ユリシーズ【小説】Ⅶ梗概十三~十五挿話【後】重要度〇位 

 

第三部 ノストス

第十六挿話 エウマイオス

ブルームは、スティーブンを休ませるため、近くにあった「御者溜まり」という喫茶店にスティーブンを連れてゆく。ここで酔った老水夫マーフィーに話しかけられ、スティーブンの父サイモンについてのほら話などを聞かされる。また、この店の主人「山羊皮」は、パーネル失脚の原因となったフィーニックス公園暗殺事件英語版)に連座した人物と噂される人物で、御者の一人がパーネルの帰国を予測する。ブルームは、コーヒーと甘パンを注文してやるが、スティーブンは食べることができない。二人は歴史、アイルランド、ユダヤといった、互いのアイデンティティに関わる事柄について議論し、またブルームは写真を見せて妻を紹介する。店を出ると音楽の話になり、ブルームはドイツ民謡を唄うスティーブンの美声に驚く。この挿話は、持って回ったくだくだしい文体が採用されている。

場面=御者溜まり、時刻=深夜1時、器官=神経、学芸=航海術、象徴=船員、技術=語り(老人の)、神話的対応=店の主人「山羊皮」がエウマイオス英語版)に対応する。

第十七挿話 イタケ

ブルームは、スティーブンを連れて自宅に帰ってくるが、鍵を持って出るのを忘れたため、柵を乗り越えて半地下エリアに飛び降り台所から入らなければならない。ブルームは、スティーブンにココアを入れてやり、古代ヘブライ語と古代アイルランド語の詩について話をする。ブルームは、スティーブンに泊まってゆくように言うが、スティーブンは断り、二人は裏庭に出て彗星を見、一緒に小便をした後別れる。ブルームは、妻モリーのいるベッドに入り、そこに性行為の後を発見し嫉妬と諦めを感じる。この挿話は、教義問答を模した形式で書かれており、問いかけに対する答えは過度な科学的詳細さで行われている。

場面=家、時刻=深夜2時、器官=骨格、学芸=科学、象徴=彗星、技術=教義問答(非個人的)、神話的対応=ボイランがエウリュマコスに対応する。(イタケはオデュッセウスの故郷)

第十八挿話 ペネロペイア

8つのパラグラフからなるモリーの独白で、句読点のない滔々とした文章になっている。その内容は、ブルームとボイランとの比較やモリーのこれまでの人生の回想、ブルームとの出会いや彼との生活、ブルームが連れてきたスティーブンのことなどである。最初は、ボイランとの行為を満足をもって振り返るが、やがて彼の粗野さに気付き、ブルームの優しさを再確認する。最後は、16年前にブルームからプロポーズされたときの回想と、それに伴って現れるYesという言葉で終わる。(and yes I said yes I will Yes.)

場面=ベッド、器官=、象徴=大地、技術=独白(女の)、神話的対応=モリーがペネロペイアに対応。