2014.10.16

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 映画『アイアンマン』のモデルとなった人物としても有名なイーロン・マスク氏。PayPalの創業者であり、宇宙ロケット製造開発会社「スペースX」や太陽光発電企業「ソーラーシティ」、電気自動車会社「テスラモーターズ」のCEOも務め、今、世界で最も注目されるベンチャー経営者である彼の最終ゴールは、「人類の火星移住」である。

 2050年には90億人を超え、今世紀末には100億人を超えると予想されている人類。急激な人口爆発による地球温暖化や環境破壊による資源の枯渇など、人類が地球に与えるダメージは計り知れない。このまま人口が増え続ければ、海面上昇で多数の都市が海に沈み、台風やハリケーンが多数発生し砂漠化も進むなど、さまざまな被害が懸念されている。

 イーロン・マスク氏は人類の未来を繋ぐため、「火星へ100万人規模の移住が必要である」と主張し、スペースX社では壮大な挑戦を続けているという。マスク氏によると、「2026年までには、スペースX社が手掛ける宇宙船で人類を火星に連れて行くことができる」そうだが、彼は地球を救う救世主となれるのだろうか? 


■イーロン・マスク氏の華麗なる経歴

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イーロン・マスク氏 画像は「YouTube」より

 南アフリカ出身のマスク氏は1989年、18歳の時に母親の母国であるカナダに移住。サスカチュワンの小麦農場で貯蔵所の清掃をしたり野菜畑で働いた後、大学に進学する。大学卒業後は高エネルギー物理学を学ぶため米スタンフォード大学院に進学するが、わずか2日で退学した。

 退学後、すぐに自身初めての会社となる「Zip2」を設立する。「Zip2」は新聞社のサイトにコンテンツを提供するオンラインサービス会社で、その後急成長を遂げた「Zip2」社はコンパック社に3億700万ドルで買収された。マスク氏は「Zip2」株を7%を所有していたことから28歳で2,200万ドル(約23億7千万円)という大金を手にした。世間は“ITという宝くじを当てたラッキーボーイ”と冷笑していたが、マスク氏にとってその“ラッキー”は夢を実現するためのただの第一歩に過ぎなかった。その後もマスク氏の快進撃は止まるところを知らず、インターネット決済サービス会社(後のPayPal社)を設立し、2002年、31歳の時には宇宙に視野を向けロケット製造開発会社「スペースX」社を設立。電気自動車会社でもある「テスラモーターズ社」の会長兼CEOにも就任している。

 

 

■未踏の地、火星移住の実現性は?

 マスク氏によると、まず火星への移住に伴い、移住費用は一人50万ドル(約5,400万円)が最低必要だという。現段階では、火星の成層圏にエアロゾルの膜をはり地球上と同じような環境に調節する予定だが、SF映画のような居住スペース建設や、食糧やエネルギー確保のためのインフラ整備など課題は山積みである。

 また、火星移住の心構えも必要だ。要件をクリアさえすれば誰でも応募することができるが、地球への帰還計画はないのだ。しかし、そのような条件であっても火星への片道切符は競争率が高く厳しい販売になるだろうと見込まれている。

 マスク氏は「異星の空の下、地球をバックに不思議な砂漠を歩き、宇宙の神秘を感じる体験に魅力を感じる人は多いだろう」と語った。また一方で「熱帯雨林と海でサファイアのように光り輝く地球だが、今も数多くの人々が争いによって命を落としていることを忘れてはならない。かつての“エデンの園”はもうないのだ」と、地球の将来を厳しく見定めている。

 地球から火星へと移り住み、地球と同じような文明を築いていくためには、最低でも100万人の移住者が必要であるという。


■壮大なる移住計画はノアの方舟

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スペースX社が開発した宇宙船「ドラゴン」 画像は「Wikipedia」より

 移住が現実化すると今度は、100万人の移動をどのように行うかが焦点となってくる。一度の移動は100人が限度と考えられていることから、100万人の移住を終えるには地球と火星を1万回往復する必要がある。また、火星到着まで通常約6カ月かかると計算されており、それを考慮すると物資を先に届けて人は後から到着するのが現実的だ。しかし、移住に伴う移住者の荷物が仮に体重の10倍と計算すると、物資輸送だけで10万回の往復が必要となってくる

 マスク氏は、まず火星移住計画のための輸送船に課題をおいている。ロケットは打ち上げ後、機体を軽くするためタンクやエンジンを切り離すが、現在はコストダウンのために再利用可能なロケットの開発に取り組んでいるということだ。

 日本に目を向ければ、芸能人の岩城滉一が宇宙旅行に行くと発表し(利用会社はオランダのSXC社)、本来ならば今年4月から民間宇宙飛行への参加となるはずだったが、機体完成に遅れが生じてスケジュールが根本的に組み直されている状況だ。どちらの実現もまだ先のこととなりそうである。
(文=福島沙織)


参考:「Aeon」ほか