イーロン・マスク氏が「人類はコンピューター・シミュレーションの中で生きている」と考えるわけとは?
世界屈指のEVメーカー「テスラ」を率い、「SpaceX (スペースX)」で宇宙開発を進め、音速よりも速い列車「Hyperloop (ハイパーループ)」構想をうち立てるなど、イーロン・マスク氏は天才の名をほしいままにしている人物です。そんなマスク氏は以前より、人類が生きている世界について「我々はコンピューター・シミュレーションの中で生きている」という考えの持ち主であることが明らかになっています。
Why Elon Musk says we're living in a simulation - YouTube
マスク氏はこの世をコンピューター・シミュレーションであると考えています。
2016年6月に開催されたカンファレンスでマスク氏は、「私たちが住んでいる社会が基底現実である可能性は、ほとんどないと思います」と話し、その理由を語っています。
マスク氏いわく、我々が住んでいるこの世界は、コンピューターゲーム上で再現されている仮想の世界のようなもの。これは一聴すると「あり得ない」と思ってしまうものですが……
人間の社会は、このような「常識」と「真実」のせめぎ合いの歴史でもあります。かつて、宇宙は地球を中心に全ての天体が回っているという「天動説」が広く人々に支持されてきました。
しかし、その考えに異を唱えたのが16世紀から17世紀にかけての天文学者、ガリレオ・ガリレイでした。ガリレオは太陽を中心に地球が回っているという地動説を唱えましたが、これがもとで宗教裁判にかけられ、長らく異端の徒という烙印を押されていたのはよく知られたエピソード。その後、地動説が認められてガリレオの名誉が回復したのは1800年代になってからでした。
しかし、ガリレオ以前にも地動説を唱えていた人物は存在しました。紀元前300年ごろの古代ギリシャの天文学者アリスタルコスも地動説(太陽中心説)を唱えていました。しかし、当時も人々が信じていたのはアリストテレスが唱えていた「宇宙は地球を中心にしているものである」という説であり、その後2000年間にわたってこの説が正しいと認められることはありませんでした。このように、本当の姿というものが、人々に正しく捉えられていないということは、実はよくあることだというわけです。
マスク氏が幾度となく引き合いに出しているのが、スウェーデン人哲学者のニック・ボストロム教授が提唱している「シミュレーション仮説」です。