掛川の思い出♪
先週末は、静岡県袋井市の倫理法人会に呼んでいただき、掛川駅から程近い美感ホールで講演させていただきました。
講演は午後からだったので、午前中、掛川城の天守閣に登らせていただき、しばし歴史の世界にひたることができ、何とも言えない幸福な時間を過ごしました
掛川城は、山内一豊&千代ゆかりのお城です。
豊臣恩顧の大名たちを率いて、会津の上杉討伐に出た家康は、自分の留守中に上方で石田三成が挙兵したことを知ります。
彼は、急ぎ上方にとって返し、三成率いる西軍と戦うことを決断しますが、彼が率いている兵たちは、彼の家臣ではありません。
豊臣恩顧の大名たちで、豊臣政権下においては、いわば彼の同僚だった者たちなのです。
家康は、下野(現在の栃木県)の小山で軍議を開き、大名たちの意志を確認しようとします。
大坂で妻を人質にとられた者も多く、正直、彼らの心はこの時点で揺れていたと思うのです。
関ヶ原の戦いでは、西軍に裏切りが続出しますが、実は、東軍にだってその可能性はあったのです。
東軍は、なぜそんな状況で一糸乱れぬ戦いができたのか…。
その最大の功労者が、山内一豊でした。
秀吉が最もかわいがっていた武将の一人・福島正則が、家康に味方することを誓うと、一豊は、ただ味方するだけでなく、自分の城である掛川城を家康に差し出すと宣言したのです
すべてを家康に委ねる覚悟を見せた一豊。
これから家康軍が進軍する東海道筋に城を持つ武将たちは、一豊に倣い、みな一斉に自分の城を家康に差し出しました。
かつて信長が朝倉を攻めた時、背後から浅井が攻めてくることを、浅井家に嫁いだ妹・お市の方の機転で知り、一目散に逃げ帰って窮地を脱することができました。
戦いの時に最も怖いのは、背後から攻められることなのです。
ところが、関が原に向かう家康は、諸将が自らの城を差し出したことで、何の憂いもなく、三成との決戦に集中できたのです。
山内軍は、関が原では、毛利の抑えとして配置されましたが、毛利軍は戦いが終わるまで一発の弾も撃たなかったので、一豊には目立つような戦功はありません。
それが、戦後、掛川6万石の小大名から、一躍土佐一国を領し、20万石の大大名になりました。
名将・家康は、戦いに勝ち、天下を手中に収めることができたのは、一豊のおかげであることを、知っていたんですね。
その感謝のしるしが、土佐一国だったのです。
武将にとって、命とも言える城を差し出したことで、運が開けた一豊。
やっぱり、自分にとって一番大切なものを与えると、その見返りは大きいんですね
ところで、一豊は、土佐入国に際し、20万石に見合った家臣団を編成しなければなりません。
領地が増えるということは、それだけ家臣の数も増やさなければならないのですが、一豊は、家臣の新規募集を、新領地の土佐で行わずに、掛川で行っています。
土佐には、お家取り潰しになった長宗我部の旧臣がたくさんいます。
いわば、彼らは、会社が潰れて失業した人たちなのです。
一豊は、その者たちを再雇用することはありませんでした。
長宗我部の旧臣たちは、農業に従事したり商売を始めたりして生活の糧を得ましたが、自分たちが侍であるという誇りを失わず、「郷士」と呼ばれました。
それに対して、土佐の領主である山内家に仕える侍は、「上士」と呼ばれます。
大河ドラマ『龍馬伝』にも描かれていましたが、土佐藩は、この上士と郷士の対立が激しく、凄惨な歴史が繰り返されます。
そして幕末、藩としては徳川幕府を支える側にまわりながら、郷士の中から多くの勤王の志士を輩出していったのです。
私は、今まで、一豊と千代の夫婦は好きでしたが、経営者としての一豊には、魅力を感じませんでした。
土佐で家臣を募集することが失業対策になるのに、それを怠った…
と、思っていたからです。
でも、今回、たった一日でしたが、掛川の人と風土に触れて、一豊夫妻の気持ちがわかったような気がしたんですね。
きっと、一豊と千代は、掛川が大好きだったんですよ
領国は変わっても、この人たちとともに生きたい…
って思った、だから掛川で家臣を募集してみんなで土佐に入国したんですよ。
私が出会った掛川の人たちは、本当に温かくて、さりげない優しさを持っていて、「自分が、自分が」という人がいらっしゃらないので、掛川に滞在している間、ずっと穏やかな気持ちでいられました。
そして、初めてお会いする方が多いのに、なんだかとても懐かしい気もちになったんです。
きっと、一豊と千代も、私とおんなじ気持ちだったんじゃないかな。
人間は、理屈で生きているわけではないんですもの。
そう思ったら、血の通った人間として、一豊と千代が目の前に現れた気がして、二人が大好きになりました
掛川城は、日本一の出世城。
そして掛川は、おしどり夫婦の一豊&千代が、愛を育んだ地。
出世したい人、愛情運を上げたい人は、ぜひ掛川を訪れてみてくださいね