きちんとした目的を持って日々奮闘している者も、ただ何となくのんべんだらりと暮らしている者も、一年という歳月があっと言う間に流れ去るという実感に大差はありません。かつては身を引き裂いてしまうほどの情熱に息づいていた若い肉体と精神は、いつの間にやらそうではなくなっており、当初の計画に沿って上昇の道を辿り、歩一歩と着実に進むはずだった人生が、はっと我に返ったときには沈鬱な心に蝕まれており、何のために生きるのかというテーマに対する深い思いが見るも無惨に色あせ、そして、朽ちゆくままになっているおのれが忽然として現前するのです。
歓楽の日々に浸って浮かれ騒いでいるうちに、この世が戦いの場であるという意識がとことん薄れ、末枯れてゆくばかりの自分に気づいて愕然とし、あまりのことにたじろぎます。その反動として、来年こそは生きるという苦難の重荷を積極的に背負い、生きる証としての光輝を添えてみようという前向きな思いに駆られるのですが、しかし、連夜の忘年会と新年会をくぐり抜けているうちに、結局は飲んだくれた者のほうが勝ちを制することになるのだいう昔ながらの方便と隠すべくもない本音にひしとしがみつくことになり、美質を増すはずだった人生がふたたび煩悩のくびきにしっかりと繋がれ、新しい年を迎えた意味を自らの手でどぶに棄てることになるのです。
そして、こうのたまうのです。
「それが人間というものさ」