ネトオク男の楽しい異世界貿易紀行 作者:星崎崑 163/164
第163話 ダイヤモンドは永遠の香り
「それで、これからどうなるんだ?」
「ふふ、ここからがこの世界……いえ、宇宙最高の魔法の見せどころです。
今、この瞬間繋がった因果を起点とし、宇宙全体の因果律を再調整。
正史へと書き換えます」
しれっとなにかとんでもない事を言う大精霊。
宇宙全体って……大丈夫か……?
「私は、人造の神。運命を司る大いなる精霊ル・バラカ。ここに結ばれし因果、
永遠へと続く愛の縁をもって、この願いを叶えよう」
4枚の輝く純白の翼を広げ、ディアナへ手を伸ばす大精霊。
「手を。あなたがこれまで蓄えてきた精霊力が、あなた自身の運命を書き換えるのです」
ディアナが立ち上がり、大精霊の手を取る。
ポンッ! と、俺の天職板が飛び出す。
『運命の大車輪 9/10』が点滅している。
大精霊と手をつないだディアナの、出会ったころから見続けてきた幾何学模様の刺青、
『精霊紋』が輝く。(精霊魔法封印呪文)
輝き、煌めき、光の粒子となってポツポツと空へと昇っていく。
『運命の大車輪 10/10』
精霊紋が、光輝く粒子となって少しずつ浮かび上がり、やがて、
そのすべてがディアナの体から離れた。
「ディアナ……?」
「ご……ご主人さま……」
そこにいたのは、見たこともないような美しい少女。
精霊紋がすべて体から抜けたディアナの、その素肌を、俺は初めて見た。
抜けるように透明感のある乳白色の肌。
美しい曲線を描く細い眉。
今まで気づかなかったハッキリとした二重のまぶた。
白い肌を淡く染めるかわいい頬。
艶のある桃色の唇。
俺は、そのディアナの素顔に、魂を抜かれてしまった。
なにか言うべきなのに、なにも言うこともできず、ただ黙る。
初めて出会ったかのように、薄く頬を染めたディアナと見詰めあう。
『運命の大車輪
10/10』
点滅していた運命の大車輪の「?」の部分がすべて露わになる。
「ダイヤモンド……?」
「ご主人さま、知っていたのですね、ほら」
ディアナが見上げる先に、ディアナの精霊紋が集まり結晶化したものが浮かんでいた。
それは、紛うことなく――
「……ダイヤモンドの……精霊石」
俺の呟きに大精霊が答える。
「そうです。人が最も愛した結晶。特別な石、ダイヤモンド」
大精霊はディアナから手を離し、巨大なダイヤモンドの精霊石に触れる。
「では、ディアナ。はじめますよ」