◆パオロ・マッツァリーノ『つっこみ力』ちくま新書、2007年2月

けっこう面白い。批判や否定よりも「つっこみ力」の必要性を説く。

批 判や否定の言辞は、相手の間違いを指摘してつぶしていくだけだ。つっこみはそうではない。つまらない「ボケ」も、つっこみ次第では面白くなる。そうすれ ば、たしかに議論が広がっていくかもしれない。「つっこみ力は、場を盛り上げようというサービス精神と自己犠牲の精神が息づいている点で、批判や批評、メ ディアリテラシーとは一線を画します」(p.63)というが、これらの精神は何かを議論する場では重要だなと思う。

また、「メ ディアリテラシーや論理力がなかなか受け入れられないのは、それを使う人たちの態度が間違っているからなんです。そこにあるのは容赦のない否定ばかりで、 愛がありません。権威に刃向かう勇気がありません。そしてなにより、笑いがなく、つまらない」(p.103)という言葉から、ついこの間まで、世間を賑わ せていた「生む機械」発言を巡る野党の批判を思い出す。野党の批判があまり効果的でなかったのは、その批判が面白くなかったからだ。批判ではなくて、 「つっこみ力」で世間に笑いを引き起こしていたら、政治の流れは変わったかもなどと思う。

パオロ・マッツァリーノ
ちくま新書 645