夕暮れの月 | 恋愛小説 くもりのちはれ

『アイツ、何話してた?』


病院からの帰り道、先輩と手を繋ぎ歩く。


「えっ・・・あっ・・・んっー単刀直入に言うと、先輩は誰からも愛されてるって話」


先輩は不意に足を止め、私を見下ろし


『わりぃ・・・あいつら俺にベタベタしてたよな・・・ずっとそばにいれば良かった。』


勘違いだ・・・あの女の子たちの事を言ったと思ったみたい。慌てて訂正をする。


「違うから・・・そういう意味じゃないから。」


じゃあ、どういう意味?って感じの表情・・・また違う意味で勘違いしてる。


「クスッ・・・そういう意味でもないから・・・友情としてって意味。


あの人、先輩のことすごく慕ってるって思った。」


『何だよそれ・・・アイツ、何、お前に言ったんだよ。』


あの人が言った事は、彼らが先輩を心から慕う気持ち。


意識が無い彼が目覚めた時に、直接先輩に伝えて欲しい。


そんな奇跡が起こるって、希望を持っていたい。


「んっーやっぱり秘密。とっておきの先輩の良い話だったから、


私の中に大事にとっておく。悪口じゃないから、良いでしょ?」


繋いでいた手を離し、逃げるように先を歩く私。


『はぁー?何だよ、それ。余計気になんじゃん。』追いかける先輩。


すぐに追いつかれ・・・そして抜かれて。


「ちょっと、先輩、待って。」少し間を離されて、大きな声で叫ぶ。


『秘密主義の加奈ちゃんは置いてくよ。』


そして、歩く速度を上げる先輩。


「そんなぁ・・・ちょっとホントに速いよ・・・先輩。」


少し小走りで追いつこうとする私。


『ははっ・・・俺、足長いから・・・歩くの速いんだよね・・・』先輩は、笑って前を歩く。


「ちょっ、ちょっと待って。」追いかける私。


いつかと同じシチュエーション。


なんだろう、この感情・・・何もかもが、愛しくてたまらない。


何気ない平凡な日々も


不安で涙した過去も


これから始まる未来も


先輩と一緒だと・・・なにもかも。


眼に映る全てが・・・愛しい。


そして、視線の先には、いつかと同じ・・・


赤く染まる街・・・


背の高い先輩の背中・・・


その向こうには・・・


夕暮れの空にうかぶ月。



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