飛龍と亢龍 | 歴史考察とっきぃの 振り返れば未来

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映画「リボルバー・リリー」主演:綾瀬はるか 時代考証担当
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こんにちは。
歴史家とっきぃです。

前回、岩月謙司氏の話がでたので、彼のエピソードに照らし合わせて、「飛龍」と「亢龍」の話をします。

マンガ『聖闘士星矢』(車田正美/集英社)に紫龍(しりゅう)という、主人公格の少年がでてきます。
この紫龍の技のひとつに「廬山亢龍覇」(ろざんこうりゅうは)というのがあります。
自分よりも格が上で実力も到底及ばない
シュラという敵に使った相打ち技です。
紫龍はシュラを羽交い絞めにして宇宙へと飛び上がります。その摩擦熱でシュラともども消滅しようという、とんでもない大技です。師匠に禁じ手とされた技でした。

亢龍とは、「自滅」を意味する言葉です。
紫龍がどうなったかは、『
聖闘士星矢』を読んでくださいね。

亢龍は『易経』の最初にでてくる「乾為天」(けんいてん)という卦(か)の一番上の符号です。
乾為天」は下から順に潜龍、見龍、君子終日乾乾、躍龍、飛龍、亢龍となります。
最高潮なのは、上から二番目の飛龍です。詳細は、竹村亞希子女史の『リーダーのための「易経」の読み方』を参照。

飛龍のときは、何をしてもうまくいきます。幸運が引き寄せられるようにいいこといいことが続々とでてくるのです。これを「極陽」とも言われます。
でも、極まればまた変化が始まるのが易の教えです。

なんでもうまくいくとき飛龍のとき、だいたい「注意警報」がどこからとなくでてきます
それを無視して「極陽」にまでいっちゃうと、次に亢龍がでてくるというわけです。

極陽になる前に、自らに「陰」をつくる必要があるのです。
例えば、徳川家康。
1603年に、征夷大将軍に就任すると、もうその段階で後継者の選抜に着手しています。
そうやって、「極陽」にならないよう微妙に自己コントロールを自らに課しました。
意見や計画はなるべく周囲に言わせてブレーンの気持ちを立てました。これも「陰」をつくる要素ですね。逆に信長みたいに「おれが、おれが」となると、本能寺という亢龍が待ち受けています。

本題です。
1990年代、「思い残し症候群」や「育て直し」等でマスコミに採り上げられて、一躍有名になり、ベストセラーを何冊も出した岩月謙司氏。
ターニング・ポイントは、『娘がいやがる間違いだらけの父親の愛』(講談社)を2000年に上梓したころだと思います。この本では、聖なる父親は娘の裸体を見ても性的見方はしないという、仮説を展開しています。ところが、現実の岩月氏は、職場である香川大学構内で「タントラ」と称してクライアントと性行為に及んでいたのです。
性的見方がないと性行為はできません。聖なる父親を期待したクライアントに対して不誠実だと言えます。

また、著作も同じ内容のものを量産しはじめて、買う意味がなくなりました。
どこか、舞い上がっていたのでしょうね。
彼は「極陽」をそのまんまいってしまったんです。

やがて、破滅がやってきます。
21世紀の4年目、岩月は準強制わいせつ罪で逮捕され、有罪判決が下りました。大学は懲戒解雇。著作物はほとんど絶版・・・。
大学教授として、著作家として頂点にあったのが、これ以上はないドン底に堕ちたのです。
まさに「亢龍」!

ろうそくの芯」のように、「陰」を保持しながら、つまり謙虚さと感謝を意識しつつ、人生を明るく「陽」でがんばるとっきぃです。