能力の欠落が露呈し、もしくは地位の高さを利用した悪事が暴露されて、さんざんあこぎな真似をしてつかんだ立場が危うくなってきたために、それをどうにかして誤魔化し、世間やら国民やらの目を逸らそうとするときの常套手段は、愛国精神とやらを焚き付けることと昔から相場が決まっています
それには、うやむやな形で棚上げされていた領土問題に火を点け、本当の敵が近隣の他国にあることを知らしめるのが一番手っとり早く、しかも、さまざまな不満や不安を抱えて、夢も希望も見いだせないまま面白くも何ともない日常をだらだらと生きるしかなかった大半の人々の漠然たる怒りの矛先を自分たちから遠く離れた一点に定めることができるのです。どこの国も結局は愚民で成り立っていますから、幼稚で、見え透いたその手口は繰り返し用いることが可能で、効果のほどもそれなりにあり、多くの人々がまんまと引っ掛かってしまい、国内の厄介な問題に対する苛立ちや憤懣は、いつの間にやら滅してしまい、それが狙いで仕掛けた為政者の身はひとまず安泰ということになります。
心の狭い民族主義に凝り固まっている、自称愛国者たちは、ここぞとばかりに威勢のいい自説をまくし立てたりしていますが、しかし、それほどまでに真剣であるのなら、先方の愛国者と称する連中がそうしたように、どうして体を張って「あの島」への上陸を敢行し、占拠しないのでしょうか。口先だけの憂国の士であり、営業右翼であるからでしょうか。ともあれ、領土問題は、所詮、国家を牛耳るあいつらやこいつらの誤魔化しの道具にすぎないことを忘れてはなりません。
ちなみに、オリンピックのメダリストたちも、有効な道具としてしばしば用いられるのです。