産業革命(第1次)

18世紀中頃から19世紀初頭まで、イギリスに始まる機械制工場と蒸気力の利用を中心とした技術革新とそれに伴う社会の変化。

 産業革命(Industrial Revolution)は、18世紀後半のイギリスに始まる、綿工業(木綿工業)での手工業に替わる機械の発明、さらに蒸気機関の出現とそれにともなう石炭の利用という生産技術の革新とエネルギーの変革をいう。木綿工業から始まった技術革新は、機械工業、鉄工業石炭業といった重工業に波及し、さらに鉄道蒸気船の実用化という交通革命をもたらすこととなる。このような工場制機械工業の出現という技術革新が産業革命の一面であるが、それは激しい社会変動を生みだし、資本家と労働者という社会関係からなる資本主義社会を確立させた。このような技術革新から社会変動に至った一連の変動を、産業革命と言っている。 → 大西洋革命  二重革命
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産業革命の時期

 産業革命の始まりの時期については諸説ある。技術革新はすでに18世紀初めのニューコメンの蒸気機関や、1730年代のジョン=ケイの飛び梭の発明、ダービー父子のコークス製鉄法などで始まっているが、最も一般的な開始時期とされるのは1760年代ハーグリーヴズアークライトの紡績機が現れ、ワットが蒸気機関の改良に成功した時期から、というものである(A.トインビー、アシュトンなど)。
 さらに、クロンプトンのミュール紡績機を経て、蒸気力を機械の動力に応用したカートライトの力織機によって工業生産が飛躍的に増大した1780年代を産業革命という「離陸(テイクオフ)」した時期とする考えも出されている(ロストゥ、ホブズボームなど)。
 そして、1830年代スティヴンソンの蒸気機関車の実用化によって鉄道が急激に普及した時期までを産業革命の時代とすることが多い。なお、この軽工業での機械の出現と石炭エネルギーの使用の開始(第1次エネルギー革命)をもって第1次産業革命というのに対して、19世紀末から20世紀初頭に起こった、重化学工業の成立と石油エネルギーへの転換を第2次産業革命という。
 なお、イギリス産業革命の意義とその時期については、現在までにさらに修正的な見解も出されているので、下のイギリス産業革命の再評価を参照して下さい。 

技術革新の進展

 産業革命における工業生産技術の革新は、まず18世紀後半に軽工業の綿工業(木綿工業)から始まり、紡績(綿花から綿糸を紡ぐ技術)と織布(綿糸を織って綿布を製造する)の部門で競合しながら進んだ。同時に新しい動力として蒸気機関が生まれた。綿工業に必要な機械や製鉄業が次に発展した。また原料としての鉄、燃料としての石炭の採掘が平行して開発され、それらの原料や製品を市場に運ぶための交通機関の改良が行われた。産業革命初期には運河が盛んに建設されたが、次いで蒸気機関の交通手段への応用が開発され、1807年にはアメリカ人フルトン蒸気船を発明して帆船から蒸気船への転換をもたらし、さらにスティヴンソンが蒸気機関車(汽車)を実用化して1830年代に鉄道が普及、交通革命が起こった。これらが第1次産業革命の技術面での推移である。