【観劇記録】容疑者χの献身 | 手上のコイン Blog

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演劇集団キャラメルボックス2009スプリングツアー
『容疑者χの献身』


2009年4月30日(木)~5月24日(日)
サンシャイン劇場


原作 東野圭吾『容疑者χの献身』(文藝春秋刊)
脚本・演出 成井豊


■Cast


西川浩幸
岡田達也


西牟田恵
斎藤歩
川原和久


大森美紀子
前田綾
三浦剛
筒井俊作
實川貴美子
石原善暢


■Story


高校の数学教師・石神哲哉は、ある夜、不審な物音を聞く。
アパートの隣室に住む花岡靖子の部屋で何か起きたらしい。


隅田川の河川敷で男の死体が発見される。
捜査に乗り出す警視庁捜査一課刑事・草薙俊平。やがて、捜査線上に、被害者の元妻・花岡靖子が浮かび上がる。
草薙は大学時代の友人で、帝都大学理学部物理学科の准教授・湯川学に協力を求める。
湯川は靖子の隣室に住む男の名前を聞いて、顔色を変える。
石神哲哉。それは湯川の大学時代の友人、そして、湯川が出会った中で最高の頭脳を持つ男だった……。


いいかげん。宿題消化しておかなくては…。
とっくの昔に観劇したにも関わらず、纏める気力が起きず…。


言わずともがな。人気作家・東野圭吾さん原作のベストセラー、探偵ガリレオシリーズ初の長編。
TVでガリレオシリーズが連ドラ化が決まったと聞いた時に、「…要するに。容疑者χを映画でやりたいだけでしょ?」
と思ったのを覚えている。(ぁ


そんな訳で。とっくの昔に既読のため、予備知識が頭から零れんばかりの状態で観劇。
とりあえず。読んでしまってタネの割れているミステリーにも関わらず、映像化も舞台化も、見てみようかと思わせる魅力をもった原作であることは確かだ。


で。
正直をいえば。原作を知っている身としては消化不良。
舞台化そのものは、凄いと思う。
やってみようといういう意欲そのものは大いに買ってもいい。
舞台にしかない魅力も、それはあるだろう。
いや。確かにあった。


特に、ヒロイン花岡靖子役の西牟田さんの、細やかでいながら内から放たれる強いエネルギーに裏打ちされた演技は、それだけで観に行く価値あり。と思った。
というか今回は、彼女にチケット代を払ったつもりでいる。


原作は、ガリレオ先生とあだ名される天才物理学者・湯川のライバルとして登場する、「石神哲哉」という、これまた天才数学者(職業は高校の数学教師)を主人公としたストーリーである。
そう。主役は石神の方。
けれど、舞台は原作に極力沿った作りでありながら、その石神のエピソードが大幅に削られ。いらないシーンばかりが目立つ。
特に、途中で入る笑いというか。ギャグは、違和感を通り越して、驚いたあまりに椅子から飛び上がりかけた。
言っておきますが、これは比喩ではありません。本気で驚いた。
あれはいかがなものかな……。


もちろん、時間の都合でカットされるシーンがあるのは仕方ない。
が。
余計なギャグを入れるヒマがあるのなら。
原作ファンの痒いところに、一つでも手が届くようにしてもらいたかったものである。
正直、石神さん役の西川さんが見せ所でどんなにいい演技をしようとも、そういう小さな引っ掛かりがマイナスになって、正当な評価をする気力が湧いてこない。
いや、本当に西川さんには悪いんですが…でも、舞台の石神の演技に関して、「そりゃないだろうよ」と思った部分も無きにしもあらずなので…。うーん。


結局、原作で描かれた「重要」部分を、脳内で補足しながら終盤あたりは観てしまったので。舞台そのものを正確に評価できなかったりする。
しかし。そんな中でも鮮やかに心に残る西牟田さんの靖子が、本当に素晴らしかったことだけは、間違いの無い事実だと思う。


だから、私にとってはこの舞台は、「花岡靖子」の物語だった。
石神の話なのにそれはおかしいんじゃないかって?
いやいや。
私個人は。それなら納得してもいいと思ったんだから、それでいいんです(笑)
お芝居の完成形は、観た人の心の中に存在するんですから。











のらくら閑劇記-容疑者x