無翼の天使34 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『渡会さん、一人で正門から帰らないほうが良いよ。』


6時って慶人には言ったけど、試合前で練習が長引いた為に、既に7時前。


下駄箱で靴を履いている私に、声を掛けてきたのは、同じ一年のバスケ部員達。


『なんかさぁ・・・ヤバそうな車が停まってんだよ。


「車?えっ・・・それって・・・」


まさか夏樹?それとも・・・慶人?


『すげぇ車・・・高級車は高級車みたいだけど、運転手がさ・・・ほらっ、何度か降りて


こっち覗いて見てんだけど、怪しくねぇ?』


『やべぇ、やべぇ・・・マジだって、アレは本物じゃねぇか?』


『渡会さん、電車だよね?裏門からだとすこし遠回りだけど、でも俺達と裏門から


行った方が良いと思うよ。駅まで俺達、送って行くよ。』


本物?って、そうだよね。アレは、どう見ても普通じゃないって感じ。


だけど夏樹も慶人も、学校にわかる様な目立つ行動は、絶対に取らない筈だから


きっとアレは、ワタライでも慶人でも無いと思う。


部員達に送られて駅に着くと、改札の近くに佇む慶人の姿が目に入る。


『渡会さん、海藤君と待ち合わせ?付き合ってるって、やっぱマジなんだぁ。』


『ははは・・・カズ、残念そうな声出してんじゃねぇって。渡会さん、じゃあね。お疲れ』


「うん。ありがとう・・・また明日。」


手を振って立ち去る爽やかな部員達の向こう、不機嫌そうな慶人が私に向かって


来る。鋭い目つきで睨みつけられてる気がするけど・・・なぜ?


「あっ、ごめん。言ってた時間より遅くなっちゃった。」


待っててねって言った覚えもないのに、待たされた事を一方的に怒ってるっぽいけど


何、何・・・いつもの数倍のオーラーを醸し出しちゃって、一体どういうことよ?


「だから、あの・・・その・・・ごめんって・・・えっ?」


近付いた慶人は、ギブスと反対の腕を伸ばし、強い力でギュッと私を抱き寄せる。


「慶人?」


私を抱きしめた慶人は、私の背後にいる誰かに声を荒げる。


『真菜に、何の用だ?真菜だけは、ダメだ。』


『うふふ・・・何、それ?慶人らしくないじゃん!どうしちゃったの?』


女の子の声・・・もしかして、涼子ちゃんの言ってた汚れ女?


『理穂、いい加減にしねぇと、今度は無理だ。俺は庇えねぇ。俺だけじゃねぇから、


お前がどうなるか保障できねぇ。だから、絶対に真菜には手を出すな。』


そう言って私の肩を抱いたまま、女の子に背を向け、改札に向かって歩き出す。


「慶人?」


『ねぇ彼女、知ってる?真面目そうなアンタには、驚愕の話、教えてあげよっか。


慶人はねぇ・・・『うっせぇー、てめぇ殺られてぇのか!さっさと消えろ!』


彼女が何を言おうとしてるんだろう?って、気にはなるけど・・・でも慶人に合わせて


今は歩くしかない。だって・・・たった今、慶人が言ったセリフはきっと、冗談でも


なんでもなくて、本気なんだって解るから・・・説明はうまく出来ないけど、伝わってくる


慶人の怒りは、間違いなく本物だから。


『どうせ・・・その女も、すぐに離れていくんだから!慶人には私だけなんだから!!』


背後から聴こえる彼女の叫び声。


でも・・・その声が私には、とても悲しい声に聴こえるのは、なぜだろう?



ポチッ↓としてくれると嬉しいです♪

 にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ

にほんブログ村


33 /目次 /35