無翼の天使80 | 恋愛小説 くもりのちはれ

「慶人・・・」


病室を出ると、目の前には廊下の壁にもたれ佇む慶人


『大丈夫か?』


「うん・・・熱もね、すっかり下がって、顔色も良くなってたよ。」


なぜかフッと笑った慶人は、左手をゆっくりと差し出す。


私の答え、変だったのかな?何が可笑しかったのかな?


『帰ろう。送ってく。』


「うん・・・」


差し出された手を両手で掴むと、もう一度フッと笑った慶人。


『不死身の夏樹の心配なんかしてねぇから・・・』


「えっ・・・」


廊下をゆっくりと歩き、見計らったようにドアが開いたエレベーターに乗り込む。


夏樹の心配じゃないってことは・・・


「ありがとう慶人。」


私の事心配でわざわざ来てくれたんだね。


『で、夏樹の事、理穂並みに殺っちゃった?』


「そんな殺るなんて・・・」


『あいつ手強いから、やっぱり真菜には無理か。


「そんなんじゃないよ・・・うん、そんなんじゃない。夏樹は、お兄ちゃんと同じだから。


でも・・・どうして慶人・・・もしかしてお兄ちゃん?」


まさかお兄ちゃんがココまでお節介だとは・・・心配してくれての事だろうけど。


『イヤ、尚斗は真菜が見舞いに行くことだけ連絡してきた。で、後は俺の判断。


ほら、真菜と夏樹って言わば俺と理穂みたいなもんだろ?


案外、切る方も痛いって事、俺は知ってるから・・・ただ、心配だった。』


エレベーターが1Fに着き、扉が開く。


「うん・・・」


少し照れているのか・・・私の方を見ることなく真っ直ぐ前を向いたまま歩く慶人。


大きな総合病院のエントランスロビー、沢山の人がいるにも拘らず・・・


ワケわかんない感情が溢れて、涙が出てくる。


『真菜、時間あるか?』


「うん・・・」


『それじゃまた、観覧車乗りに行くか?』


思いがけない素敵な提案。


「うんっ!」


あぁ・・・やっぱり私、慶人が好きだ。




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