ネトオク男の楽しい異世界貿易紀行    作者:星崎崑   163/164

第163話  ダイヤモンドは永遠の香り

 

 

 お導きの達成時にはなにが出る?
 言うまでもない。精霊だ。
 じゃあ、特別なお導きが達成となったら?

「……ありがとう、アヤセ・ジロー。あなたの愛で、運命は結ばれました」

 その精霊が、慈しみの黄金色の瞳で俺とディアナを見て、語り掛けてくる。
 その姿は、ここにいる全員が初めて見るにも関わらず、一瞬で誰なのかわかるものだった。

「私はずっと見守っていましたが、あなた方は、初めまして……ですね。

私は『精霊ル・バラカ』。この世界の運命を司る神」

 お導き達成時には精霊が出る。
 じゃあ、特別なお導きの達成となれば?

 この世界を司る三柱の神の一柱。

 大いなる精霊ル・バラカの降臨である。
 

「ディアナ。よく頑張りましたね。ここに、あなたのお導きは見事成されました。

これ以上ない形で」
「だ……大精霊……なのです? あなたが……」

 大精霊が出てくるとはディアナも予想だにしていなかったのか、軽く放心状態だ。
 秘策があるとは言ったが、ただ普通に達成して終わると思っていたのだろう。
 さすがのハイエルフも、神が出てきたら度肝を抜かれるんだな。

「達成……ってことは、正解だったのか? 教えてくれ、大精霊」
「はい。あなたは答えに辿り着いてくれました。あなたとディアナとで、この大いなる運命を引き寄せることができたのです」
「大いなる運命か。でも、大精霊が手伝ってたんだろ? 特別なお導きはそういうもんだって聞いたけど」
「ふふ、手伝ったのは途中までですよ。最初の夜、いきなりディアナがあなたに『永遠の愛』を迫った時は驚きました。あの時、もしあなたがそれを受けていたら……この因果は結ばれてはいなかったでしょう」

 

 なるほど、二人が出会ってからはディアナの頑張り、もしくは俺次第だったってわけね。

「この世界……エメスパレットが始まり、私はハイエルフを生み出した。すべては、私の原初の願いを叶えるため。そのための『特別なお導き』でした。しかし、このお導きを達成するには、これ以上ないほどの因果……運命が必要。それはまがい物・・・・の神である私では、引き寄せることができないものでした」
「でも夢幻さんが鏡を作ったこととか、俺がこっちに来たこととか、そういうの操作してたんじゃないのか?」
「私とて万能ではありません。因果律の操作と言っても、できぬことはできないのです。結果としてそうなった――というだけであり、私が操作したのは、ほんの少しでしかありません。夢幻の魔導士が地球を夢見たことも、その鏡をあなたが見つけたことも、あなたとディアナが惹かれあったことも――すべては、愛が導いた、そう、大いなる運命の輪に導かれての事だったのです」
「大いなる運命の輪……」