ビットコインの中核技術が“陰謀”に再利用される!ブロックチェーンが招く「恐怖の究極管理社会」
2017.01.17
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画像はThinkstockより
ビットコインというとマウントゴックス社で起きた巨額の被害を生み出した金融犯罪事件を思い起こす方も多いかもしれない。仮想通貨に乗せられて大損した投資家が悪いかのように感じている日本人も少なくない。事件を境にビットコインなど忘れてしまった方も多いだろう。
しかし、グローバルに見るとビットコインはむしろ大きく発展している。日本のどこかの銀行で巨額の横領が発覚したとしても、日本全体の銀行は健全に運用されているのと同じだ。マウントゴックスで事件が起きても、ビットコイン全体は安全に取引が行われている。
そのビットコインの健全性を保証する中核技術をブロックチェーンという。たとえビットコインの運営会社の残高記録が改ざんされたとしても、多数の分散されたネットワーク上に同期された記録が残っているので改ざんはすぐにバレてしまう。
このブロックチェーンの技術は極めて小さいコストでグローバルな金融資産の管理運用ができることから、メガバンクを中心に銀行の決済システムをブロックチェーンに移行することが真剣に検討されている。
さて、情報ソースは明かせないがこのブロックチェーンの考え方を応用して、本来は莫大な投資額がボトルネックとなってこれまで実現されなかったあるシステムが、2020年代を目途に構築されようとしているらしい。それは人類の監視システムである。
この動きの発火点はテロリスト対策に悩む欧州である。欧州経済委員会が昨年夏、自動車のミラーに関するルールを改訂した。これは「自動車に電子ミラーを搭載できるようになった」という経済ニュースで目にされた方もいらっしゃるかもしれない。これによって欧州では高級車から順に自動車のミラーがカメラに置き換わる動きがスタートした。
情報ソースによれば、この電子ミラーが捉えた映像を公共財にする動きがあるのだという。今流行りのIoT(インターネットオブシングス:モノがインターネットとつながる仕組み)の流れでこれから先に登場する乗用車はインターネットに接続されることになる。つまり運転する車から撮影された電子ミラー画像も巨大なネットワークにつながることになる
さて、仮にパリの交差点で歩行者と自動車の衝突事故が起きたとする。これまでなら事故に関する情報は目撃者の証言か、事故を起こした車に搭載されているドライブレコーダーの中にしか存在していない。ドライバーが自分の責任は小さいと思えばドライブレコーダーの情報を提供するし、自分の責任だと思えばドライブレコーダーを隠すだろう。
ところが多くの車の電子ミラーがすべてインターネットにつながると、事故の前後の状況がクリアに多面的な映像で再現できるようになる。その事故現場にたまたま居合わせた無数の自動車の電子ミラーに映った映像を統合すれば、事故の数分前にまでさかのぼって、交差点に向けてあわてて走る歩行者の様子や、スマートフォンに気を取られながら運転をする運転手の様子が再現ドラマのように復元できるようになる。
電子ミラーを搭載して街中を走る自動車はリアルタイムで無数のグーグルストリートビューと同じ映像を生み出すマシンである。自動車が行き来する場所であればどこでも、銀行強盗が逃げ出す様子や、大災害が発生した現場の状況も、電子ミラーという名の街中を走る無数の疑似監視カメラ映像から再現できるようになる。
犯罪者にとっては街中に監視カメラが設置されたのも同然なので、古典的な犯罪はスピード逮捕されるようになるだろう。こうして、5年後のヨーロッパの市民たちはテレビから流される犯罪者逮捕の映像を見ながら「安全が確保された」と感じるようになるだろう。
地球の管理者が考えたことはこう言うことだ。わざわざたくさんの監視カメラを市内に設置しなくても、ブロックチェーンの技術を応用して、自動車という無数にある“ノード”にその瞬間の映像情報を蓄積しておいて、問題が発生したときにだけ関係するノードの映像情報を検索すれば、低コストで都市全体を監視下に置くことができるようになるのだ。
未来のあなたのところに突然、警察官がやってくるかもしれない。
「先週起きたあのテロ事件の犯人のアジトにあなたが入っていく映像があるのですが」
「待ってください、それは他人の空似ですよ」
あなたはむなしく抵抗するかもしれない。
欧州だけでなく、米国、日本、そしてアジアの主要都市では誰の行動であれ“管理者”には容易に再現できるようになるそうだ。
「いや、この映像だけでも十分に証拠になるんですがね。念のため携帯電話会社からも裏を取らせていただきました。あなたのスマホのGPSも同じ時刻に同じ場所にありましたよ」
こんな時代がまもなくやってくる。
(文=王山覚/グローバルコンサルティングファームに勤務するビジネスウォッチャー)