Vol.73 「仕手筋とノムラ(2)」 | ノムラ證券残酷物語

Vol.73 「仕手筋とノムラ(2)」

事実、ノムラを含めて大手証券は確かに投資家を大切にして無かったから、これらを逆手に取り、一般個人投資家の見方なのだと甘い誘惑で誘った彼等は、ある意味では一般大衆にとって、ドンキホーテであり、石川五右衛門だったのかも知れない。


しかし最後に私腹を肥やし詐欺を行った中江滋樹などは単なる詐欺師以外の何者でもない。中江の本性を早くから見抜いていたのかどうかは定かではないが、ノムラでは当時店内規制(社内規制)で、投資ジャーナル関連銘柄は一切買い注文を受け付けていなかった。顧客が支店に電話してきて預かり資産もあり、現金も預けてあったとしても、顧客が投資ジャーナル銘柄を買いたいと申し出たら、「当社ではこの銘柄はお受けできません」と買付けを拒否していた。


当然投資家はどうしても買いたければ中小証券などの地場証券に口座を開けてそちらに流れていく。しかし面倒くさくなる投資家も多いから、結果的に買い付けが出来ないとなれば、だんだんその仕手筋の資金は限界になるので、大体にして相場はババ抜きゲームとなるのだろう。


他の仕手銘柄もかなり多くの銘柄で当時のノムラでは買付禁止、あるいは取扱禁止銘柄となっていた。巨大証券に立ち向かって一般個人を煽動して相場を作ろうと思っても、巨大証券には巨大証券の武器があるし立ち向かう方法も知っていたのだろうか。


まあノムラの営業マンは、「自分の言う事を聞く客」しか「客」と思ってないので、絶対仕手株などを買わせることは無かったし、毎日毎日営業場では仕切られまくるので、客が他の株を買う余裕などあったら仕切り玉を買わせることに一点集中するから絶対に「営業課」の営業マンの客には、「客注」(客の意思で銘柄を選定して営業マンに買ってくれって言ってくる注文のこと)を受けることは無かった。


いつもY田課長に「自分の言う事を聞かない客は客にするな!店頭(カウンターレディーと称する店頭の女性担当)に回して(扱いを変更して)しろ!」っていつも言われていた。客のリスクで、客の判断で、手数料もちゃんともらえるのだし、株屋は手数料を上げれば良いんだから、何だか変な感じがいつもしていたが、ヤクザの構成員として組の方針には絶対に逆らえない。若頭や組長が言う事には絶対服従の時代だった。(明日に続く)