CGじゃない! 巨大旅客機と共に生身の人間“ジェットマン”がドバイ上空でランデブー飛行!!
2015.11.14
「Gizmag」より。
ドバイの大都市を見下ろす空をエアバスA380と共に滑空する物体が! 鳥か? 飛行機か? いや、あれは“ジェットマン”だ!!
■ジェットマンとエアバスA380の“編隊飛行”が実現
大空を自由に飛びまわる夢――。ハンググライダーやパラグライダー、スカイダイビングなどのスカイスポーツは多くの人々に楽しまれているが、他の航空機に勝るとも劣らないスピードで高高度の空を駆け回ることができたらどんなに痛快か夢見たことがある人も少なくないのではないだろうか。そして今、この夢が現実になった。
「我々はきっとタカかワシの隣を飛んでいる蚊のような存在になるだろうね」
フライト前にこう話したのは2人の“ジェットマン”の1人、イブ・ロッシーだ。そしてこの言葉の後、ドバイのエミレーツ航空が企画した航空史上に残る前代未聞のプロジェクト「ハロー、ジェットマン」で、エアバスA380と2人のジェットマンの“編隊飛行”が実現したのだ。
翼をつけた生身の人間が巨大旅客機と肩(!?)を並べて大空を飛び交う光景にはただ圧倒されるばかり。ジェットマンの4機の小型ジェットエンジンからは空に筆を走らせるかのように白煙が長く伸び、A380の主翼の両端を2人のジェットマンが挟み3機並んで飛行する模様はまるで夢の中の出来事のようだ。まさに映画の中のスーパーマンやアイアンマンのCGが現実のものになったこの映象は高度1200m付近で撮影された。
この歴史的な偉業を前に、2人のジェットマンとエミレーツ航空は入念な計画を練り、航路と撮影ポイントの選定、安全性の確保などを何度もシミュレーションしたという。特にジェットマンがどこまでA380に接近できるのかを見極めることが重要なポイントであった。A380の大型ジェットエンジンの排気が生み出す強烈な気流に巻き込まれてしまえば、死に直結する危険に晒されることになるからだ。
そして10月12日にテスト飛行が行なわれ、翌日の13日に本飛行に挑戦しこの映象が収録された。時間も航路も念入りに計画されていたため、本業の航空業務では若干のフライトの遅れは生じたもののキャンセルなどは生じず、両日共にエミレーツ航空のフライトはスケジュール通りに運行されたという。
2007年に就航した史上最大の旅客機であるこのA380だが、その大型の機体ゆえか、安定して巡航できる高度は若干高めの約1万2000mといわれている。この撮影で航行した高度1200mというのはA380にとっては当然かなりの低空飛行であるため、エミレーツ航空の2人のパイロットにとっても腕の見せ所になるプロジェクトであった。
撮影ではまず、2人のジェットマンを乗せたヘリコプターがドバイ上空1700mまで上昇。そこからジェットマン2人が飛び降りつつ飛行体勢を整え、高度1200mでA380と合流し、“ランデブー飛行”を成し遂げたことになる。撮影は別の小型機から行なわれているが、ジェットマンのジェットエンジンの連続航続時間は10分ほどであるため、チャンスは数分しかないシビアな条件下での撮影であった。映象にはないが、飛行後のジェットマンはパラシュートを開いて地上に戻ってくる。
今回の偉業に挑んだイブ・ロッシー氏とヴィンス・レフェット氏は空の世界では有名なジェットマンである。ジェットマンの“翼”を開発したスイス人のイブ・ロッシー氏はまた有名な発明家でもあり、2004年にジュネーヴ上空でジェットマンとしてデビュー(!?)して以来、この“翼”で世界各地の空を飛び回っているという痛快な人物である。スイス空軍の戦闘機パイロットだった時期もあるということだ。
このジェットマンの“翼”には特に呼び名はないようだが、ケブラー樹脂製の幅約2.4mほどの折り畳み式の機体で、小型のジェットエンジンが4つ搭載されており、最高速度は時速300kmにもなるということだ。今回の挑戦の前にも、最近のジェットマンはもっぱらドバイの空を飛んでいるようで、セスナ機とのアクロバット飛行に挑戦したり、ドバイのランドマークである世界一の高層ビル、ブルジュ・ハリファの周囲を旋回飛行したりと絶好調だ。
今後も我々の夢を乗せて飛んでもらいたいものだが、いつか墜落事故を起してしまうんじゃないかとヒヤヒヤする思いも……。無事にジェットマンを“引退”する日が来ることも同時に影から祈りたい。
(文/仲田しんじ)
【参考】
・Gizmag
http://www.gizmag.com/jetman-dubai-airliner/40280/