2017.02.05

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 ここまで、本インタビューでは過激な発言を連発してきた国際暗黒プロデューサー康芳夫氏。最後は自然と、いま世界中で人気を得ている“過激な発言者”について話が進んでいった。


ISより問題なのは、病めるアメリカ

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ドナルド・トランプ(Wikipediaより)

「今アメリカで、アメリカ一の大金持ち、(ドナルド・)トランプが大統領になる可能性が出てきたね。2月3日の報道では、トランプがオハイオで僅差でテッド・クルーズに負けたが、勢いは全然衰えていない。

 ヒラリー・クリントン対バーニー・サンダースも注目だ。彼はアメリカではタブーとされている極左社会主義者。彼がクリントンと互角の闘い。これには世界中ビックリではないだろうか。ここまでいくと、アメリカでは従来、絶対タブーとされていたヒットラーも顔負けのネオファシスト・トランプか、極左社会主義のサンダースが大統領に選抜される可能性が大きくなってきた。病めるアメリカの象徴的事件というにはあまりにも衝撃的。どっちが選ばれても世界は大変なことになる。これに比べればISISなんてちっぽけな問題だ」


――トランプがなぜあんなに人気があるのか不思議に思っていました。

「彼は共和党で圧倒的な支持を集めているね。でも良識的なアメリカ人はみんな反対しているよ。同じく、フランスの場合、右翼政党の国民政党で“移民を廃止しろ”って言い続けているルペン親娘っていう政治家がいる。かつてはお父さん(ジャン=マリー)が党首だったけど、いまは娘(マリーヌ)が党首になっていて、極めて過激なことを言っているんだけど、これまた、下手したら次期大統領選で当選するくらい人気があるんだよ! つまり、トランプもルペンも、2人とも極右なんだよ。言ってみりゃ“ファシスト”だ」

――極右で盛り上がっているのは、アメリカだけではないんですね。

トランプってのは言ってみりゃ“アメリカの(石原)慎太郎”なんだ。慎太郎も在任中は非常に人気があったね。なんで彼らが人気を得られるか? 特にトランプの場合は最近のテロ事件を背景に急激に支持率を伸ばしている。いくら良識派がガタガタ言ってもどうにもならないほどの人気を彼は共和党の中で得ている。クリントンに勝てるかどうかはまた別だがね、まあ場合によっては勝てる目が出てきてるんだ。これが大統領になったらとんでもないことですよ」

 

 

■テロリズムが右傾化を促進する

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ヒトラー(Wikipediaより)

――あんな物言いの人間が自由の国の大統領なんて、嘘みたいな話ですけどね。

「そう。ヒットラーが出てきた時にね、みんな“あんな馬鹿野郎”って言ってみんな相手にしなかったんだ。でも結局、彼はその後民衆の圧倒的な支持を得て総統になって、あんな事件を起こしちゃったんだ。責任は誰にあるかというとね、彼を選んだ民衆にあるわけだ。そこを考えなきゃいけない。今トランプが、誰かを脅かして人気を得ているわけではないんだ。ルペンもそう。テロリズムを背景に、世界中が急速に右傾化しているんです

――そう考えると、日本もその流れの中にあるのがわかりますね。

「もちろん日本もそう。安倍総理にとっては、彼のサポーターを増やすという意味で、テロリズムが幸いしてるわけです。“日本もやられちゃうんじゃないか?”という根強い不安感が、彼にとってはいい方向に出てるんだ」

――テロリズムが幸い……。

「問題はね、ルペンやトランプがポリティカルトリックを使っているわけではないってこと。民衆がサポートしてるだけなんだからね。ヒトラーもそう。問題はそういう社会的な土壌があってね、そこを解決しないといけないということなんだ」

――今は、民衆が極右政治を支持するような土壌が世界中にあると。

「なんでIS(イスラム国)のサポーターが世界中に増えているか!? アメリカにもフランスにもいますね。恐らく日本にもいる。徹底的に抑圧された連中がISの主張に感銘して、彼らのジハード(聖戦)に参加する気持ちになっている。極めて不気味な状況だが、この現実を直視して根本的対策を考えないといけない。空爆は一時的な鎮静剤にすぎない」


■生きていても仕方ないと思う心が殺人へ向かわせる

――現在、全世界的に景気が悪いという不況であることは、関係ありますか?

「そうだ。日本でも秋葉原で無差別殺人があったけど(※2008年秋葉原通り魔殺人事件)、今も次の無差別殺人が起きる可能性は高いとみてますね。秋葉原もISの連中も、“生きていてもどうせ仕方ないんだから、一発やってやるぞ”ってね。そういう人たちが出てくる土壌を徹底的に解明し、解決しないといけないんだ。パリのアラブ人街に僕は行ったことあるけど、それは惨憺たるところですよ。まさにゲットー。そこで不満分子は、生まれるべくして生まれてくるわけ。それをISがリードすればいいわけだから話は簡単だよ」

――閉塞的な状況が、ISにとっても極右政治家にとっても、追い風になっているんですね。

「前もこのサイトのインタビューで言ったことだと思うが、ベストセラー作家の百田尚樹って男が特攻隊の本を書いている(※『永遠の0』)。あいつに“特攻隊兵士の心情とIS兵士の心情のどこが違うんだ?”って何度も聞いてるけど、百田は答えない。俺はブログとかいろいろなところで“男らしく答えろ!”って言ってるけどね(笑)。でもヤローは答えない」

――相手に答えにくい質問ばかりをぶつけていくのは康さんの真骨頂ですからね。

「つまりね、両者ともメンタリティとしては、極めて自発的意思的に、志願してるわけだ。もちろん強制もあっただろうが、どちらも死を覚悟してやってる。彼らをそういうところに追い込んだ社会的歴史的土壌があって、まずそこを見なければいけない。つまり極論すると、第三次世界大戦は既に始まっているということですよ!」