伊藤真の民法入門 講義再現版の勉強 メモ1 | 法律せんか

伊藤真の民法入門 講義再現版の勉強 メモ1

伊藤 真
伊藤真の民法入門 講義再現版  を読んでいる。記憶のため、確認する。

第一章 概説

1-1 民法とは何か
1)はじめに・・・民法とは、自由主義思想に基づいた市民社会のルールである。
2)民法の役割・・・私法の世界では、市民の考えが尊重される(私的自治)。民法には、最低限の市民社会のルールである強行規定と、当事者の意思を補充する任意規定がある。
3)民法の考え方・・・市民社会のルールゆえ、市民感覚に合うことを要するが、そのためには、
①(価値判断→法律構成の発想先に妥当な結論を考え(価値判断)、その後、それを正当化するために法律を技術として使う(法律構成)。
②(原則修正のパターン)条文を形式的に適用すると~という結論になる。しかし、それでは価値判断として不都合。よって修正することを要する。法律解釈によって、法律構成する。
③(効果→要件の発想)条文は、要件→効果の組合せで出来ているが、要件から「何ができるのか」と考えるのではなく、先に「何をしたいか」と効果を考え、そのために必要な要件を考える。
④(常に民法全体を視野に入れる発想)総則、物権、債権、親族、相続は相互に関係しあっている。同じ効果を生じさせるためにもいろいろな方法がある。比較しながら考える。
4)民法の勉強の仕方
①まず、民法全体を概観する。
②具体的に考える。

1-2 財産法の仕組み
1)人と物との関係―物権
2)人と人との関係―債権
①契約
②不法行為
(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
→損害賠償債権(請求権)の発生
③事務管理
(事務管理)
第六百九十七条  義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理(以下「事務管理」という。)をしなければならない。
(管理者による費用の償還請求等)
第七百二条  管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。
→「義務なく他人のために」頼まれたわけではないけれど、良かれとしてやった場合には、費用を請求できる。つまり、債権の発生。
④不当利得
(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う
(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条  悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う

3)物権法と債権法の概略
4)民法の全体図


第二章 財産法

2-1 財産法の全体像

2-2 主体
1)自然人と法人
(法人の成立)
第三十三条  法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。
(法人の能力)
第四十三条  法人は、法令の規定に従い、定款又は寄附行為で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

2)制限能力者
①未成年
②成年被後見人
③被保佐人
④被補助人


①未成年
(未成年者の法律行為)
第五条  未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
2 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる
3 第一項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
②成年被後見人
(成年被後見人の法律行為)
第九条  成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
③被保佐人
(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条  被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一~九 ・・・
2  家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
3  保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる
④被補助人
(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条  家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2  本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3  補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4  補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる

2-3 契約の成立から効力発生まで
1)有効に債権債務が発生するまで
 成立→有効→効果帰属→効力発生

2)契約の成立要件 ・・・申込の意思表示と、承諾の意思表示の、合致

3)契約の有効要件 ・・・有効=法的保護に値する、契約の拘束力を認めるに値する
①取消しと無効
 取消し=取り消すまでは有効。取り消すと最初から(遡及的に)無効になる。
「取り消すことができる」=選択権が与えられる:詐欺、脅迫、制限行為能力

(詐欺又は強迫)
第九十六条  詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。
(取消権者)
第百二十条  行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
2  詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。
(取消しの効果)
第百二十一条  取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。ただし、制限行為能力者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
②心裡留保
(心裡留保)
第九十三条  意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。 →・・・善意軽過失、善意重過失なら無効、だ。
③虚偽表示
(虚偽表示)
第九十四条  相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする
2  前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない
④錯誤
(錯誤)
第九十五条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
善意無過失=全く不注意もなく、知らなかった
善意軽過失=軽い不注意があって知らなかった
善意重過失=重大な不注意があって知らなかった
悪意=知っていた
⑤(当事者の意思表示の有効性VS)契約内容の有効性
確定性:内容が不確定では×
実現可能性:昨日消失した別荘では×
違法性:麻薬の売買契約は×
社会的妥当性:愛人契約は×
(公序良俗)
第九十条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

4)契約の効果帰属要件
代理・・・①制限能力者の法定代理、②法人の代表、③任意代理
代理の要件・・・①代理権、②顕名、③代理人と相手方の有効な法律行為
無権代理、追認
表見代理=動的安全、取引安全の制度
静的安全を保護するVS動的安全(取引)を保護する →静的安全と動的安全の調和
(代理権授与の表示による表見代理)
第百九条  第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
(権限外の行為の表見代理)
第百十条  前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
(代理権消滅後の表見代理)
第百十二条  代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

5)契約の効力発生要件
条件=不確実なもの
期日=確実なもの

6)まとめ


2-4 物権
1)物権の客体
(不動産及び動産)
第八十六条  土地及びその定着物は、不動産とする。
2  不動産以外の物は、すべて動産とする。
3  無記名債権は、動産とみなす。
不動産とは、土地と建物。立ち木は土地の一部。
2)物権変動
所有権などの物権の、発生、変更(移転など)、消滅
①意思主義
(物権の設定及び移転)
第百七十六条  物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。
②所有権の移転時期 ・・・契約時
③対抗要件主義 …公示の原則
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条  不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない
(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
第百七十八条  動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
④不動産、動産の二重譲渡
⑤なぜ二重譲渡はできるのか ・・・不完全物権変動説
⑥第三者の善意・悪意 …善意・悪意に関係なく、登記が優先する。ただし、背信的悪意者の場合には、登記なくして(登記が優先せず)、所有権の主張ができる
⑧公信の原則 …公示たる登記を信じて、取り引きしても(真実に所有者がいれば)、保護されない。=不動産には公信の原則が適用されない。
 一方、動産の場合は、引渡し(占有)を信じての取り引きは(真実に所有者がいても)、保護される。=即時取得=動産には公信の原則が適用される。
(即時取得)
第百九十二条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
3)占有権・所有権

物権的請求権 …返還請求権(返せ)、妨害排除請求権(出て行け)、妨害予防請求権(倒れてこないよう手を打ってくれ)
4)用益物権
①地上権
②永小作権
③地役権
④入会権

①地上権
(地上権の内容)
第二百六十五条  地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
②永小作権
(永小作権の内容)
第二百七十条  永小作人は、小作料を支払って他人の土地において耕作又は牧畜をする権利を有する。
③地役権
(地役権の内容)
第二百八十条  地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利を有する。ただし、第三章第一節(所有権の限界)の規定(公の秩序に関するものに限る。)に違反しないものでなければならない。