安倍政権は、国家統制経済に向かっている。一部の経産官僚の仕業だろうか。

(1)国営化

 もっとも目につくのが、主要企業の国営化だ。 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と日銀を買い手になる。アベノミクス(のペテン)でGPIFの130兆円のうち25%まで日本株に運用できるようにして、株価維持政策を繰り広げた。その結果、東証1部2,000社のうち公的マネーが筆頭株主なのは484社、主要10位に入るのは1,917社にも上る。アドバンテスト、TDKでは18%、ファースト・リテイリングでは14%、ホンダ11%といった具合である。

 官製相場が市場を歪め、見せかけの景気で政権を維持させる問題も大きいが、このままでは政府が「物言う株主」になりかねないのが深刻である。安倍政権では、経済や経営の実態を理解しないで方針を打ち出してくる。プレミアム・フライデーが典型的だが、労働賃金の引き上げ、内部留保の投資促進など、デタラメなものも少なくない。軍事産業育成というのもあるだろう。まっとうな企業なら、こんなデタラメには対応はしない。ところがここで安倍政権は、物言う株主として「オタクのの株価は大丈夫でしょうかね」などと囁くことができる立場にある。こうして企業の意思決定を左右し、目を付けた企業には炎上事件をこさえて一気に経営権を握ることもありうる。

(2)官製ファンド

 経営権を握るときに動きそうなのが、官製ファンドである。

 官製ファンドは総額4兆円規模。産業革新機構2兆円、地域経済活性化支援機構1.2兆円、 中小企業基盤整備機構 0.5兆円が主だったところだ。そして目利きやマネジメント力に優れているわけでもないのに、ジャパンディスプレイ2千億円、ルネサスエレクトロニクス14百億円、と不振事業に巨額の投資を行う。シャープにも3千億円だそうとした。日の丸で技術流出を防ぐといったトンチンカンな発想で公金が費やされる道筋ができている。

 この調子で、安倍政権が思いついた成長分野、例えば医療やエネルギー、次世代インフラ、軍備、原発関連とかいった企業に投資をしていくのだろう。東芝も国営化しかねない。本来なら不自由で不効率、不公正な規制を見直してからでないと、こうした事業分野もイノベーションが生まれたり成長もしないものだが、そこは日の丸で監督官庁がお手盛りで優遇することもあるだろう。

(3)メディアコントロール

 政権のイメージづくりで、気に入らない企業を見せしめにする。

 働き方改革によって政権のイメージ向上を図るため、長時間労働やパワハラということで電通を槍玉に挙げる。東京五輪でミソをつけて、森元首相以下の暗躍ぶりがばれてしまったので気に入らなかったのだろう。もちろん電通の姿勢も問題であるが、厚労相が「社長1人の辞任ではすまない」とまで発言するのは裁量行政も行き過ぎだろう。そもそも、いままで何してたの? 国会答弁で役人を深夜残業させていて何なの? とかいろいろ突っ込みどころもあるが、やっぱりメディアコントロールで企業の評判・信用を左右するのが怖い。そのうち城南信金や通販生活などが、残業問題などで槍玉に挙げられるのではなかろうか。

 

 こんな感じで、国家統制経済にひたひたと向かっている。こんな集権システムがうまくいかないのは火を見るより明らかだ。中央政府には、市場や現場の情報を的確に得ることはできないし、関わる組織に適切な達成指標とインセンティブを与える能力もない。共産圏の計画経済が失敗に終わったのをちっとも学習していない。おまけに通産省の打ち出してきた産業政策は、岸信介らの満洲産業開発五か年計画以来、傾斜生産方式、新産業都市、テクノポリス、情報産業化などことごとく失敗してきた。高度成長の立役者というのは幻想に過ぎない。

 政府の役割はできもしないくせに個別の産業に手出しするのではなく、独占、外部不経済を解消することだし、いまの複雑怪奇で裁量範囲の大きな規制群を、簡素で効率的、そして公正な制度に改めることだ。規制主体が事業主体になるというのは、行司がまわしをつけて対戦するようなものでルールもなにもあったものじゃない。統制経済ではなくてオープンエコノミーにしていけば、ざっくり試算して一人当たりGDPでいまの46%ぐらいアップできるほどである。そもそも人びとの自由を奪うな!

 このままでは満洲に突っ込んでいった頃と同じ、国家破綻まっしぐらだぞ。