若い者たちに将来どんな仕事に就くべきかを問われたとき、決まってこんな答え方をします。最も個人的な、それゆえに最も重大であり、当人の尊厳そのものにかかわる問題を他人に訊くとは何事か。そんなことも自分で決められないようでは、他人の言いなりになってしまう、奴隷同然の人生しか送れなくなったとしても文句は言えないだろう、と。
そしてその後、必ずこんな言葉を付け加えます。尋ねられたから答えるまでのことだが、端的に言うならば、酒が鍵となっている、と。つまり、酒を飲まなければやっていられないような仕事は絶対に避けるべきということです。酒で誤魔化さないことには、どうにもストレスがたまって仕方がないと感じるような、そんな仕事は、所詮、仕事ではありません。
そしてまた、酒を飲みながらやれるような仕事もまた回避すべきです。仕事それ自体が面白く、しかも、持てる能力をフルに活用でき、底無しの奥深さを秘めた仕事を見つければ、おのずと酒には接近しなくなり、人生の本当の楽しみや喜びが一体どこに在るのかを身をもって悟ることができるでしょう。あまりにも安易に仕事を決めてしまうのは、あまりにも危険で、自らの生涯を棒に振ることになります。
ただそうは言っても、所詮、人は人でしかなく、ために、いつしか知らず、ずぶずぶとそんな酒びたりの人生を歩んでしまうものだという弁解をするようになったらもう手遅れで、その次は自然界の大失敗作である人間というお馴染みの結論に達し、生きたことにならなかったおのが一生を自嘲の言葉で飾り立てながら、緊張感に著しく欠ける余生のなかでひたすら安楽死を願うのみという悲惨な事態を迎えるばかりなのです。