Vol.33 「油のN島(2)」 | ノムラ證券残酷物語

Vol.33 「油のN島(2)」

「おい、お前ら!今度の支店長はヤバイらしいぜぇ~」とT岡店内主任が話し始めた。「何か知らんが、異常に「油」好きらしぜぇ~、とにかく蛇のような顔つきと、その目つきが出たら気をつけろって、同期の奴がたまたま立川にいたから聞いたらそんなことを言ってた!」と…


「あのぉ~先輩、油好きってどういう意味ですか?」ってボケのT中が聞くと、「T中ぁ~!お前も鈍いなぁ~石油株好きってことだよ。とにかく、石油株ばっかりを店の推奨銘柄にするんだとよ。石油株なんかこのところまともな相場なんかあったっけ?こりゃぁ~ヤバイぜぇ~俺なんか石油株なんかほとんど売り買いしたことないし、良くわかんねぇ~な」って…


彼くらいのケダモノになると半径20メートル以内にその気配を感じるだけで背筋が寒くなった。朝からどうせ英語もほとんどまともに読めない癖に、ニューズウィーク(多分日本語版を読んでいたのだろうが…)とかの「カバーストーリー」の話題を持ち出して、何やら営業のセンスに一つ役立つようなと得意顔で話すんだが、これが全くもって、知的センスが感じられないので、彼の朝会の話はもう気色が悪いったら無かった。


しかし、スーパーセールスマンのY田課長は、元来の太鼓持ちの性格らしく、上の者にはとてつもなくへつらう野郎で、相性は抜群だった。後にこの2人が支店で買い占め相場に失敗して、課長の上場会社の大株主の顧客の株券を信用取引の期日が来て、そのまま損切りをしてしまうと何十億円もの損が出て収拾がつかない事態が起こった。


理由は、その客は、某上場会社の創業者の御曹司の大株主で、絶対に売ることなんか出来ない株券を担保に信用取引に巻き込み、結末は、売却しないと損金を埋めることが出来なくなるため、客の預り株券を持ち出し、これを担保にその現引き代金を金融屋から借入れ、更にその損を取り返そうと現引きした株券を信用取引の担保に、さらに引き続き無断売買で更に損失を広げのだ。


終にはこれが表沙汰となることになり、最終的にY田課長は、同期トップで次長に昇格したばかりだったのに、二段階降格で課長代理に降格され、本社の転換社債部の端っこに飛ばされ軟禁されることになった。支店長のN島は、辞めてもどこにも行くところの無いと割り切った根性の無いY田課長とは異なり、同じく二段階降格になり、公社債部の端っこに軟禁される寸前に逃亡して(退職して)どこかに逃げたらしい…(まだまだ続くのだぁ~)