>  >  > 国民を一億総瞬殺する「破局噴火」がくる!

2016.06.27

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 4月16日の熊本地震の本震発生と同日、阿蘇山で小規模な噴火が起きた。今回の大地震を引き起こした布田川断層帯の延長線上にある阿蘇山は、この影響を受けて火山活動が活発になっている兆候が見られるという。そこで懸念されるのが、カルデラ噴火」や「破局噴火」と呼ばれる壊滅的な大噴火の発生だ。阿蘇山に限らず、ひとたび起これば“日本の終わり”につながる大噴火について考察してみることにしたい。

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イメージ画像:「Thinkstock」より

■日本を滅ぼす「カルデラ噴火」の恐怖

「カルデラ噴火」とは、地下のマグマが地上に一気に噴出する形式の大噴火のことで、場合によっては地球規模の大きな環境変化をもたらす。「破局噴火」とも呼ばれるが、これは2002年の石黒耀による小説『死都日本』でこの言葉が初めて使われてから、火山学者たちも学術用語として用いるようになった経緯がある。

 また、火山学では噴火の規模を表す尺度として「噴火マグニチュード」が用いられる。過去の日本の火山噴火でいうと、富士山の宝永大噴火(1707年)がM5.2程度の規模だった。M6.5程度のカルデラ噴火でも、場所によっては日本が壊滅の危機に瀕すると考えられている。

 では、ひとたびカルデラ噴火が起きると具体的にどうなるか? カルデラ噴火研究の第一人者である神戸大学大学院理学研究科の巽好幸教授(マグマ学)が『東洋経済オンライン』(2016年5月28日)で執筆した「阿蘇山『カルデラ噴火』が、日本を壊滅させる」を参考にすると、次のようになる。まず、広範囲に影響を及ぼすと考えられる火山灰の降灰で、電気・ガス・水道がストップし、民家が潰れ、高速道路も含めて車の通行が不可能になって交通もマヒし、食料配給も絶たれる。細粒の火山灰による人間や動物への健康被害、さらにコンピューターなどのハイテク機器の動作不良も懸念されている。また森林は完全に破壊され、回復には200年以上の歳月が必要となる。これはつまり、日本列島が動物も植物も生きることができない“死の地”となることを意味する。

 そして、さらに恐ろしいのが火砕流の存在だ。一口に火砕流といってもイメージが湧かないかもしれないが、これは赤熱した溶岩の細片や水蒸気、そして火山ガスなどが一体となったうえ、数百度の超高温で流れていくものだ。そのスピードは時として時速100kmを超え、標高千メートル級の山々も乗り越えて進む。これに巻き込まれれば全ての生命活動が奪われ、「瞬殺」となるという。

 実例を挙げると、約7300年前に鹿児島県沖の海底火山で起きた「鬼界アカホヤ噴火」では火砕流が九州の大部分を襲い、これが九州の縄文文化を壊滅させる原因となった。九州や四国の縄文人たちは死滅したか、または一部が食料を求めて火山灰の無い地域へ移住したと思われ、九州は千年近くも無人の地となった。そして火山灰は東北地方や朝鮮半島にまで降り注いでいる。このように、カルデラ噴火は文字通り人類の文明に「破局」をもたらしかねない大災害となるのだ。

 

 

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イメージ画像:「Thinkstock」より

■いつ来ても不思議ではない“破滅の日”

 さて、問題の破局噴火だが、日本列島では過去12万年の間に18回ほど発生しており、これは約6500~1万年に1回程度の周期で起きていることになる。そして過去7300年間、この破局噴火は日本で発生していないため、現在はいつ起きても不思議ではない期間に該当するのだ。

 2014年、前述の巽好幸教授らは、現在の日本におけるカルデラ噴火の発生率について「100年以内に1%」とし、最悪の場合は約1億2000万人が死亡すると試算した。つまり、この「最悪の場合」とは実質的に「日本の終わり」と同義ということになる。

 過去の記事でも紹介したが、2015年に英国・マンチェスター大学のアルバート・ザイルストラ教授(天体物理学)が火山愛好家たちの協力を得て「世界で最も危険な火山10」を選定した際、第4位に選ばれたのが日本の阿蘇山だった。阿蘇山の直下にはマグマ溜まりが存在するが、最新の研究でも、それがどれくらい巨大なものかは判明していない。もしも巨大なマグマ溜まりがあるとすれば、“破局”を迎える前提条件が整っていることになる。

 4月16日と5月1日に小規模な噴火を起こした阿蘇山だが、『週刊プレイボーイ』の現地取材によると、5月4日時点で、阿蘇山の火口に溜まっていたエメラルドグリーンの水がすべて消えていたというのだ。これが大噴火の前触れである可能性も、否定することはできないのではないか?