Vol.42 「地獄の投信ノルマ(2)」 | ノムラ證券残酷物語

Vol.42 「地獄の投信ノルマ(2)」

支店の話に戻ると、毎日毎日の壮絶な株式手数料のノルマの他にも、営業マンにとって厳しいノルマがあった。それは募集商品といって、要は毎月設定される投資信託の募集ノルマだった。


数年前、ネットバブルの初期にもノムラ戦略ファンドと称して、1兆円もの大募集をやって相場の最高値で設定して、あっという間に基準価格が半分になって各方面から大批判を受けたファンドが話題になったが、考えてみるとこの募集金額は半端な金額ではない。冷静に1兆円という金額は、ノムラでもメガバンクと違い全国に100支店そこそこしかないのだから、1支店平均で100億円を募集していることになるのだと、大和や日興の社員が話していたことを思い出す。が…そんなことは無いと筆者は思う。


我々一昔前の、ノムラ證券のような「巨大詐欺集団」に所属した人間に言わせると、今の投資信託なんか『女子供でも売れる商品』だと皆が言うだろう。何故かって?昔の投資信託はそのほとんどが「クローズド投信」と言って、募集期間が決まっていて設定されると、その後最低2年から3年間解約禁止だった。つまり2~3年間その顧客の資金は、「回転商い」用としては全く何も出来ずに固定化されてしまうので、手数料のノルマに追われている末端の構成員としては、顧客が「死んだも同然」になってしまう恐ろしい商品だった。


今のオープンエンド型の投信なら買って数日後に売れば良いんだから、そんな売却可能な商品だったら、当時のノムラのスーパーセールスマンならいくらでも売るだろう。


ここで、そろそろ投資信託でも貯蓄の代わりにでも買おうかな?って思っている奇特な一般投資家の皆さんがこれを読んでいるいたとしたら、絶対に銀行で買うことをお勧めする。間違っても、大手証券で買ってはいけない。まあ、ネット証券でも投資信託は売っているから、ネット証券でじっくり目論見書を読んで買うことをお勧めする。


そんなことはさておいて、その当時は、クローズド型全盛だったからその募集は困難を極めた。しかしその募集は必ず毎月あった。その昔、市場が暴落して低迷していた頃に、市場政策として、投信が東京市場を買い支えるための受け皿であった時代背景もあって、また、投信の運用者にとっては安定した運用成績を上げるためには、資金は出し入れされない方が宜しい。しかし、投資家のニーズはそんなところには無いから、今ではそんな投資信託はほぼ全く設定されなくなっている。


ましてである、基準価格が値上がりして4年後とか5年後の満期時に儲かっていればまだしもであるが・・・その当時の投資信託はほぼ間違いなく損をした商品だった。