岸信介の呪いは、日本を再び破滅に陥れようとしている。

岸信介語録

 岸信介の言葉を拾うと、その政策がどれほど日本の市民社会を脅かす素になったかが良く分かる。山本義隆「福島の原発事故をめぐって」からの引用だが、

「日本は核兵器を持たないが、潜在的可能性を高めることによって、軍縮や核兵器禁止問題などについて、国際の場における発言力を高めることができる」(回顧録)

「「現憲法下における核兵器の保有は可能」という私の発言は、日本政府の見解として公式記録にとどめられることになった。…この憲法論は今日なお有効に作用している」

「平和的利用だといっても、一朝ことあるときはこれを軍事目的で使用できないというものではない」(参院予算委員会1959.3.21)

核兵器保有への道

 こうした核の軍事目的を隠しながら、1954年には原子力の国家予算がつき、1955年には原子力基本法が成立する。原発シフトは、エネルギー政策としてだけでなく軍事・外交目的を念頭にした国策として、遮二無二進められる。原発推進の背景は、あの膨大な利権だけではない。そして1960年に東京大学工学部に原子力工学科が設置される。これが電力会社、原発メーカー、政策・規制主体といった原子力ムラの主要メンバーの人材供給源になる。

 軍部が解体されることにより、通産省(1949.5.までは商工省。商工省は岸信介の出身母体で、満洲国で計画経済を試行し失敗させたことは言うまでもない)は敗戦前よりもさらに独占的な統制権を掌握することとなった。・・・通産省は原子力産業の保護育成のために、沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉をそれぞれ年平均一基程度づつ建設するように電力業界に要請し、電力業界はこれに応える形で九社による分担計画をつくり、それを実施してきたと考えられる。

 こうして、日本は今、国内に核兵器1250発分に相当する10トンのプルトニウムを貯め込んでいるとされる。

岸信介の呪い

 いまの安倍政権の方針は、岸信介の路線をそのまま継承させている。

 政権の主要スタッフは経産省出身者が占め、遮二無二原発再稼働に向かう。年金運用で政府は企業の大株主となり統制経済に進んでいる。

 防衛省の研究助成費は6億円から110億円に増大させる。2016年には日本は核兵器禁止条約に反対した。そしてオバマ大統領の掲げる核兵器の先制不使用に対し、安倍首相は反対の意向を示した。

 この先に何をしていくのか、明らかではなかろうか。岸信介の呪いは、その孫の安倍晋三に憑依して、日本社会を破滅に導いている。