虚夢

「通り魔事件で三歳の娘を失った小説家の三上孝一。犯人は心神喪失ということで起訴されず、マスコミを取り上げず、犯人藤崎について知ることができなかった。

妻佐和子は精神ダメージがひどく結局離婚、書くことができなった三上は風俗雑誌のライターをして酒びたりの日々を過ごしていたが、四年後のある日佐和子から「藤崎を見た!」という電話を受ける」


カテゴリーは一応ミステリーのようですが、ミステリー要素は強くありません。


事件の被害者、被害者家族である三上夫婦の苦悩は痛いほど伝わってきます。

当然犯人が憎い!

何の罪もない我が子を殺した人間。

たった三年間しか生きられず、その後の人生全てを奪った男。

家族の幸せを壊した犯人。

罰を受け、同じ苦しみを背負って欲しい、せめて生きている間中自分のしたことを悔いつづけて欲しい。

そう思うのが普通だと思います。


それが心神喪失ということで無罪放免。(入院はしても病気が改善されたら退院するという)

家族の気持ちはどこに向えばいいのでしょう。

動機のよく解らない犯罪が起こると必ず出てくる精神鑑定ですが、犯罪者全員が受けるわけではないようです。では、誰が鑑定が必要だと見分けるのか。どういう仕組みで行われるのか?

そして私には、解りませんが、その時の精神状態が普通じゃない、犯罪を理解できる状態にあったという判定はどう下すのでしょう?

ふりをしているだけとか、その時の状態がどうだったのかは本人の言葉でしかないような気がしますが・・文中にも出てきましたが、レントゲンなどで目に見えるものじゃないのだから。


そして再び犯罪を犯さないとは限らない。

藤崎のように、犯罪を犯しているつもりはないのかもしれない。自分の身を守るだけのつもりかもしれない。でも結果として罪のない人が傷つけられるのは、やっぱり犯罪なのだと思います。


ここに登場する何人かの精神疾患の人たちのように差別を受けたり奇異の目で見られたりするのは辛いことだと思います。

本人のどうにかできるレベルじゃないところでの差別は絶対許せない。


書いていて段々よく解らなくなってきましたが・・


精神を病んでいる人が差別を受けず、でも犯罪を犯した人はきちんと報道されて罰を受ける、そういう風にならないものでしょうか。


佐和子の決断は、母親として精一杯できる抵抗・復讐だったのでしょうね~とても切ないです。

松岡の存在が唯一救いでした。



この小説の舞台は札幌。大通や伏見、平岸、すすきのなど馴染みの場所が沢山登場。

地下鉄を下りてどこどこへ~とかうんうん!と頭に場所がちゃんと浮かんできて嬉しかったです。