尿のみだが、次第に明らかな尿蛋白や浮腫(むくみ)が出現し、最終的には腎不全となって血液透析が必要になる。
心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞といった血管系疾患のリスクが上がるのも重大で、細小血管障害と対比して大血管障害と呼ばれる。
他にも皮膚症状(糖尿病性リポイド類壊死)、創傷治癒能力の低下、易感染性(終末像は敗血症)などの症状が起こりやすい。
アルツハイマー型認知症
糖尿病はアルツハイマー型認知症のリスク要因となっている。インスリンの分泌を増やす糖質中心の食習慣、運動不足、内臓脂肪過多がアルツハイマー型認知症の原因となるアミロイドベータの分解を妨げているとしている。アミロイドベータも分解する能力のあるインスリン分解酵素が糖質中心の食生活習慣によって血中のインスリンに集中的に作用するため、脳でのインスリン分解酵素の濃度が低下し、アミロイドベータの分解に手が回らずに蓄積されてしまうとしている。
悪性腫瘍
1998年の久山町の調査では、糖尿病は悪性腫瘍死の発生のリスクを有意に増大させ、高血糖の程度を示すヘモグロビンA1cの高値の者ほど胃がんの発生率が高かった。糖尿病及び高血糖は悪性腫瘍の重要な危険因子である。糖尿病と診断されたことのある人はない人に比べ20-30%ほど、後にがんになりやすくなる傾向があり、男性では肝がん、腎臓がん、膵がん、結腸がん、胃がん、女性では胃がん、肝がん、卵巣がんでこの傾向が強かった。C-ペプチドは、インスリン生成の際、インスリンの前駆体であるプロインスリンから切り放された部分を指すが、男性では、C-ペプチド値が高いと大腸癌リスクが高くなる。C-ペプチドは男性の結腸癌と関連がある。
検査