歳三さんの刀の握り癖 | 土方歳三資料館日記 (Hijikata Toshizo Museum Blog)

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土方歳三の生家跡に設けられた資料館にて運営に携わる子孫の綴る日記。

先週の土曜日は、読売文化センターの

「土方歳三を探る」講座がありました。


京での歳三さんと新選組史跡関連の話が中心だったのですが、

実は、とっておきのおまけテーマがありました。


前回1月期の講座で、

鎖帷子や木刀、和泉守兼定拵えの

細かい採寸や重量データを元に分析をしたのですが、



和泉守兼定の柄糸の磨耗具合を

細かく採寸したところ、

以下のようなことが分かったのです。

(以下、前回の講義の要点)



現代の天然理心流では、

 握る際に力を入れるのは両手ともに

 手のひらの小指とその付け根の側。



 (そのほうが剣を振るさいにも

 手首に適度の遊びが生まれるので、

 スポーツ学的に見ても合理的)




しかし、歳三さん使用の

兼定の柄糸の磨耗具合からは、

彼が両手ともに親指と人差し指に

力を入れて握っていたことが明らか。



これは、

現在では「クソ握り」と揶揄される我流の握りだという

 (。>0<。)





・磨耗部分の場所から、

 歳三さんは柄の鍔に非常に近い部分から

 両手をぴったりとくっつける様に刀を握っていたことが伺える。




で、歳三さんの握りグセは

実践に即したかなり特徴的な握り方

だったのではないかと説明しました。





そして、その後、

ご家族揃って居合道(いあいどう)を

極めていらっしゃるお教室の生徒さんから、

こんな有難いお申し出を頂きました。



「実際に真剣と同じ重さの居合刀を

次回の講義でお持ちしますので、

実際に歳三さんの握りを皆で実感しましょう!」

とのこと。



私も当日は講義する立場ながら、

そのスペシャル企画をすごく楽しみにしておりました。



そこで、実際にその生徒さんが実演してくださったのですが、


ダウンまず、現代の刀の握り方。

 左右の手に感覚を持たせて握ります。


刀握りかた(現代)ブログ用

相手の刀を受けたり、長い刀をバランスよく持つには

理論的にも非常に優れた握り方です。





ダウンそしてこれが、柄糸の磨耗具合から再現してくださった

 「歳三さん握り」



刀握りかた(歳三)ブログ用


ちなみにこの生徒さん、

歳三さんと同じ五尺五寸(約167センチ)の身長の持ち主ですから、

体格や、手の大きさなども参考になりました。



ここで、この生徒さんに居合道の観点から教えていただいたのですが、




昔は、左右の手の間隔を開けずに持つことは

結構ポピュラーだったのだとか。




理由の一つ目は、



・刀の中には茎(なかご)の短いものが少なからずあり、

 それが激しい衝撃を受けたときに

 柄が割れて刀身が飛び出してしまうのを防ぐ為に

 柄を短く持つことがあった。

 (古刀など刀身や茎を詰めて仕立て直して

 先祖代々伝えていくこともありましたので。)



しかし歳三さんは、

兼定を中心に幕末期の新々刀を多く使用していた様ですから、

必ずしもこの理由には当てはまらないかと思います。





そしてもうひとつの理由とは…







ここが肝心ですよ!皆さん!!メラメラ






・短い握りのほうが

 室内など狭い場所での刀の取り回しがし易い、

 という事実があるのです。




 京の狭い町屋作りの家屋の中で

 奮戦していた何とも新選組らしい理由ですね。




これは、その生徒さんが二つの握りでそれぞれ実演してくださいましたが、




本当に、柄を短く持った歳三さん握りの方が

刀を正面に構えた状態から

頭上にかざし振り下ろすまで、

刀の動く半径も20センチ近く狭くなり、

素早く振り下ろせることが一目瞭然でした!!!






私は、その姿に兼定を投影してしまい、

いつも刀置きに置かれている兼定を

このように歳三さんが振っていたのかと、

本当に心に迫るものがありました。



あの場にいた生徒さん全てが、

資料館を訪れて遺品を眺めて想像するだけでは

目にすることのできない光景に

息を呑んでおられたように思います。



その後お一人お一人が、

実際にその居合い刀を歳三流・現代流に握って、

その柄の感触や重みを実感しておられました。





ご協力いただきました生徒のO様、

ありがとうございました!!!





お教室での講義は、自分での勉強にもなり、

更に講義したことに対する生徒さんのご意見なども伺える場でもあり、

しかも今回のようなスペシャル企画もあり、

本当に貴重な体験をさせてもらっていると感じています。




でも、そんなお教室での講義も3月末のあと一回のみとなりました。


最終回のテーマは、宮古湾海戦なのです。




がんばってアボルタージュしてみたいと思いますニコニコ





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