(※①がちょっとさかのぼりますが、テーマ一覧の「旅」カテゴリーで読んでいただければ、続きで読めますです)


翌朝、始発のバス(っても8時台だけど)で糸山サイクリングセンターへ向かいました。何気にむちゃくちゃ天気がよく、旅の門出(んな大げさなもんかい)を祝福してくれているかのようです。


本州と四国を結ぶ橋の中で、唯一未踏の地であったしまなみ海道。
明石海峡大橋、瀬戸大橋と大きく違うのは、1本の橋ではなく、7つの橋と6つの島によってつながれている点。徒歩や自転車で渡れるのもしまなみ海道だけですね。“7つの橋”っていうアイコンが、ちょっと冒険風でいいですよね。


スタートは、今治と大島を結ぶ来島大橋。7つの橋のうちもっとも長く巨大な橋です。
サイクリングセンターかららせんを描くようにして橋に上がると、早くも息が切れそうになりますが、スカイブルーの空をバックに背負った白い巨大つり橋は、これ以上ないほど旅の始まりにふさわしく見えました。


shimanami001

いよいよスタート!


そして、いよいよ橋に突入したときの、えもいわれぬ開放感!人も車も少なく、海はキラキラと輝いて、海に浮かぶ小さな島々は暖かな緑色。なんという清清しさ。なんというぜいたく!
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
と意味不明に雄たけびを上げてしまうほど、興奮しました。旅だ。これぞ旅!旅だよ!

ビルと人ごみとくだらないトピックスに取り巻かれたサラリーマン生活からの、つかの間の脱却。わたしは、何かに吸い込まれるようにして、橋を突っ走りました。ほとんど橋独占状態で、しゃこしゃこと自転車を漕いでいると、羽でも生えて飛んでいるかのようでした。
目に映るのは、瀬戸内らしい穏やかな海の光景。9月に夏休みを取ったとき、帰省ついでに直島に行きましたが、瀬戸内海の海風景って、平和をそのまま絵に表したようで好きなんです。太平洋ののんびりとした雄大さとも、日本海のシャープな厳しさとも違った、独特の穏やかさと空気感。


最初の島、大島にはスタートから40分で到着しました。なかなか快調なペースなのではないでしょうか。
道の駅にて揚げたてのじゃこ天を食べれば、これがすこぶる美味しく、普段吸血鬼のようにテンションの低いわたしにしたらマックスに近いゴキゲン状態。ゆずドリンクで喉もうるおしたし、さあ行くかと自転車に手をかけると……
カギが開かねーじゃねーか!!!ダイヤル式のカギが、定めた番号を入れても開かねー!


(思えば、ここから徐々にケチはつき始めていたのです…今にして思えば)


10分にわたる格闘ののち、すごくくだらない感じでカギはあっさり開いたのですが、まだまだ道のりの長いうちから、思わぬところでヒットポイント激減。
にもかかわらず、「出来ればどの島もただ通り過ぎるだけではなく、ひとつずつくらい観光スポットを押さえたい」という悪癖が出まして、大島いちの絶景スポット、亀老山展望公園を目指して、チャリンコをしゃこしゃこと漕ぎだすわたし。


ところが、公園までの道がえんえんと上り坂なんですわ!ギアをマックスにしても漕ぎ切れず、チャリンコを押して歩いていたのですが、本当に到着できるのか?とだんだん不安になってきます。
ちょうど、民家の庭におじちゃんがいたので、
「すみませーん、展望公園ってこの道まっすぐですか?」と尋ねると、
「公園?あー、あの山の上だよ」
…って、もしかして、わたしの視界の先にそびえている、軽く登山が楽しめそう♪なあの山の上かっ?!わたしの遠近感に間違いがなければ、これは、いくらなんでも遠すぎる…。
それでも若干の希望を持って、おじちゃんに、あとどれくらいですかね?と聞けば、んー40分くらいかねーとの答え。40分て!往復80分!帰りは下り坂だとしても1時間はかかるってことかい!
以前のわたしなら、意地になって突き進んでいたかも知れません。ここまで来た労力がもったいない!とか云って…。しかし今は悲しいかなリーマン旅行者、しかも出張のついでに来ているという極度に制限された(?)旅。
わたしは大人になって、すごすごと来た道を引き返しました。


あーしかし、思わぬところで時間のロスをしてしまったわい。。。
まだあと何個島があると思ってんだよ!もっと計画的に進まなければ…。
というわけで、次の島・伯方島へ急ぎます。
大島の出口直前でまた、「村上水軍博物館」なるトラップがわたしを待ち受けておりましたが、泣く泣く振り切って大島を出ました。


伯方島は、「伯方の塩」で有名な島です。
橋を降りてすぐのところにある道の駅では、塩ソフトクリームなる甘味が販売されており、これを食しながらしばし休憩。時刻は12時前。ちょっとばかし早いけれど、ここらで昼食を取っておくか。
実は(と云うほどではないが)わたしは、昨夜ガイドブックを読んでいたときから、本日の昼食を「伯方の塩ラーメン」と決めていました。
ところが、このラーメン屋、しまなみ海道沿いではなく、まったく逆方向の、島の東部にあるのです。距離を見てみるとここから6キロ。ということは、往復で12キロか……うーん……12キロ……。


行ける!
1キロを15分で歩く計算で行けば、チャリンコだもの(byみつを)、12キロくらい大したことはないはず。
しかも、お腹を満たしたあとの6キロなんて、感覚的には駅からウチくらいの距離だよな?


…わたしは島におけるサイクリングというものを、完全にナメていたのです。
島というのは基本、アップダウンの激しい地形。それを忘れてチャリンコを漕ぎ出したわたしは、さっき展望台に行こうとしてザセツした経験をまったく活かせていないようです。
うううおおおお、つれ~わ~これ…;_;
肉眼で確認できるかできないかくらいのゆるい坂道さえも、チャリダーには大いなる責め苦です。
正確な地図もないので、ひたすら道の続くのを頼りに進むしかありません。そろそろか?そろそろか?…って思うんですが、6キロってのはけっこう長い!行けども行けども、ラーメン屋のある木浦エリアにたどり着かん!


そして、軽く30分は漕いだでしょうか…。
ようやく、目当てのラーメン屋に到着しました。小さな町食堂といった風情の外観です。
中に入ると、地元客と観光客が半々くらいの割合でいました。果たしてこの人たちは…チャリンコでは来てないよなーきっと…。車だったらヨユーの距離なのにな。
500円の塩ラーメンは、さすがに腹にしみわたりましたが、12キロの道のりと差し引きすると、若干マイナスが出るような気はします。。。いや、美味しかったけどね。


shimanami026

12キロの成果。


昼食にまたも時間がかかってしまったため、各島での寄り道を組み込むのはいよいよ難しくなってきました。
次は大三島。しまなみ海道じたいは島の右端をちょろっと走っているだけですが、6島のうち最大規模を誇り、見どころもいろいろあります。
島の西にある大山祇神社には、義経が着用したと云われる鎧が奉納されています。義経ファンのわたくしとしては、出来れば外したくないスポットですが、道の駅で聞いてみると、「途中、山を越えて行きますんでねえ…自転車は厳しいんではないでしょうか」と悲しいお知らせが…。
仕方ないので、道の駅でみかんゼリーを食べたり、近くのみかん工場でみかんジュースを飲んだりと、ビタミンCを取りまくったのみで大三島を去ることにしました。


大三島と次の生口島を結ぶ多々羅大橋を渡っていると、青空の色が徐々に薄くなり、陽光が白からオレンジ色へと変わりつつあるのを感じました。
3時40分か…。レンタルサイクルの返却時間は6時です。島はあと3つ…。これってけっこう、けっこうヤバめだよね?!
急げ!急ぐんだわたし!


shimanami038
多々羅大橋。