日本が本当に世界に誇れる国となり、期待に値する未来を取り戻すためには、一過性の好印象とちょっとした利権をもたらすばかりのオリンピックを成功させることなどではなく、ましてや、天皇を中心とした軍事大国の復興などでも断じてありません。
その方向性はむしろ自滅と破滅をめざすばかりで、そんなことは子どもでもわかるはずなのですが、しかし、なぜか、なぜか、なぜか、分別を持っているおとなの国民が、まるでそっちにバラ色の幸福が待ち構えているかのような思いこみに捉われ、為政者が切り札のようにして用いる、《国益》なんぞというまやかしの言葉を、実際には国益などとはなんの関係もありはしない、いざ戦争となったら、棄てられる肉としての一兵卒の立場に追いやられてしまうだけの若者が、さも得意げに、さも勇ましげに口にするところを見かけるたびに、暗雲が立ちこめる殺伐たる時代の到来を創造【想像】しないわけにはゆきません。
真の教育とは国家から発せられた価値観を鵜呑みにすることではないのです。どの国家にしても、国家を統べる特定少数の者たちが味わっている《いい思い》を持続させ、発展させるための教育を国民に施したがり、よしんば真理であり、真実であり、正義であっても、かれらが押しつけてくる尺度に反することはすべて除外したがるものなのです。
つまり、真の教育を受けたいと心の底から願うのならば、自分自身を唯一の教師に育てあげるしかないのです。それには、おのれの目と耳と脳をすべてとし、国家が尤もらしい口調で学ばせようとする何もかもを一から十まで疑い、本当に学ばなければならないことは学校教育の外にあることに少しでも早く気づくべきでしょう。
あなたは国家の一員などではなく、国家の一部として組みこまれているパーツなのです。