I 罠 get であります!

この度「リク魔人」の妄想宝物庫様 のseiさんより、

罠を奪取して参りました☆(ノ∀<)


文章構成力皆無のため色々とツッコミどころ満載です。

広い御心で読んで頂けたらと思います。

それでは以下より本文です。



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a dense fog



「どうして…あなたがそんな顔をしてらっしゃるんですか…?」



何故好きな人に演技指導だと言われ、キスされなければならないのか。

演技なら、いらない…。そんな指導はして欲しくない!

なんて、残酷なことをするんですか。

それに、あなたには好きな人もいるはずでしょう?

それなのに手のかかる後輩だから…心配だからって、

あなたは後輩相手にここまでするんですか?!


余程そう問い質したかったが、

敦賀さんの顔が視界に入ったら、それらの言葉は言えなくなった。


苦しいのは、私の方なのに。何故?



「もう間近で君の成長を見られないと思うとつい、ね。」



そして敦賀さんは唇で私の涙を拭った。



「…きゃっ!」


「…こういうことにも慣れないとね?」



困ったように笑った後、抱き締めていた片方の手で頭を撫でられた。

苦しい、悲しい気持ちとは裏腹に、心臓はうるさいくらいに鼓動を打つ。

口から飛び出すんじゃないかというくらいだったが、

暫く頭を撫でられていると、鼓動とともに気持ちも徐々に落ち着いてきた。


欠片ほどの思考力が回復してきた頃、気付けば抵抗する力は抜けており、

すっかり敦賀さんに身体を預けるような状態だった。



(いつの間にか敦賀セラピー状態だわ…。)



「ねぇ、最上さん。」


「…はぃ。」


「キス、してくれる?」


「…はぃ…ぇえっ?!」



ボーっとしていたら何かおかしい方向に話が進められようとしていた。

ちょっと待って、一体何でまたそんな話に?!



「言ったよね?これからも女優として演技を続けていきたいのなら、

君から出来るようにならないとって。それを今、実践してごらん?」


「む、むむむむむ無理っ!!無理ですぅっ!!!!」


「…最上さん?君、言ったよね?女優は続ける、演技からは離れられないって。」


「ああああああ、あのっっ!!!!」


「最上さん?」



敦賀さんの顔は似非紳士スマイルへと変貌していた。

キュラキュラと笑顔が突き刺さる。



(一体なんなの?!この状況!!!

なんで?

なんででこんなことになってるのっっ?!?!)



「…最上さん。」



パニックに陥るが、その間も時間は止まってはくれない。

確実にその笑顔は不機嫌なものへと移行しようとしていた。



「あ、あああああああのっ、め、目をっ!せめて目を瞑ってください!!!!」


「はい、どうぞ?」


(ええいっ、ままよっ!!)



結局、敦賀さんのOKが出るまで、私からキスする羽目になった。

翌日日本を発つ敦賀さんに送ってもらうのも恐縮だと言って、

送るよと言う敦賀さんの誘いを固辞した。


そんな事件の翌日。

笑顔で見送るはずだったのに、私はきっと変な表情しかしていなかったと思う。


その後、敦賀さんの指導のお陰といっていいのかはわからないが、

軽いキスシーンは演技出来るようになった。


敦賀さんとしたキスでは息も出来ないくらい鼓動が跳ね上がったが、

演技でするキスは緊張はするものの、

敦賀さんとした時のような胸のドキドキはない。

落ち着いて役に入りさえすれば、

演技でのキスは私にとって、割り切れるものとなった。


だが、ディープキスは…。

演技だとはわかっていても、役に入っていても、

舌が唇に触れた瞬間、相手を払い除けてしまう。

そして役が抜け、私の意識が浮上してしまうのだ。


“敦賀さんでなければ嫌だっ!!”と。


クッションを抱き締め、顔を埋めた。

どんなに切望してもこの気持ちが彼に届くことはないのに。

こんな不毛な願望は断ち切りたいのに。



「あなたのせいですよ…。どうしてくれるんですか…?」



決して届きはしない相手に思いを馳せる。

瞳から流れ出る水分は、クッションが吸い上げてくれた。

しかしこの溢れ出た恋情は宙に浮いたままだ。



「美亜を演じることで、思いを昇華だなんて…全然出来てないじゃない。

ホント、馬鹿だわ、私…。」



その日はそのままソファーで眠りに就いてしまった。