ヴェニスの商人【前半】目次・概要・物語

 

登場人物

  • アントーニオ - 貿易商人。正義感が強く情に厚い。
  • バサーニオ - 高等遊民。ポーシャと結婚する。
  • ポーシャ英語版) - 莫大な財産を相続した美貌の貴婦人。実は法学博士の称号を持つ才女。
  • シャイロック - 強欲なユダヤ人金貸し。
  • ジェシカ - シャイロックの娘。
  • ロレンゾ - ジェシカの婚約者。
  • ソレーニオ - バサーニオの仲間※1

※1このような人物が四人の本と二人の本とに分かれる。

  • ネリッサ - ポーシャの女中。
  • テューバル - シャイロックの友人。
  • ランスロット -シャイロックの召使。道化役。

反響

執筆当時はただの喜劇として見られていたが、ハイネは「シャイロックの悲劇」と呼び、観劇中後ろで涙を流している女性を見たという逸話が残る。

議論

第二次世界大戦後、劇中の第3幕第1場でシャイロックが、

「ユダヤ人は目なし、手なし、臓腑なし、感覚・感情・情熱、すべて無し。何もかもキリスト教徒とは違うとでも言うのかな? 毒を飲まされても死なない、だからひどい目にあわされても仕返しはするな、そうおっしゃるんですかい? だが、他の事があんた方(キリスト教徒)と同じなら、その点だって同じだろうぜ。キリスト教徒がユダヤ人にひどい目にあわされたら、(右の頬を打たれたら左の頬を差し出せという)御自慢の温情はなんと言いますかな? 仕返しと来る。それなら、ユダヤ人がキリスト教徒にひどい目にあわされたら、我々はあんた方をお手本に、やはり仕返しだ」

福田恒存訳 新潮文庫版を基に要約

と言ったのを捉え、民族差別問題と関連させる見方も増えている[要出典]。後述する映画などでは、その様な背景からそれまでただの悪人と見られていたシャイロックに対して、同情的な見解を見せる場面も増えた[要出典]

シャイロックに関する論議[編集]

印象的なシャイロックの台詞があり、またその役割にいささか喜劇とそぐわない側面がある点から、シャイロックには、他の登場人物にはない存在感と深みが感じ取れるのは確かで、彼を特別視しようとする論がある[要出典]。その極論が、「シェイクスピアは『ヴェニスの商人』で、当時のユダヤ人差別を批判したのだ」というものであるが、そこまで行かなくとも、シャイロックを偉大な悲劇的人物と見る意見がある[誰?]

福田恒存はそのような見方に対し、『ヴェニスの商人』が書かれ上演された時代背景を考慮せず、現代[いつ?]の視点から一方的に見た拡大解釈であるとしている[要出典]。実際、シャイロックの立場は、善と慈悲の象徴であるアントーニオを陥れようと法の厳格な執行を望み、逆に自分が法の執行を受けて破滅する、明らかに喜劇的なものであり、シェイクスピアも彼をそのような役回りに描いているのであるとしている[要出典]

それでも、後世の人々がシャイロックに近代的な複雑な性格を見出したのは事実であり、悪役を単なる悪役に終わらせないシェイクスピアの人物造形の力が、はるかに時代に先んじた優れたものであった証と言える[要出典]

一説にかの有名な探偵シャーロック・ホームズの綴り (Sherlock Holmes)のイギリスの名前においては特殊なシャーロックの由来だとされる[要出典]

学問上の問題

本作は現代における法学の教材とされる場合がある。

現代[いつ?]の日本の法律においては「肉は切り取っても良いが、契約書にない血を1滴でも流せば、契約違反として全財産を没収する」という理屈は成り立たない[誰?]。生きている人間の肉に血液が付随する事は必然であるため、民法第87条の1の規定によって血液は肉の従物とみなされ、2の規定によって肉を切り取るという契約がなされた以上は当然ながら血が流れる事は認められる。

本作における「借りた金を返すことが出来なければ、彼の肉1ポンドを与えなければいけない」という契約は、現代[いつ?]日本においては、民法第90条の「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする」との規定に基づいて、成立しないとされる[誰?]

経済学でも「貨幣」をめぐる議論として使われることがある[2]

関連作品