北口氏コラム特集2 2014FIBAコーチクリニックに参加、試合観戦で感じた世界基準 | フープドリームズ【子どもの心技体を育てる地域コミュニティを民の力で運営しています】

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こんにちは。
HOOP DREAMS(フードリ)の高比良です。

今日は第一、三土曜日恒例の
北口コーチのコラムです。

前回に引き続きドバイのU17世界選手権での
特集2です。

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特集2

2014FIBAコーチクリニックに参加して
 

ドバイコーチクリニック

今回のFIBAコーチクリニックに参加して、
一番感じたことは、どのコーチも緻密であるということだ。


経験と実績に裏付けされたクリニックの内容は、
さすがにプロコーチとして百戦錬磨の達人たちだという印象であった。


○コーチクリニック1 

最初のゾーンオフェンスのクリニックでは、
ゾーンディフェンスに対して、
うまくピック&ロールのプレーを活用してギャップを作る方法
を教えてくれた。

ケースバイケースでの説明がわかりやすく、
質問の余地がないくらいであった。

セカンダリーブレイクからもスムーズに
ゾーンオフェンスに入れるように説明していた。
24秒を1秒も無駄に使わないように工夫されていたのが印象的であった。

モデルチームは、中東の代表チームのメンバーということであったが、コーチのイメージと違うプレーをしていると、すぐにプレーを止めて指導していたことも、プロコーチとしての徹底度の高さを感じた。


○コーチクリニック2

我らが日本のスーパーアドバイザーであるトースティン・ロイブルだ。
コーディネーショントレーニングが中心であった。
興味のある方は、下記のDVDがお勧めです。

ロイブルコーディネーション

http://www.japanbasketball.jp/news_detail.php?news_id=15332

ロイブルの講習には、多くの参加者が興味を示し、
講習が終わった後も拍手が鳴りやまなかったし、
質問や写真を撮りに来る人が絶えなかった。


コーディネーショントレーニングを取り入れながら、
ピンポイントで試合中に必要なスキルアップができる
メニューなので人気が高かったのだろう。

おそらくそこまで身体と神経系のトレーニングと
試合で使う実践的なトレーニングが融合しているものが
少ないからであろう。

要は、筋トレは筋トレ、ストレッチはストレッチ、
スキルはスキル、としてトレーニングしていて、
複合的なトレーニングであることが興味を惹いたのだろう。

私が試合を見た中では、アフリカのアンゴラなどは、
個々の選手の運動能力は、ずば抜けているものの、
コンビネーションプレーや予測したプレーなどが
苦手であったように感じた。

選手が共通した同じトレーニングをしっかりと
身につけることで、共通理解が深まり、
チームワークやコンビネーションの成長につながるように感じた。


○コーチクリニック3
優勝したアメリカチームのヘッドコーチ ドン・ショーターである。
特に、ハーフコートディフェンスに付いて詳しく説明していた。
ボールマンのディフェンスのステップの運び方から、
足を後ろに引いてしまうと抜かれてしまうこと。

※これが結構できていないチームが日本の育成年代に多いですね。
 何でもかんでも、方向つけを意識しすぎではないでしょうか?

・カバーディフェンスとの距離によって
 方向つけの度合いも変える必要があること

・ボールマンのドリブルの力量によっても
 方向つけが変わること

・インラインをしっかりまたいで構えるほうが、
 実際にはオフェンスは攻めにくいこと

などをしっかり考慮に入れてほしい。



ボールマン以外のディフェンスも、
ボールが空中にある間(Airtime)に
しっかりカバーポジションに入る
というような基本中の基本も徹底して教えていた。

また、4on4のシェルディフェンスの練習もしっかりと行っていた。

優勝したアメリカチームのヘッドコーチが、
ハーフコートディフェンスの基礎をしっかりと押さえて話していたこと。

そして、実際の試合でアメリカのメンバーが、
リードしているかどうかに関係なく、
オールコートマンツーマンで必死になってプレッシャーをかけ、
地道にコツコツと正しい間合いを意識して
きっちりディフェンスしようとしている姿勢に感心した。


○コーチクリニック4
以前、NBAのガソル兄弟やリッキールビオを率いて
スペインチームをオリンピック銀メダリストに輝かせた
スカリオーロ監督が登場した。


やはり、ピック&ロールからの展開であった。
ピックアンドロールをきっかけにして、
緻密にパスするスペースやタイミングが計算されていて、
状況判断をしっかりすれば、
間違いなくノーマークが作れる優れものである。


何より、スペリオーロ監督のかっこよさに惹かれてしまった。
イタリア人で「おしゃれ~」
映画の俳優のようである。
おっさんが、おっさんに「惚れてまうやろ~」の世界でした。



試合観戦で世界基準の中でも
優れていると感じたこと(コーチ・キタグチの目)

 (観戦した試合)

・日本 vs イタリア

・USA vs CHINA

・CANADA vs セルビア

・オーストラリア vs プエルトリコ

・日本 vs UAE

・CHINA vs CANADA

・フランス vs プエルトリコ 

・USA vs セルビア

・オーストラリア vs スペイン

・日本 vs エジプト 

・CANADA vs プエルトリコ

・セルビア vs スペイン


★スペインチームのベンチワーク

スペインチームは、試合前に選手が円陣を組んで
モチベーションを上げている間、
コーチ陣も円陣を組んで一つの輪になって盛り上がって話している。
スペイン人らしい明るい性格かと思っていた。

タイムアウトの時はもっと緻密である。
タイムアウトの笛が鳴った瞬間、
選手は一目散にベンチに座って息を整え、水分補給する。


その15秒の間、コーチ陣は、選手と少し離れたところで輪になって、
作戦の指示を確認
している。


60秒のうち、15秒でコーチの意思を確認して、
そのあと、ヘッドコーチが選手のところに行って指示を出す。
その後、アシスタントコーチなどが、個々に選手に補足の指示をする。



徹底したチームワークである。
選手とコーチ陣が一体化している。
F1レーサーのピットインの様子のようである。
タイムアウトを1秒も無駄にしないように
しているのであろう。

動画を見つけました(高比良)
左のベンチの白がスペインです。
赤い服を来たコーチ陣が選手たちの右側に集まり話し、
その後ベンチの選手のところに行く様子が見えます。
日本のタイムアウトのベンチを大きく映した映像も見つけましたが、
ここに上げるのはやめておきます。


★セルビアのヨーロッパスタイル

ガードへのピック&ロールから
センターがポップアウトして、3Pを狙う。

ヨーロッパの選手はオールラウンダーなので、
センターも3Pの確率が高い。

自分たちの長所をいかに活かすかということが
強いチームに勝つ大きな要素であると感じた。


★プエルトリコのマッチアップゾーン

プエルトリコは、日本とサイズ的にはそんなに変わらないが、
上位リーグで、6勝1敗の世界選手権5位である。
日本が学ぶべき戦術がたくさん散りばめられているように感じた。

その特徴をあげるとすれば、5つである。


①強烈なインパクトのあるマッチアップゾーン

相手の攻撃の強いところにボールが入ると、
マンツーからゾーンディフェンスの配置になるというものである。

たとえば、ローポストにボールが入ると、
その瞬間にローポストからの攻撃を押さえるために
一番強い5人のポジションに移動し、
そこからのパスとカバーディフェンスに対応する。


他にも、トップでガードへのピック&ロールが始まると
3-2ゾーンになるというようなものである。

動画を見つけました(高比良)
11:54でウイングプレイヤーにピックが起こった時、
他の3人がゾーンに変わります。他にも随所に見られます



圧巻だったのは、残り40秒くらいで3点差負け、
通常相手ボールならファールゲームにでるところ、
敢えてスローインさせて、レシーバーに
強烈なダブルチームでインターセプトを狙って成功している。

裏の裏をかく。と言ったところだろうか。

相手のポイントガードは、さぞやりにくいだろう。


ヘッドコーチの指示が17歳以下の選手に
徹底されているところを見ると、
世界選手権で戦い抜くことを念頭に
しっかり練習されていることがうかがえる。


②小さいセンターはポンプフェイクとセミフックを巧みに使っている
特に、大きなセンターのいるチームと競い合う時は、
リバウンドからポンプフェイクをしっかり使って
パワープレーからファールをもらいに行くのがうまい。

また、パワープレーからバスケットカウントプレーを
予測したディフェンスがシュートブロックだけを狙おうと少し引くと、
その間合いを利用してセミフックでシュートを決めてしまう。
いわゆるスモールセンターのゴール下の絶対法則である。


③(ガード)ドリブルしながらの
ストップモーションとロッカーモーションが大きくて速い

同じ種類のドリブルフェイクをしていても、
ディフェンスが振られるほどのフェイクの大きさと速さには、
身体のしなやかさと強さが感じられた。
普段のトレーニングをみて見たいものだ。


④ピック&ロールの多様性
(プレーのきっかけに使ったり、ピック&ロールをフェイクに使う)

相手チームの強いディフェンス力のあるガードに対して、
自チームのキープ力に劣るガードへの
ピック&ロールを行いながら、他の3人がどう合わせるか、
自分たちの強みのプレーでピック&ロールのプレーに
合わせてスクリーンや動きを作っているのが印象的であった。

自分たちの長所で得意なシュートを
打つための動き(モーション)が徹底されている。


⑤サイドスローインのカーテンプレー

キープ力に劣るガード陣のスローインでのストレスを軽減するために、いちいちカーテンプレーから、スローインを始める。特に高い位置からのスローインの場合は、スクリーンプレーからゴール方向へのパスが怖いので、レシーバーに対するディフェンスのプレッシャーがかけにくくなるのである。

良く考えられている。思い通りにスローインして、そのまま自分たちのペースのセカンダリーブレイクからの攻撃をタイミングよく始まられるのである。



ベンチワークについて

アメリカをはじめ、どのチームも選手のプレータイムを
しっかりと把握しながらゲームを采配してるのがよくわかる。
強い相手であっても、選手を休ませながら、4Qの最後に
選手が少しでも余裕を持てるように工夫している。


批判を恐れずに、メンタル指導のコーチの立場から書くと、
選手に叱ってばかりしているのは、日本のベンチだけである。


選手のプレータイムが長すぎるのも日本のベンチだけである。
ヘッドコーチを責める気などはない。


この現実が、世界と日本との差なのだろうかと思った。
残念である。
試合中に叱ったところで、脳の仕組みから言っても
うまくいくわけがない。緊張が高まるだけである。


そうでない選手がいるとしたら叱られることに
麻痺してしまっているチームの選手くらいだろうか。
だから、そうしないといけないというのは、おかしな話である。
世界中のチームがそうでないからである。


おそらく日本のコーチ陣は、
今までに世界基準のゲームを
何度も経験している人はいなかっただろう。

いきなり、アジア予選を勝ち抜いたから
世界のチームの戦い方を知れと言っても無茶な話だ。


・日本が強くなるには、世界基準を良く知っているコーチに、
育成年代の選手を指導してもらう必要性があることを強く感じた。
  



私たちのように、小さな地域で、
地元の子どもたちだけでミニバスや
中学生のスクールを教えるチームでも、世界基準を頭に入れて、


・それぞれの年代の子どもたちに必要であることを、
 子どもの成長段階に合わせてしっかり分析すること

・目先の勝利のために無理に教えなくていいことはしないこと

・伸び伸びとプレーさせることで自主性を伸ばすこと

そして、

・原点である、明るく、楽しく、元気に上達
 できる練習メニューをしっかり考えること。



世界基準を頭に入れながら、
噛みくだいてわかりやすく教えていくこと。
これらが私たちの目指すべき指導のスタイルであることが再確認できた。


今回、U17世界選手権を見て、
レベルの違う大会やチームを見ることは、
学ぶべきことがたいへん多いということが分かった。


何事にも、素直に、前向きに勉強していく姿勢を忘れないようにしようと思う。