福島県沖地震(ふくしまけんおきじしん)とは、日本の福島県の沖合を震源とする地震である。

目次

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1概要
2主な地震
2.1869年
2.21938年
2.32011年
3その他の地震
3.11905年
3.21987年
3.31996年2月17日
3.42008年
3.52010年
3.5.13月14日
3.5.26月13日
3.62014年
3.72016年
4脚注
5関連項目

概要[編集]

福島県沖は北アメリカプレートと太平洋プレートの境界に接しており、日本海溝沿いにあるため、日本でも有数の地震多発地域である。1938年11月5日の福島県東方沖地震や2008年7月19日に発生した地震では津波を観測し、さらに福島県沖も震源域に含まれる2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災、同地域では本震直後に余震も複数回発生)では大津波によって福島第一原子力発電所事故を引き起こした。
東北地方太平洋沖地震の余震活動については「東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録」を参照
伊豆・小笠原海溝は太平洋プレートの高角の沈み込み帯であり地震カップリング率が低くプレート移動のひずみエネルギーの多くは非地震性の滑りで解消されるため巨大地震は起こりにくいとされ、日本海溝のプレート境界も従来のアスペリティモデルでは南部でやはり地震カップリング率が低く、宮城県沖・福島県沖など各セグメントを震源域とする地震は発生しうるが、複数のセグメントにまたがる連動型地震は起こりにくい場所とされてきた[1][2]。
江戸時代以降で福島県沖を震源域とする顕著な地震は1938年の福島県東方沖地震のみとされてきた。地震調査研究推進本部による2009年時点の「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価」では福島県沖のM7.4前後のプレート間地震の発生間隔は400年以上と評価されていた[3]。しかし東北地方太平洋沖地震は福島県沖を含む広大な範囲を包括する巨大地震であった[4][5]。
M7以下クラスのプレート間およびプレート内地震は1990年代以降続発している。
主な地震[編集]

繰り返し発生する地震や連動型地震で福島県沖を震源域に含むものをここで扱う。
869年[編集]

詳細は「貞観地震」を参照
869年に発生した貞観地震の震源域は少なくとも宮城県沖から福島県沖までの領域を含むと考えられる。東北地方太平洋沖地震と同様、震源域が三陸沖から茨城県沖、さらにそれらの領域の海溝寄りまで広がる可能性もある[6]。
1938年[編集]

詳細は「福島県東方沖地震」を参照
塩屋崎沖地震とも呼ばれる。1938年11月5日17時43分にM7.5、同日19時50分にM7.3、翌日6日17時54分にM7.4など大地震が続発した。
2011年[編集]

詳細は「東北地方太平洋沖地震」を参照
2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震の震源域には福島県沖も含まれ、海溝寄りで数m程度の滑りが生じたと考えられるが、全ての歪が解放されたかは不明である[6]。また、この地震の多数の余震が福島県沖でも発生している。
その他の地震[編集]

繰り返し発生する地震として扱われない地震をここで扱う。
1905年[編集]

1905年7月7日にM7.1の地震が発生した。規模が小さく被害も認められないことから地震調査研究推進本部は繰り返し発生する地震として扱っていない[6]。
1987年[編集]

1987年2月6日21時23分にMw6.1、同日22時16分にMw6.5、4月7日9時40分にMw6.6、4月23日5時13分にMw6.6の地震がそれぞれ発生している[7][8] 。
これらの内、2月6日22時16分の地震では小津波、4月7日の地震では負傷者1名を出している[9]。
1996年2月17日[編集]

福島県沖地震(1996年)
本震
発生日    1996年2月17日
発生時刻    0時22分
震央     日本 福島県沖
北緯37度18分30秒
東経142度32分48秒
震源の深さ    58km
規模       Mj6.8
最大震度       震度4:大船渡市・仙台市・福島市
白河市・川内村・水戸市
津波    なし
地震の種類    プレート内

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1996年2月17日0時22分に発生した地震(Mj 6.8、Mw 6.7-7.0)は深さ約55kmの太平洋プレート内で発生したものと推定されている。有感範囲は北海道から近畿地方まで及び、岩手県から茨城県の広い範囲で震度4を観測した。
同じ太平洋プレート内地震である1993年釧路沖地震や1994年北海道東方沖地震とメカニズム解が類似しており、本地震がプレート内地震であることを支持している[10]。
同日の5時59分(UTC)(福島県沖の約14時間半後)にはニューギニア島付近でMw8.2の巨大地震が発生し、日本の太平洋側でも津波が観測された。
2008年[編集]

福島県沖地震(2008年)
本震
発生日    2008年7月19日
発生時刻    11時39分
震央     日本 福島県沖
北緯37度31分12秒
東経142度15分48秒
震源の深さ    32km
規模       Mj6.9
最大震度       震度4:盛岡市・栗原市・郡山市・那須町など
津波    石巻 23cm
地震の種類    プレート境界

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2008年7月19日に発生した地震(Mj 6.9、Mw 7.0)は1996年のものとは異なり、CMT解によればプレート境界で発生した西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった[11]。
東北地方太平洋側各地で津波が観測され、最大の高さは宮城県石巻市鮎川で23cmであった。2日後の7月21日20時30分には本震の南南東側でM 6.1(Mw 6.0)の余震が発生し、宮城県の涌谷町と福島県葛尾村・会津若松市で震度4を観測した。
2010年[編集]

3月14日[編集]

福島県沖地震(2010年3月)
本震
発生日    2010年3月14日
発生時刻    17時8分
震央     日本 福島県沖
北緯37度43分4秒
東経141度49分0秒
震源の深さ    40km
規模       M6.7
最大震度       震度5弱:福島県楢葉町
津波    なし
地震の種類    プレート境界型
被害
死傷者数    負傷者1名
出典:特に注記がない場合は2010年3月の地震一覧表 (PDF)による。
プロジェクト:地球科学、プロジェクト:災害
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概要
発生時刻:2010年3月14日午後5時8分
震源:福島県沖
規模・深さ:M6.7・40km
最大震度:福島県楢葉町の震度5弱
岩手・宮城・福島の広い範囲で震度4、東日本の広域で震度3を観測したほか、北海道から滋賀県までの広い範囲で震度1以上を観測した。
前日の13日には前震とみられるM5.5の地震が発生し、やはり東北の広い範囲で震度3・4を観測している。またこの付近では1942年2月21日にM6.5、1963年8月15日にM6.6、1985年8月12日にM6.4の地震と、ほぼ定間隔で発生していた[12]。
この地震も2008年のものと同様に、プレート境界付近で発生した西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であった[13]。
被害
負傷者1人、住宅一部破損2件。[14]
6月13日[編集]

福島県沖地震(2010年6月)
本震
発生日    2010年6月13日
発生時刻    12時33分
震央     日本 福島県沖
北緯37度23分7秒
東経141度47分7秒
震源の深さ    40km
規模       M6.2
最大震度       震度5弱:福島県相馬市・浪江町
津波    なし
地震の種類    プレート境界型
出典:特に注記がない場合は2010年6月の地震一覧表 (PDF)による。
プロジェクト:地球科学、プロジェクト:災害
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概要
3月14日の地震とは異なる場所で発生した。
規模はM6.2、震源の深さは40kmである。
福島県相馬市・浪江町で震度5弱を観測したほか、東日本の広域と能登半島・静岡県にかけて有感となった。

2014年[編集]

詳細は「東北地方太平洋沖地震の前震・本震・余震の記録」を参照
2016年[編集]

福島県沖地震(2016年)
本震
発生日    2016年11月22日
発生時刻    5時59分(JST)
震央     日本 福島県沖
北緯37度21分12秒
東経141度36分12秒
震源の深さ    25km
規模       気象庁マグニチュード Mj7.4/モーメントマグニチュード Mw6.9[15]
最大震度       震度5弱:福島県白河市、須賀川市、国見町、鏡石町など
津波    仙台港 144cm[16]
地震の種類    大陸プレート内地震[17]
南東傾斜の正断層型
余震
回数    震度1以上:186回
M5.0以上:9回
(11月30日まで)[16]
最大余震    2016年11月24日6時23分、Mj6.2、最大震度4[18][16]

プロジェクト:地球科学、プロジェクト:災害
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2016年11月22日午前5時59分(JST)、福島県沖(いわきの東北東約70キロ沖)を震源とするM7.4の地震が発生し、福島県、茨城県、栃木県で震度5弱を観測した。大陸プレート内部で発生した地震で、北西-南東方向に引っ張られることで起きた正断層型の地震である。2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の余震とみられる[19]。2011年の本震以降、この地域の陸側プレートが東へ引っ張られることで発生する正断層型地震が増加しており、2011年4月の福島県浜通り地震も同タイプである[20][17]。東北大学と広島大学の研究グループによると、過去の海底掘削調査で報告されていた長さ30km以上の海底活断層が活動した[21]。
この地震で、北海道から和歌山県までの太平洋沿岸と伊豆諸島・小笠原諸島で津波を観測した[16]。最大波高は宮城県の仙台港で観測された144cmである[16]。1mを超える津波の観測は2011年3月11日の本震以来、初めてのことだった。宮城県東松島市の大浜では津波が岸壁を超えて60m内陸まで広がり[22]、最大4.0mの高さまで駆け上がった[23]。宮城県多賀城市では砂押川の水が逆流する様子が撮影された[24]。宮城県沿岸では養殖いかだに被害が出たほか、転覆した漁船がみつかった[25]。
気象庁は地震発生3分後の6時2分に、福島県に津波警報(予想高さ3m)、それ以外の青森県から千葉県九十九里・外房までの太平洋沿岸に津波注意報(予想高さ1m)を発表した。7時26分には千葉県内房と伊豆諸島に津波注意報を追加[19]。8時3分に、宮城県の仙台港で予想を上回る1.4mの津波が観測されたため、宮城県に出ていた津波注意報が8時9分に津波警報に切り替えられた[26]。仙台港で予想を上回る津波を観測した理由は、港のような閉じた地形では津波が高くなりやすいことや、地震を起こした断層の傾きによって特定の方向に強く津波が伝わりやすかったことが原因と考えられる[27][21]。