Vol.32 「油のN島(1)」 | ノムラ證券残酷物語

Vol.32 「油のN島(1)」

新人で最初に配属された当時の支店長はOという支店長で、確か1年位で取締役になり大栄転で近畿本部長として転勤していったのでほとんど口を聞いた記憶も無い。まあ新人時代、当時虎の穴という全国1位を争う大店の支店長(組長)に、末端の構成員が口を聞けるはずもなくという感じだった。このOはあまり悪い評判は聞かなかった。まあ最後は常務まで行ったし、そんなに変な人間では無かったのかも知れない。


私は新人で入社した直後から異常な忙しさで学生時代から付き合っていた彼女と疎遠になって別れた直後、つい身近の支店の先輩女子社員と付き合うことになって支店の他の先輩の裏事情や下半身ネタもずいぶん彼女から聞くことが出来たが、彼女からこのO前支店長の悪い噂はあまり聞いた記憶がないから、多分まあ普通のおっさんだったんだろう。


前にも書いたがノムラには半径50M以内の女に手を出したら「現引き」(結婚せよという意味)という不文律、掟があることを入社早々インストラクターのH田主任から聞いていたが、結局彼女が仕事に疲れて(その原因は、支店長の秘書役みたいなポジションをしていた彼女にとって、恐らく新しいN島支店長の爬虫類性か何か殺気を感じて辞めたのだと今でも私は思っている)先に退職したので、危うく現引き寸前まで行ったが免れることが出来た。


その後立川支店という中堅の支店の支店長だったN島という新しい支店長が転勤してくることになった。


この男が全くもって最低の男だった。これは誇張でもなんでもなく体に油の血でも流れているのか、別な噂では蛇の血が流れているらしいと方々の支店でも噂になっていた、とんでもなく気色の悪い野郎だった。新しい支店長が転勤してくる直前、早耳のT岡主任が、仲の良い同期がたまたま立川支店にいたらしく、内線で電話して(当時ノムラでは全国の支店は内線電話で掛けられた)詳細な情報を入手していたものを我々若手にも披露してくれた。(続く)