溶けかかっている氷の上をホッキョクグマが餌を探して
彷徨う姿を撮った映像を見て「深く考えさせられる」と
言っている人がいるけど、そういう人は何を深く考えて
いるんだろう。

新潮社 池田清彦・養老孟司「ほんとうの環境問題」
143ページ


4000年前には、今より(地球は)2~4℃ほど温度が高かった
わけでしょう。それなら、4000年前にホッキョクグマは
どうしてたんだ?(笑)

少し暖かくなったらなったで食性も生態も変わるはず。
そう考えないと、なぜ4000年前に絶滅しなかったか
わからないよね。(144ページ)


気候変動問題を科学者から取り上げたのは政治家だ。
政治家が間違った情報を国民に伝え、産業界が「エコ」という
新ビジネスに群がっている。

なぜ科学者に真実を聞こうとしないのだろうか。
その素朴な疑問に科学者の二人が答えてくれている。

地球は有史以前にも何度も大きな気候変動を経ながら、
現在の生態系を形成してきた。多くの種が絶滅しながら、
また同時に多くの種が危機を乗り越えてきたのだ。
ホッキョクグマもそうなのだ。

また、地球の気候変動は太陽活動の強弱に影響を受けている。
現在は太陽活動が弱まる方向にあり、
長期的には地球は「寒冷化」の方向に進んでいる。

二人の科学者は、そもそも地球温暖化が大きな問題であるのか
疑問を呈している。

気温が1℃上昇しただけでマラリア感染症の危険が増すということ
を言う人もいる。しかしそれもウソである。
たとえば日本でも江戸時代までは本州の北のほう(山形など)でさえ
マラリア感染者の例は多かった。

マラリア感染に危険があるかないかというのは衛生的な
インフラ整備がなされているかどうかの問題であり、
気温との直接的な関係はないのだから当然である。(119ページ)


地球温暖化の影響によって今後、海面が35センチ上昇する
というけれども、もともと日本では冬と夏とで、海水面の
高さの差は40センチもあるのだ。

あるいはそもそも、一般に、満潮時と干潮時では水位の差は
2メートルにもなる。それに比べればこれから100年の間に
海面が35センチ上昇することは、どれほど大きな問題なのか。
(121ページ)


京都議定書を守っても日本が地球の気温上昇抑制に寄与できるのは
0.004℃なのだそうだ。この本はCOP15以前に出版されたものだから
コペンハーゲンで日本が約束した、CO2排出量を対1990年比25%
削減に成功した場合、どれぐらい気温上昇を抑制できるのか。

エコカーに関する言及箇所からの引用である。

ハイブリッドカーは、普通の車と比べて、どれくらい耐用年数が
長いのか。どれくらい燃費の節約になって、それは初期投資(その車
を作る時に普通の車より余分にかかるエネルギー)をどれくらい
カバーできるのか。普通の車と同じような走行距離を乗っただけで
廃車にしてしまったら、結局、それはちっともエコロジカルではない。

ハイブリッドカーが良いということを喧伝したり報道したりする人は、
それを考えさせるような説明をまったくしていない。(88~89ページ)


ペットボトルのリサイクルについては、

捨てられたペットボトルが回収された後、その全部がちゃんと
リサイクルされているわけではない。実際にはペットボトルは
かなりの割合で燃やされている。ペットボトルを燃やしてしまっても
深刻な環境被害をもたらすような有害物質が大量に発生する
わけではないし、特に大きな問題はない。

ペットボトルは、むしろ、燃やしてしまったほうが良いのである。
特に、ペットボトルは、生ゴミと一緒に燃やしたほうがかえって
効率が良いのだ。

生ゴミにペットボトルを混ぜると、ペットボトルが熱源になる
おかげで生ゴミは燃えやすくなる。

分別をするのにもエネルギーが要るし、金も要るし、人手も要る。
それに見合わない回収をしてリサイクルをすることは、回収と
リサイクルそのものを目的化する人たちの利権を生み出すだけ
なのである。(55ページ)


この本を読み多くの既存の価値観に不信感を抱いた。
メディアが発達した現代では、価値観や倫理観を短時間に造り出し
広めることが可能だ。

こどもたちに健全な地球を残していくために、科学者でない私に
何が出来るのか。それは多くの人の話を真摯に聞くことだ。政治家や
科学者だけではない。発展途上国の人や農家の人、漁業の人・・・

エコ産業に従事する人の話も、疑うことから始めるのではなく
同じように真摯に耳を傾けなければ、フェアーであるとは言えない。

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