Vol.21 「仕切り玉(1)」 | ノムラ證券残酷物語

Vol.21 「仕切り玉(1)」

今はもう誰もぉ~~って…こんなアホらしいことが毎日起っていたということ自体、当時、今の財務省/金融庁に当るMOF、つまり大蔵行政下にあった金融機関として信じられないことだが、毎日毎日支店では平然と違法行為が行われていた。


その一つが「仕切り玉」という手口で、奴隷をこき使うために用いられた大手証券の古典的な手法で、放っておくと怠け者達が、手数料のノルマを達成しないことに対し、絶対服従のための強権行為として、本当に毎日毎日違法行為が正当化され、その代表的な「仕切り」が行われてた。


本来株式の注文とは、顧客から「銘柄、売り買いの別、株数、価格(指値か成行き)など」の発注内容を確認し、「その後(お客からの了解・注文の後)」市場に発注するものであるはずであるが、何故か虎の穴でどの顧客からも一切正式な注文が無いのに、寄付前と言わずザラ場中と言わず、日常的に支店長、次長、一部の課長の判断で、顧客番号をいれずに電話で株式部にまず注文が発注されていた。


当時、虎の穴支店には営業課が5課あり、各課に2~3台の電子端末が既にあった。営業から通常注文を流す場合は、まず顧客からの注文を取り付け、手元の電子端末に顧客コードNOを入力し、銘柄、売り買いの別、値段などの注文条件を入力して、発注を行うというやり方(電子処理)と(これはほとんどインターネットの発注と同じです)、「場電」という支店と株式部の直通電話が次長席に一台だけ存在し、これを使って電話で「石川島10万買う」とか、「日本曹達20万買う!」とか、主に大口注文を先に電話で注文を出し、その後、場電発注済みという処理を電子端末から行うという、2種類の方法で注文が執行されていた。


発注の手順は、当時タイムレコーダーがあり、白紙のペロ(伝票)を10枚程度「バ、バ、バ、バ…」と女子社員が次長や課長の命令の下、タイムレコーダーで打刻していく。何も書いていないペロ(注文伝票)にである。その直後次長や課長が場電を握り締めてなにやら、虎の穴担当の株式部の担当者とヒソヒソ話しており、後で分かったことなのだが例えば帝国石油という銘柄を朝寄付きで20万株注文する客が居るわけでもないのに(先に)買ってあるのだ。これが地獄だった…(続く)