ネトオク男の楽しい異世界貿易紀行 作者:星崎崑 163/164
第163話 ダイヤモンドは永遠の香り
「せっかくですから、ご主人さまに倒してもらうのです。私が使える、最高の補助魔法で」
そう言って、ディアナは詠唱を開始した。
ディアナの身体から溢れ出る桜色の輝き。
長い長い詠唱。
そしてその果てに、魔法は完成した。
〈我は盟約の種 ディアナ ルナ アーベラ〉
〈約束の日に至れ 運命を切り拓く力を今 ここに示さん〉
〈星々の煌きよ集え! トゥインクル・パレット!〉
魔法の力が、無限ともいえる極彩色の輝きを生み出し、俺の体を包み込む。
温かい力、俺は全能感に包まれた。
体が羽根のように軽い。頭は冴え、視力は上がり、力が湧きあがり、心は澄み渡っている。
なんだこれは……!
「トゥインクル・パレットは、この世界のすべての『魔術色』『精霊加護』の付与効果を一時的にすべて付与できる魔法なのです。今のご主人さまは、本物の無敵」
「すばらしい」
「ただ『狂化』もいっしょに付与されてしまうのが難点なのです」
のっそりとした守護騎士の攻撃を、悠々と躱し、相手が一つ攻撃するごとに10の斬撃を見舞う。
「主どのかっこいいであります。惚れなおしちゃうであります」
「ジ……ジロー……」
「まるで鬼神ですね、ジローさま」
「まさに伝説に聞く勇者そのものだな、アヤセくん」
「本当……。伝説の魔法……伝説の勇者……」
マリナ、レベッカさん、へティーさん、シャマシュさん、神官ちゃんが呟くのが聞こえてくる。
集中力は増しているのに、5感すべてがパワーアップしている。
雄叫びを上げながら、すべての連続剣にカウンターを入れる。
紙一重で斬撃を躱しながらの、返し技。
一つ攻撃が入るごとに、巨大なクラッカーを鳴らしたかのような音と共に光が飛び散った。
そして――
「……見事。見事だ、勇者よ」
守護騎士は、渋い声でひとことだけ喋り、光の欠片となって爆散した。