その日、午後から事務所にいたのは私と、Aさん・Bさん・Cさん (いつも順番にアルファベットをふっているので、以前書いた時のAさんやBさんと同一人物ではないです) の4人でした。
Aさんが遅い昼食を取っていたのですが、Aさんは毎日手作りのお弁当を持って来ています。
Bさんが、 「作るのが面倒な時もあるやろ?」 と質問をしていました。
Aさんは 「私んとこ、ダンナが作ってくれるねん。料理が好きやから。私はカバンに入れるだけ~」 という、ちょっと自慢っぽい答えを返していました。
「でも、お弁当箱を洗うのはめっちゃ面倒やろ?」 とBさんが言うと、Aさんは、ウフフと笑って 「うち、食洗機やねん~」 と言いました。
私はパソコン画面に向かっていたのですが、背後の空気が変わった気がしました。
すると突然、Cさんが 「今なー、化粧品をまとめ買いするか悩んでるねん。30万やからなー、どうしようかなー」 と言い出しました。
どうしてそんなに高いのかというと、訪問でしか買えない化粧品で、それが今セール中でお買い得になっており、販売員に一式まとめ買いを勧められているということでした。
”へー、お金がある人は違うなぁ” と思っていたら、今度はBさんが 「うちは家の修理があってなー、外壁の修理をせなあかんねん。一軒家は修理にお金がかかって大変やで」 と言います。
”だろうなー、一軒家はローンの他にいろいろお金かかりそうだもんなぁ” と思っていたら、Cさんはいきなり話を取られてムカついたのか、強引に自分の話に戻します。
「30万、払お思たら、払えるんやけどな、貯金おろすん嫌やんか~、ま、おろしてもええんやけどな、どっちみち買うし~」
”うわぁ、ムキになってるな” と思ってると、また、Bさんが話を取ります。
「外壁の修理をする時に、ついでにカーポートも設置しよ思てんねん、お金かかるけど娘の新しい車もあるしなー」
”ひ~! (((゜д゜;))) 何? この雰囲気” と思っているとCさんがとどめの一発を出しました。
「こないだゆうちょから電話があって、もう預かれませんって言われてなー、ゆうちょって1千万以上は預かってくれへんのやな」
Cさんの一人勝ちでこのバトルは終了したのでした。
自慢は人を変に刺激するのだなと思いました。
そしてこれは以前、宝くじの会社で働いていた時の話です。
私とは違う部署に、とっても感じのいい40代後半のパートさんがいました。
服装とか持ち物、話の内容などでお金に余裕があるのはみんな知っていました。
それなのにある日 「私、ここのお給料に全然手をつけてないの。通帳も見たことないから、いくら貯まってるかもわからないわ~」 と言いました。
そばにいた何人かが 「私なんかその日のうちに全額おろすわ~、支払があるし」 「私もすぐなくなるわ~、生活費に使うから」 と、その人を羨ましく思う、と口々に言っていました。
すると、その人はウフフと笑って 「私、お金のために働いてないの~」 と地雷を踏む発言をしていました。
その後、この人は陰で悪口を言われ、みんなに嫌われていきました。
何故、そんな自慢をするのでしょう?
たしかに自慢をすれば、気持ちいいです。
勝った! 私の方が上だわ、という優越感に浸れるのはわかりますが、その快感はたった一瞬です。
しかも勝ったと思うと同時に、相手は負けたと感じ、自分の方が上だわと思うと、相手はその時、下だと屈辱を感じているのです。
相手に、さっきまでなかった ”悔しい!” という感情を発生させてしまいます。
この ”悔しい” という気持ちが、憎しみや嫌悪感に変わっていきます。
たった一瞬の気持ちよさのために、払う犠牲は大きく、割に合わないと思います。
この人も、散々陰で悪く言われて、仲間はずれのような感じになり、結局辞めていきました。
そんなことを言わなくても、通帳に手をつけていないことまではわかりませんが、お金に余裕があるのはみんな知っていたのです。
それまでは、お金持ちをひけらかさない、とても感じのいい人という印象で好感を持たれていました。
自慢をしたばかりに、自慢する人というレッテルまで貼られてしまいます。
お金持ちは言わなくてもお金持ちをとおのずとわかります。
頭がいい人は自慢しなくても頭がいい人とわかるのです。
わざわざリスクを冒してまで、わかっていることをことさらに強調しなくていいのです。
自慢をしたことによって、羨ましい、悔しい、妬ましい、と相手が強く思った場合、もしその相手が虫持ちなら、体に障りが出ます。 (虫持ちについては 1/25 の記事に書いています)
虫を持った人でなくても、このような念は良質ではないので、相手から飛ばされて快適に過ごせるわけがありません。
自分では自慢のつもりがなくても、人より恵まれている部分の話をする時は、そこまで考えてからした方がいいと思います。
私自身が気をつけているのは、卑下自慢です。
これは、例えば 「私なんか全然モテないから・・・」 などと言って自分を卑下し、相手に 「そんなことないわよ、すごくモテてるわよ」 と言わせるやり方です。
これはストレートに自慢とわかりませんが、立派な自慢なのです。
「最近、私、老けてきちゃった・・・」 「そんなことないよ、若く見えるよ」 「そうかなぁ・・・」 「肌とかキレイだし、シワもないし、全然大丈夫だよ」
というふうに、相手に自分が言いたい自慢を言わせ、いい気持になる、というものです。
もうずいぶん昔になりますが、井上ひさしさんのエッセイでこの卑下自慢を知りました。 (井上ひさしさんは卑下慢と書いておられました)
これは卑しい・下品な自慢である、と書かれていて、これだけはしないようにしよう、と心に誓いました。
いずれにしても、大きなリスクを伴うので、自慢と取られる可能性がある、人より恵まれている部分の話をする時は、気をつけようと肝に銘じています。