膨大な額の公共投資によって経済の回復を図り、好景気を取り戻そうとする安易な政策は、結局、国の借金を増やすだけの、実質的な効果がほとんど見込めない愚策の最たるものです。物価だけが上がって給料のほうはいつまでも上がらないといった悲惨な結果は目に見えており、更なる混乱と衰退を差し招くばかりで、あの馬鹿げたバブル期の再来なんぞにいつまでも期待していたならば取り返しのつかないことになってしまうでしょう。もうそろそろこの辺りで、妄想に限りなく近い願望や夢のたぐいとすっぱりと手を切り、無能にして無策な国家にすがってどうにかしてもらおうなどという、あまりにも虫のいい、過剰で、子ども染みた期待と縁を切らなければなりません。
いい加減に目を覚ましてください。
この国を駄目にしつづけてきた根本的な原因は、強い者にやみくもに従えばいい、従うしかないという、愚劣で卑劣な事大主義なのであって、それ以外ではありません。そして、事大主義を遺伝子に組みこませるほどになってしまったのは、自立の精神の著しい欠如なのです。そして、自立の精神の欠落をもたらしたのは、臆病や小心であり、独立心という当たり前の勇気を培わなかったのは、国家や社会や職場や学校や地域や家庭の過保護によるものなのです。
経済という過酷な現実を前にして通用するのは、最終的には蟻や蜂の世界に見られる統制のとれ過ぎた従属や死ぬまで働きつづける勤勉などではなく、個々の独立した人間としての質と格の高さなのです。そうした一番大切なことを押しつぶす方向で国家や社会を回してきた結果がこのざまなのです。ロボット人間をどんなに増やしたところで希望にあふれた未来は絶対に訪れません。