敗戦後、戦勝国家によって押しつけられた民主主義はほぼ七十年もの長きにわたって安定化の道を辿り、少なくとも経済面での豊かさは世界的なレベルに達したのですが、しかし、今年の春先に発生した大地震と大津波、それに伴う原発の大暴発という呵責なき戒めによって、国民の格に直結するものを何ひとつとして培ってこなかったことが露呈しました。
習熟せねばならなかった貴重な期間を浮かれ気分で無駄に過ごし、人間の本性にしっかりと根付いたろくでもない方向へとがむしゃらに突っ走り、則をはるかに超えて暴走してしまい、真の意味における自由な人間としてほとんど機能しなくなるまでに至ったのです。そんないびつな時代が煮詰まり、零落の方向へ傾きかけたところへ、あたかも止めを刺すかのように未曾有の悲劇と不幸が降り注ぎました。
そのあまりな衝撃によって一旦は正気に戻りかけたのですが、このとんでもない年が終わりかけている今、結局、「そんなこともあったなあ」という程度の認識を上回ることはなく、あたかも究極の安全圏に身を置いているかのような錯覚に浸ろうとしているのです。そして、見ないふり、聞こえないふりの姿勢へと引き返し、去年の今頃と同様、お祭騒ぎのクリスマスやわが国の文化レベルを露骨に象徴してやまない紅白歌合戦なるテレビ番組や来年の幸福を保証するという強引なこじつけの除夜の鐘に酔い痴れながら、本当の未来を開けるはずだった希有な機会を、戦後に引き続き今回もまたどぶに投げ捨ててしまうのです。