他の本と違う特筆すべき点は、「木材取引基礎知識」が掲載されていることです。
著者は、木場の木材問屋の三代目として、木材に携わること50年。
国産材だけでなく北米材や南洋材など、世界の木材の仕入れや加工、販売をされていた方で、その豊富な経験に基づいて本は書かれています。
「木材基礎取引基礎知識」では、木材商取引の基礎用語(石の単位、胸高直径など)や、ブレトン法など材積計算方法、木材の構造から木材の質を把握する方法などを解説。
日本農林規格だとか、結構ディープな専門用語が飛びかいますが、木材がどのようにして取引されているかの概略は、木材や木工品に興味があるなら、知っておいて損はないです。


この本は、木材に関わる方は勿論のこと、国産材で家を建てようと思っている方にもおススメします。
木材選定を業者任せにするのでなく、この本を通して、木の値段の決まり方「どのような木が本当に価値があるの?」など、ある程度の知識を得た方が、きっと「納得のいくお買いもの」ができるかと思います。


また、木場の木材流通の歴史もあり、山から川で丸太を運び、それを川並さんが木材置き場にお客様が気に入るように、見目良く陳列していく、そんな時代の仕事ぶりを垣間みれます。
日本の歴史は森林と共にあるよね、と思いをはせてしまいます。


と、本の後半1/4部分の紹介が先になってしまいましたが、メインは170種類に及ぶ、国産材から外材まで、日本で手に入る木材の基礎知識です。
材1種につき大抵は1ページで解説、木目の写真と解説、加工性などの簡単な表。
半ページの材もあれば、流石にスギやヒノキは4ページ扱いです。
材木の木目の写真は全てオールカラーで、材木の種類によって、こんなにも見た目が違うことに、心動かされます。

木材は木目の見た目が重要ですから、他の本で材木を学ぶ際、この本を片手に、木目と一緒に覚えるのが、理解が深まるかと思います。
ちなみに、木材になる前の立木=生きている樹木の写真は、ほぼ無いです。
葉や花の写真がある植物観察のための本では決してないので、そこはお気をつけください。


木材の解説は、「辺材、心材の境界は明瞭で…」や、「クスはアテの強い木があり、薄板で使用すると反りが起きるので乾燥に注意」など、木材を使う上の実践的な知識になっています。

簡潔で淡々としていて、理科便覧のようで、微妙に色っぽさはないのですが、170種類もあれば、小説のように起伏をつけて木材の解説を書く訳にもいかないでしょう。

だから、この本は始めから一気に読破するより、手元に置いて、その木材の言葉と接した都度に、確認するような形で、ペラペラっとめくるような本だと思います。

木材の参考資料の代表格ですね。

原色 木材大事典170種―日本で手に入る木材の基礎知識を網羅した決定版/村山 忠親
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