I 罠 get であります!

この度「リク魔人」の妄想宝物庫様 のseiさんより、

罠を奪取して参りました☆(ノ∀<)


文章構成力皆無のため色々とツッコミどころ満載です。

広い御心で読んで頂けたらと思います。


このほどは全く需要のない、

氣比の独白と言う名の毒吐きをつらつらと書き上げてしまいました。

しかも何故か結構力が入ってしまったという…orz

いやいや、キョーコと蓮に力入れろよ!と、

自分でも後からツッこんでしまいました。

投げ捨て御免!!


それでは以下より本文です。



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a dense fog



誤算だった。

まさか本当に敦賀蓮が京子のことを好きだっただなんて!


――俺が京子に興味を持ったのは、彼女がDARK MOONに出演した頃だった。

新人だけど、堂に入った演技をする女の子がいる。

役者の友人からそう勧められ、

なかなかリアルタイムでは見ないドラマを録画して見るようになった。


これが、本当に演技を始めたばかりの子なのか…?

俺は彼女が演じる未緒の憎悪に引きずり込まれた。



☆。・*☆。・*☆。・*☆。・*☆。・*☆。・*☆。・*☆。・*☆。・*



小学3年の時、交通事故で両親を失い、

一人生き残ってしまった俺は父の弟の家に預けられた。

親切にしてもらったが、自分より年下の従兄弟もいたため常に気を使っていた。

特に預けられて間もない頃、従兄弟はまだ乳幼児で、

叔父も叔母も仕事と育児で疲れているところにこんな厄介者がきたのだ。

出来る限り自分のことは自分でするようにしていたが、

それでも叔父と叔母にかかる負担は大きかったと思う。


高学年になった頃、もう一人従兄弟が増えた。

傍から見れば幸せな一般家庭だったと思う。

しかし、従兄弟と自分に対する叔母の態度をどうしても比べてしまう。


何故俺には従兄弟に向けられるような笑顔を向けてくれない?

何故成績が良くても従兄弟のように褒めてくれない?

父さん、母さん、何故俺を置いて死んでしまったんだ?


…俺はここにいても幸せになれない。

ここにいても迷惑になるだけなんだ。

高校を卒業したら就職しよう。

そう決めたのは中学2年の頃だった。


高校1年の夏にたまたま受けたスカウト。

その時は可能性のひとつとしてそういう選択肢もあるかと思い、

アルバイト代わりに雑誌モデルをすることにした。


転機が訪れたのは高校2年の冬。

もうそろそろ違う道も考えないといけない。

人気商売では収入は安定しない。

楽しくやらせてもらってはいたが、それとこれとはまた別。

高校の間にアルバイトとしてならいいが、

一人暮らしなどを考えたときに安定した収入がないと生きていけない。


ある程度纏まった金額が貯まり、着々と叔父の家を出る準備を進めてはいたが、

高校3年になったら身の処し方を考えなければと思っていた。

雑誌モデルでは将来の安定は望めないだろう。

そう思っていたところに、ドラマに出演しないかと声がかかった。


役を演じることはモデルよりも楽しかった。

クランクアップ後、他にも出演して欲しいと誘いを受け、

高校3年の夏くらいまでならとずるずると続けていくうちに、

俳優という職業に充実感を得ていた。


気付けばコンスタントに仕事が入るようになり、

月収は一人暮らしするのに十分な金額へと到達していた。

人気商売だからと敬遠していたこの業界にも可能性があると感じ、

高校3年の夏の終わりにはそのまま俳優を続けることを決め、

卒業と同時に家を出ること、

このまま俳優として活動していくことを叔父と叔母に話し、了承を得た。


だが、充実感を得ていたとはいえ、夢中になるほど本気だった訳ではない。

所詮演技なのだからと、心のどこかで思っていた。


しかし、DARK MOONで京子の演技を見て、彼女と一緒に演じたいと思った。

誰かの演技に触発されることなんて今までなかったのに、

京子の演技は“何か”が心の琴線に触れたのだ。


“何か”が何なのかは自分自身もわからないが、

京子の演技を見てからは、

それまで気にすることのなかった細部まで、意識して演技するようになった。

彼女の演技を見る毎に、彼女に会ってみたいという思いが大きくなった。

それどころか、これまで全く興味のなかった、

“異性”というカテゴリーまで意識するようになった。


調べていくうちに、彼女はLEMのラブミー部所属だということや、

敦賀蓮を尊敬して慕っているということがわかった。


敦賀蓮…。

世の女性が騒ぐのも無理もないと誰もが納得する、ハンサムな容貌。

均整のとれた体。

演技も妬ましく思うほど、とても素晴らしいものだった。


世の中にはこんなヤツもいるのか?

…いて、いいのか?!

神と言う存在がこの世にあるとするならば、それはとても不平等な存在だ!


京子が敦賀蓮をどの程度慕っているのかは、

“信仰しているらしい”とか“まるで世話を焼いている女房のようだった”とか、

あまりに偏った話しか耳に入らず、それが先輩後輩としてなのか、

それとも異性としてなのかは窺い知れなかった。


DARK MOONの打ち上げだという映像を見た時、

もしや敦賀蓮は京子に気があるのではないかと疑ったが、

その後暫くして彼は海外を拠点に活動すると発表して日本を離れたため、

見当違いだったかと胸を撫で下ろした。


演技に本腰を入れてから、俺は京子と共演できる機会をずっと窺っていた。

マネージャーにも、

もし京子と共演できるものがあれば優先して欲しいと頼み込んだ。

そして、今回やっとチャンスが巡ってきたのだ!

それも恋人という設定で!


撮影が始まってから彼女と話していく内に、彼女の印象が少し変わった。

くるくる変わる表情が、可愛らしい。

人の言うことを疑うことなく受け入れる。

素の彼女は年齢よりも幼い印象だった。


俺はこんな表情をしたことがあっただろうか?

学生時代を振り返っても、

人間関係を円滑にするために笑顔を絶やさない努力をしていたが、

こんなに素直な反応はしたことがなかった。

凄く、真っ直ぐで純真なんだな…。

自分にはないものを持つ彼女に、より一層惹かれていった。


冗談交じりに交際の申し込みもした。

一刀両断されると噂で聞いたが、返事は時間をくれというものだった。

演技に詰まっていたからというのもあるだろう。

しかし、もしかしたら可能性はゼロではないのかもしれない。

彼女を得るために距離を縮めようと逸る心を静めながら、

出来る限り京子と接触するようにした。


しかし、その矢先に入った、未定だった共演者決定の知らせ。

敦賀蓮――――またお前か。

卑怯ではあるが、彼女が揺れている今がチャンスだと思っていた。

この機を逃せば次はないだろう。


そこへ、この障害。


彼の出現で間違いなく彼女に接触する機会は減るだろう。

何故、今なのか!!

そう思っていた。


平静さを失い、感情が先走って失態を演じた。

彼女を警戒させてしまった!

信頼を取り戻さねばと監督に掛け合い、

彼女が演じやすいよう変更をかけてもらった。

しかしその晩、マネージャーから連絡が入った。


“敦賀さんが明日は早めに現場入りして欲しいと言っている”

今日の抗議か?しかし何故本人でもマネージャ-でもなく、敦賀蓮が…?

後輩を心配して?いや、それでもわざわざ…まさか。


そして、出向いた先で彼の表情を見て、

まさかと思っていたことが事実なのだと理解した。

彼の発言によってそれは確定してしまった。


彼は、京子を好きなのだ。


恐らくはこのドラマへの出演も京子ゆえなのだろう。

何故、お前が!

俺から、この気持ちすら奪っていくというのか?

俺には持ち得ないものを持っているのに!

恵まれた環境にいるのに!

そんな権利がお前にあるのか?!


年甲斐もなく冷静さに欠いた物言いをしていたら、

胸倉を掴まれ、不穏な言葉を耳打ちされた。


ヤ  ル  ゾ


…?!今、彼は確かに殺ると言ったよな?!

楽屋に入ってからの表情も、

普段の彼からは考えられないものだと思っていたが、これは…っ!


あまりに彼の評されるイメージからかけ離れた醜悪な発言、態度。

こんなヤツに彼女は譲れない!!

なんとしてもお前から京子を奪ってやる!!!

俺はそう決意した。