コウ | 恋愛小説 くもりのちはれ

『コウ、この後、みんなファミレス行くって。どうする?』


汗臭い部室。返ってくるセリフを知っていながら、いつもどおり瀬尾は俺に聞く。


「悪い、帰る。」


こっちも、いつもどおりのセリフ。


『今日も愛妻が待ってますっテカ(笑)』


『なに、なに・・・コウ、これ?』と小指を立てた、宇多。


(お前はオヤジか!?・・・これって、小指って、いつの時代だよ・・・)


黙々と着替えを済ます。でも、懲りないやつらは、


『そう、そう、かわいいーリコちゃんがご飯を作って待ってるの~』


『ほー、コウの女ってリコって言うの?』


「瀬尾いいかげんにしろよ! 宇多、呼び捨てしていいのは俺だけ!」


宇多のふくらはぎに軽く蹴りをみまう。


「じゃ、明日。」バックを肩にロッカーを閉める。


『痛えな・・・コウ、たまには付き合えよ。マネ達も、コウいないと不機嫌って


いないし・・・


自転車置き場でリコにメール。


〈今から帰る〉


学校から自転車で30分。今日も、リコの笑顔に逢える。


リコの母親が亡くなってから、ほとんど毎日の様に、俺はリコの家に行く。


リコは、入院がちな母親の変わり、家事を幼い時からしていた。


リコの父親は、大学病院の有名な脳外科医。院内だけでなく、国内外から手術依頼


が来るほどの名医。


母親が亡くなってから、毎日一人ぼっちのリコ。


髪の色、瞳の色、肌の色・・・色素が薄いというか、はかないイメージの彼女。


そこに最近は、悲しい表情が重なる。ほっとけない・・・そばにいてあげたい。でも、


『コートの中のコウ君はやっぱりかっこいい。コウ君ががんばってるから、


私も頑張る・・・』って言われると、辞めるわけにもいかない。


誰が見ても美少女な彼女は、同性には犬猿されるのか・・・


友人関係がうまくいかない・・・俺といつも一緒にいたことも原因かもしれないが。


だから、実際に別の高校に行くと聞かされたとき、反対をした。


彼女の選択に口を挟みたくなかった・・・でも怖かった。


何が?とは言え無いが・・・リコを思って反対するふりをしながら、


そばにいなくなる寂しさを、離れていくという不安を、強く感じてたのは、


リコではなく、俺のほうだ。

インターホンを押す。返事がない・・・ガタッ・・・ガチャッ 目の前のドアが開く


『おかえり』と、笑顔の彼女・・・おいおい、お帰りじゃないし


「誰か確認しろっていつも言ってるだろ」


なんかあったらどうすんだよ・・・まったく


『だって、コウ君メールくれたし』


ねっ、大丈夫・・・ってピースしてるし・・・


「わかんないだろ・・・気をつけろよ」


だから心配なんだって


『はいはい。お説教はいいから・・・入って。』


今日はふわとろオムライスなの♪何の警戒心もないことには、あきれるよ毎回。


リビングのソファに上着を置き、ダイニングへと行く。


『今日は、コウ君の大好物ばかりなの・・・どう、おいしそう?』


「あーうまそー」


だけど・・・食い物より何より・・・。リコに近づき抱きしめる そしてキス・・・。


唇を離し、恥ずかしそうなリコの顔を覗き込む。


「何かいい事あった?」


真っ赤になったリコは俯いたまま


『良いことなのかな・・・優がね、ピアノ2曲弾いてくれたの・・・』


なんか癒された・・・素敵な曲だった・・・と微笑む。


リコの母親が亡くなってから1ヵ月半、リコに笑顔を取り戻してくれた優 


リコは、その友達の話を嬉しそうにする。


『良かったね。良い友達ができて』 リコの髪をなでる


このときは・・・心から、[優]・・・ 


リコの未だ会ったことない友達に感謝してたんだけどな・・・





どうか・・・クリックをお願いします。(#⌒∇⌒#)ゞ

 にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ

にほんブログ村


目次 /