豚丼
十勝地方の豚丼の一例
豚丼(ぶたどん、とんどん)とは、豚肉を調理したものを米飯の上に載せた丼物料理である。
目次
1概要
2帯広系豚丼
3牛丼チェーン店における豚丼
4その他外食としての豚丼
4.1スタミナ丼
4.2豚丼 (とんどん)
4.3大学丼
5中食
6家庭での調理(家庭用商品・レシピ)
7豚丼の日
8脚注
9関連項目
概要
豚肉を牛丼に似たタレ味に調理し、豚肉用に調合されたタレで煮込んだものをどんぶり飯の上にかける。帯広系豚丼は豚の焼肉を使用している一方で、牛丼チェーン店などによる割り下で煮込んだ豚丼も存在する。焼肉系の豚丼と割り下で煮込んだ豚丼とはかなり味わいの異なるものになるが、これらを含めた総称として豚丼と呼ばれる。
昭和時代初期に考案された北海道道東地方(主に十勝地方)の郷土料理を発祥とする。一方で、牛丼チェーン店のメニューとして牛丼の具を豚肉に代えたもののほか、豚丼を中心としたメニューを供する飲食店[1]もあり、日本各地で広く食べられている。また、食料品メーカ- から家庭用商品も販売されており、家庭料理としても供されている。
帯広系豚丼
ぱんちょう(帯広市)の豚丼
豚肉を砂糖醤油などで味付けした甘辛いタレで焼いたものを使用する。主に道東地方で広く食されている。豚肉の部位としては主にロース・ばら肉を使い、調理法も味わいも牛丼チェーンの豚丼とは異なる。十勝地方の郷土料理として多数の飲食店で供されているが、店舗によって肉の調理法(網焼きとフライパンがある)や、肉以外の具(白髪ネギ、グリーンピースなど)が異なっている。
ぱんちょう(帯広市)
帯広観光コンベンション協会、帯広シティーケーブルなどによれば、十勝地方に特有のこの種の豚丼は、1933年(昭和8年)に帯広市の大衆食堂「ぱんちょう」創業者である阿部秀司が考案したとされる[2]。
十勝地方では、明治時代末に養豚が始まり(この時代の開拓の苦労を表す言葉として依田勉三の句「豚とひとつ鍋」がある)、大正時代末期には豚肉料理が一般的になりつつあったが、食材や調理器具の制限で料理法が限定されており、特に豚カツなどは庶民が食べられるものではなかった。阿部は庶民にも食べられる料理ということで、鰻丼をヒントにした醤油味の豚丼を開発したという[3]。
豚丼としての歴史は古いが、新たに牛丼チェーンによる豚丼が広まってきたため、名称における紛らわしさを避ける目的で、帯広系豚丼、十勝豚丼、帯広豚丼と呼称する場合もある。いずれの場合も豚丼の読みは「ぶたどん」である。
牛丼チェーン店における豚丼
かつてすき家が販売していた豚丼
- BSE問題により牛丼の代替品として導入
2003年(平成15年)12月のアメリカBSE問題による牛肉の調達困難を受けて牛丼チェーン各社が相次いで牛丼の代わりに導入した、豚肉の煮込みを使用した代替商品の丼物の総称も豚丼と呼ぶ。
当初は、牛丼にできるだけ近い味を目指した商品であった。豚肉の特性に合わせた調理法・味付け・オペレーションが不十分・不徹底だった影響により低評価を下した客も少なくなかったが[4]、その後地道な改良を重ねて豚肉により合った調理法とオペレーションを築き上げ、独自の味付けに変化することで牛丼とは別の顧客が開拓された[4][5]。
各社での呼び方は少しずつ異なっており、松屋「豚めし(ぶためし)」、吉野家「豚丼(ぶたどん)」、すき家「豚丼(とんどん)」、なか卯「豚どんぶり(ぶたどんぶり)」となっていた。
- BSE問題解決により販売終了
その後、オーストラリア産牛肉の輸入やアメリカ産牛肉の輸入再開により、牛丼の販売が再開されたため、なか卯は2005年10月で豚どんぶりの販売を終了した[5]。吉野家・松屋・すき家では牛丼の販売再開後も豚丼の販売を続けてきたが、まずすき家が「牛丼の代替品の役目を終えた」[6]、「主力の牛丼とカレーを値下げするため」[5]として、2009年4月23日に豚丼の販売を休止した。
吉野家は2011年12月8日に「焼味豚丼 十勝仕立て」という名称で帯広系豚丼である焼味豚丼の販売を開始し、従来タイプの豚丼の販売を終了した。また松屋も2012年1月9日に店頭メニューとしては販売を終了し、店頭およびインターネットでの冷凍個食パックの販売のみ継続している。
牛丼に似せた代用品として販売開始された商品であったが、牛丼の再開後も豚丼を好む客層があった[5]。牛丼より価格が安いことのほか、「味があっさりしていて食べやすい」「豚丼が好き」「牛肉があまり好きではない」などの声もあったという[5]。2009年にすき家が豚丼の販売を休止したときもすき家では「一定比率の売上はあった」としていたほか、吉野家・松屋でも牛丼に次ぐ売り上げがあった[5]。上記3社とも牛丼の代用品としての豚丼の販売は休止したが、牛丼の代用品とは異なる形で豚肉を使用した丼物(吉野家の焼味豚丼など)の販売を継続している。また松屋は期間限定販売という形で豚めしの提供を行っている。
- 通年販売として復活
その後、2015年にすき家が豚丼の販売を再開し、2016年4月6日に吉野家が豚丼の販売を再開している(代わって、「焼味豚丼」は販売終了)。
その他外食としての豚丼
豚丼の一例
スタミナ丼
ニンニクをきかせた醤油だれや塩だれで味付けされた豚肉に、生の鶏卵を落とした豚丼を「スタミナ丼」として提供する店も存在する。東京国立市発祥とされる。
豚丼 (とんどん)
かつて大阪府で数店舗展開していた「とん丼亭」では、豚肉とキムチとニラを独自のたれで炒めたものを載せた丼物を「豚丼(とんどん)」として供していたが、現在は1店舗のみ営業しており、メニュー名は「とん丼」と表記変更している。
大学丼
「大学丼」として、近隣の大学に由来する地域密着型メニューになっている。大学丼祭というキャンペーンを度々行っており、近隣に知られている。上記の「とん丼亭」も、大阪学院大学のそばにある。
- 駒沢丼「ねぎ塩豚丼」
- かまた丼「彩り野菜のホエー豚丼」
- 東経丼「スタミナ塩すた丼」
- 帝京丼「ホエー豚の肩ロース丼」
- 仙台丼「ホエー豚の焼き肉丼」
- 中央丼「チンジャオ仕立てのホエー豚丼」
- 一橋丼「野菜たっぷり多摩すた丼」
中食
セイコーマートの豚丼(店内調理)
- スーパーマーケット等の惣菜コーナー、コンビニエンスストア、持ち帰り弁当店などでは「豚丼弁当」を販売している例もある。中には、配達サービスを行う店舗もある。
- 豚丼を販売する各牛丼チェーンでは、持ち帰り用の容器を用意しており「豚丼弁当」としても販売している。
家庭での調理(家庭用商品・レシピ)
- 手軽に調理できるレトルト・冷凍「豚丼の素」がグリコ、S&B、マルハ、ソラチ等の食品メーカーや牛丼チェーンの松屋や吉野家からも発売されている。
- あらかじめ調合された「豚丼のタレ」も各食品メーカーより発売されているが、こちらは「帯広系豚丼」のものが多い。
- 豚丼のレシピというと「帯広系豚丼」を指したものが多いが[7]、前述の牛丼チェーンの豚丼の影響もあり、そちらに類似した味を目指したレシピも増えつつある[8]。
豚丼の日
家庭用豚丼の素を発売している食品メーカーソラチが、2010年2月に2月10日を「豚丼の日」として日本記念日協会に登録し、PRや消費拡大活動を行っている[9]。
脚注
関連項目^ 「伝説のすた丼屋」「炭焼豚丼 豚野郎」など
^ 元祖豚丼ぱんちょう 帯広観光コンベンション協会
^ 十勝毎日新聞社連載記事「十勝豚丼物語」
dancyu 2005年7月号 特集:旨い!「丼」 / 豚丼は牛丼に勝てるか!?
「豚丼」はどこへ行く すき家は休止したが… J-CASTニュース 2009年4月17日
^ すき家が牛丼やカレーを値下げ、そして「豚丼」を販売休止へ GIGAZINE 2009年4月16日
^ 帯広発祥、甘辛味の「豚丼」のレシピ All About 2009年9月7日
「おもいッきりイイ!!テレビ」 年商60億円! 田中義剛秘伝のレシピ / 北海道十勝豚丼2008年11月19日放送
「豚丼」 きょうの料理(NHK)公開日:2009年10月12日、豚丼 味の素 レシピ大百科 など
^ 例として、クックパッドのレシピ検索 にて「牛丼 豚丼」「めんつゆ 豚丼」「吉野家 豚丼」「チェーン 豚丼」などの検索結果を参照
^ “2月10日は「豚丼の日」”. 十勝毎日新聞社ニュース. 2012年5月14日閲覧。
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