《憲法9条改憲》で一変する「私たちの日常」~財界と御用議員による改憲推進の背景~(2-前編) |   「生きる権利、生きる自由、いのち」が危ない!

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徳冨蘆花「謀叛論」を再発見してたら、
「ソクラテスの弁明」が、なぜ好きなのか、最近になって納得し始めた今日この頃です。



2008年に刊行された
島本慈子『ルポ 労働と戦争』は、
九条改憲》によって、自衛隊員ばかりでなく
地方公務員や気象庁などほかの公務員も、
また大学教員も、パイロットも、
製造現場の従業員(正規・非正規)も、技術者も、

じつは「その労働」が、そして「私たちの日常」が、
一変してしまう”ことを、社会に訴えかけています。


たとえば、
1997年の「新ガイドライン体制」は、
海外でのアメリカの軍事作戦を、
日本の軍隊全面的に後方支援するための体制
だったようです。


渡辺治増補 憲法「改正」』では、つぎのような、
非常に興味ぶかいことが書かれてあります。


もともと、戦争というのは
前線後方支援とが一体となって行われるものです。
とくに、侵略戦争の場合には、他国に侵攻して戦争するわけですから
後方部分決定的に重要となります。
一例をアメリカのイラク侵攻作戦にとってみましょう。
イラクの場合、13万5000人の軍隊が1年以上駐留しています。
そのために大量の武器・弾薬が必要であるばかりでなく、
13万5000人の食べる1年分以上の食料が必要ですし、
カウンセラーコンピューター休養施設など
生活するためのさまざまな施設が必要ですし、兵器の修理も必要です。
今の兵器
85コンピューターからできている
といわれていますから、
その修理能力を持った施設が必要です。
いわば13万5000人の小アメリカ国家が、
イラクで生活をしながら戦争をやっている
ということです。
そうした兵站(へいたん)部分日本が面倒みましょうというのが、
新ガイドラインのコンセプトでした。”
(渡辺治『増補 憲法「改正」』  P.61)


現代兵器大部分を、ハイテク製品など民生品
応用的構成している実態に関して、
あるいはまた
現在の「ハイテク兵器の裾野の広さ」から、
現代兵器にも関係している実態についてを、
島本慈子『労働と戦争』は、
その本タイトルからして教わるところや学ぶところが
非常に大きく多いです。


労働と戦争との関係について、
科学技術史の研究家である、
武庫川女子大学の三宅宏司教授による説明を、
紹介してくれています。



現在の「ハイテク兵器」の裾野の広さについて。
三宅さんは「裾野が広いのは軍需だけではない」ということを
丁寧に説明してくださった。

 「松下でもシャープでも、川崎でも三菱でも、
全てを自社でつくれるというものではありません

レンズはレンズ、シャッターはシャッターでつくっている会社があって、
さらに細かくいうとシャッターを押す手の部分だけ
あるいはファインダーだけをつくっている会社もあります
電機会社電気製品を作りますが電線はつくれないし
電線をつけるハンダもつくれないですよね。
また電子基板のベークライトは、
合成樹脂の会社頼まないといけない
バネはバネ屋、ネジはネジ屋、ワイヤーはワイヤー屋
だから軍需品にかぎらず民生品でも、
最先端の製品であるかぎりどうしても関連裾野は広くなります

 これから、液晶プラズマに代わって、
有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)が出てきます。
これは電気信号を加えると光りだす物質で、使用電力が少ない、
立ち上がりも早い、ドットも細かいなどさまざまな利点があって、
やがてはテレビもこれになるだろうと言われていますが、
その有機ELにしたって一番手前にはガラス板がいる
それにはガラスをつくる会社が必要なわけです。
もちろん大企業でなければできないことは多いですが
ひとつの製品
大企業だけでできあがるものではない、ということです。

―――それでいま、日本の「ものづくりの現場」は軍事に
どのように関わっているのかということを知りたいのですが、
液晶パネルだってプラズマディスプレイだって、
イージス艦のパネルにとか、戦闘機や戦車内部のパネルにとか、
どうにでも使えますよね。

 「いま軍需産業民生産業の間に線を引けるかといえば、
これはものすごく曖昧です。
霧のようなものかかっているというか、
たとえばずっと前、ベトナム戦争のころ
ソニー小型のビデオカメラを出したことがあります。
当初は日本人向けではなかったんです、
日本はまだ八ミリ映写機の時代でしたから。
それをアメリカ向けに売り出したところ、思いのほか売れた
それで、会社の人たちがアメリカへマーケット調査に行ったところ、
一般家庭学校には全然いきわたっていない
それなのに売れている
どこで売れているんだ』といことを調べたら、
実は米軍が買っているということがわかった。
[動いている敵の戦車とか軍艦とかに命中させるために]
・・・ロケット[弾]自体にそういう機構を組み込まばいい。
そのためには敵が見えていないといけない。
よってそのビデオカメラロケットの弾頭つけた
ロケット弾の目として
当時のアメリカ
そいう小型のビデオカメラつくれなかったですから、
これはいいものが出た!』ということで、
ロケット弾の頭つけたわけです、日本製のビデオカメラ
敵を見ながらコースを補正するという、
いまの巡航ミサイルみたいなものですね。
現在から見れば幼稚ですが、いわゆる『誘導弾』になった。
ソニーはびっくりしたそうです、
民生品として売り込もうとしていたんだから。

 つまり民生品をつくったつもりでも、
その時々で一番いいものがほしいわけで、
軍需品民生品一〇〇%の線引きはできない
民生品軍事に使えるものはいくらでもあるし、その逆もまたある
(引用者中略)

―――じゃ、日本のパチンコ玉も使いようによってはミサイルになる、
ということですよね。これは冗談ですけど・・・・・

「ものは使いよう、頭も使いようというが、
使っている側の意図で全く違うものになってしまう。
それくらい、ある意味で複雑になってしまっている
そういう時代なんだと思います、・・・・」”
((『ルポ 労働と戦争』 P.46-49)


“―――自分のつくっているものが兵器だということを実感できない
というのは、どういう仕事なのでしょう?

「それは全体のなかの一部部品をつくる仕事です。
たとえばPAC3、パトリオットミサイルであれば、
最終的には名古屋で組み立てますね
そこで組み立てる人は形になるからわかるけれども、
それまでに部品だけを提供している人は
分のしていることが何になるのかよくわからない
組み立てられたのを見て
初めてあっこうだったのかと気がつく
それでね、部品の段階で各技術者
最新鋭のものをつくるために努力しますね
本当に努力する
軍需生産一番恐ろしいのはそこだと、僕は思うんですよ」

 久村さんのこの指摘を聞いて、
私は別の造船会社で軍艦(護衛艦)建造を担当していた男性の話を
思い出した。
その方もこう言ったのだ。
造船には多くの職種があって
溶接する人曲げる人それをつなぐ人居住区を整備する人
という風に仕事細分化されている
だから船をつくっているという感じはしないわけよみんな
細かいパーツを担当するわけだから」と。

 兵器は進化してゆく。
そして兵器進化は、・・・「仕事の細分化」を意味する
兵器高性能になって破壊力が大きくなればなるほど
れをつくる人々バラバラに分解されていき
自分の仕事もたらす結果が見えなくなっていく

 働く人々バラバラの破片となって視野狭窄に陥ることを
防ぐためにも、
仲間うちで素直に意見を交わすことが必要なのだろうが
それだんだん困難になってきている。”
(同書 P.76-77)


コンピュータ制御システム最新レーダー技術
搭載される多機能カメラ。航空祭の会場に少し立っているだけで、
現在の戦争
ハイテク産業の支えなくしては成り立たない
ことがわかる。
それは、「ごく普通の仕事戦争支える」ということでもある
(引用者中略)
 自衛隊への納入企業について・・・(中略)・・・
ここにあげたのは取引額の上位一五社だが、
これらの大企業その傘下多くの下請けを抱えている

 たとえば取引額トップの三菱重工業で特車を担当する副事業部長は、
戦争千社で作っているといわれておりまして
子請け孫請け千二百社から部品材料購入しています
と語っている(『軍事研究』二〇〇八年三月号)。
戦闘機の場合、その裾野はさらに広く
下請け企業の数二五〇〇社にのぼるという。
そして、戦車・戦闘機・軍艦・ミサイル使われる部品材料」の中には
一見、軍事とは縁のなさそうなもの多く含まれている

 そのことを一般に広く知らせたのが一九九一年の湾岸戦争だった。
イラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸戦争は、
巡航ミサイル・トマホーク地対空ミサイル・パトリオット
F117ステルス戦闘機など、
アメリカが開発した新世代兵器の展示場という趣を呈した。
そしてそれら新世代兵器心臓部分には電子技術組み込まれ
そこに日本の半導体セラミック製品大量に使われていることが
わかったのである。

 湾岸戦争の当時、
米国の兵器組み込まれている」と報じられた日本製品は、
京セラセラミック・パッケージ(IC=集積回路を保護するもの)、
日立製作所日本電気富士通半導体製品など
またイラクが持つミサイルの目に当たる部分に、
ミノルタ大ヒット商品・全自動カメラの自動焦点技術
無断転用されているのではないか(引用者:「特許・知的財産権」は
TPPの眼目の一つ)
、という疑惑も報じられた。

 それら日本製品軍事用に開発されたものではなく
その気になれば軍事にも使える」という“汎用品”である。
同じモノでも使い方があまりにも異なる様子を、
新聞は
同じ半導体を、
米国ピンポイント爆弾の精度を高めることに
日本電気がまをより便利にすることに生かした」と論評した
(『中日新聞』一九九一年一月二二日付)

 その湾岸戦争から年月が流れた。
産業のコメ”と呼ばれ、民需品にはもちろん、
兵器部品としても欠かせない半導体製造現場は、
雇用の流動化によって様変わりしている。

(引用者中略)

 いま新聞に折り込まれてくるチラシ、コンビニに置かれている
無料の求人情報誌を見ると、「電子部品の製造
半導体部品の製造・検査」「ICチップ製造スタッフ
半導体製造装置オペレーター」などで
契約社員派遣社員を募集する広告が目につく。
インターネットの検索サイトに
派遣社員」「半導体」をセットで打ち込むと、
山のような求人情報が現れる。

 雇用破壊にようやく関心が集まってきた最近は、
新聞・雑誌の記事やさまざまな出版物でも、半導体関連の職場・・・で
非正規雇用として働いている若者たちの「一方的な雇い止め
といった受難が取り上げられている。
そして、
そういう職場で事故にあう派遣社員の報道も見られるようになった。
(中略)
 ハイテク兵器支える末端の部分を、
非正規雇用の人々下請け会社の人々担っている。”

(同書 P.38-44)



以上の引用から、
現代の兵器というものは、
ハイテク化」が進めば進むほど
兵器への民生品応用」が進み
細分化分業化」も進むことから、
民生品との線引き」が難しくなり
また兵器への民生品の応用を避けられない事を、
私たちは知ることができます。


そこで、ですが、
ならば、
“現代兵器と民生品との線引きが
難しくなっているから、
軍需産業への従事関与の深刻化を、
私たちは避けることができず、歯止めはない
と言えるのかどうか、という問いが起こってきます。

『ルポ 戦争と労働』のなかで、島本慈子氏は、
<日本経団連防衛生産委員会>による、
過去の公表数字を踏まえて、
ある「日本の個性」を教えてくれています。

それは、ほかの先進国に比べて、
軍需関連に従事する民間労働者の数割合が、
圧倒的に少ない”という事です。

日本国内防衛産業に従事する労働者数>は、
約6万人で、
アメリカにおける軍需関連の労働者数>が、
約360万人で、
「労働者の軍需関与割合」としては
日本の30倍”もの労働者が従事。

フランスにおける軍需関連の労働者>は、
約100万人で、
「労働者の軍需関与割合」で見ると、
日本の33倍”になると言います。

GDPに占める軍事支出の割合は1%で、
そして憲法9条が解釈により、
ボロボロの旗竿状態”で今日にありながらも、
それでも軍事支出額は、
すでにドイツ以上・フランス並み
軍事大国なのでありますが、・・・・・
http://milexdata.sipri.org/files/?file=SIPRI+milex+data+1988-2012+v2.xlsx

日本の人々が日々の暮らしをたてている労働に目をあてれば、
軍事大国とは全くかけ離れた存在、先進工業国でありながら
兵器生産に依存していない特異な存在
それが「この国のいま」である。
日本はやはり普通の国ではない
 [ジャーナリストの]吉田敏治さんは、先に述べた講演の中で、
内戦地域いろいろ兵器が使われているなかで、
日本製の武器はひとつもなかった」と語った。
(中略)
 世界で起きる数々の内戦そこで流される人間の血は、
各国が供給する武器によってもたらされているわけだが、
しかし日本製の武器は見たことがない」と吉田さんはいう。
「戦前に製造された古い三八銃とかが、
かつて日本軍がいた地域に残されているといったことはあるんですが、
戦後の日本がつくった武器というのはひとつもなかったですね
 この事実を「国際社会において名誉ある地位」と考えるか、
あるいは
バスに乗り遅れるな」と普通の国への道を走っていくのか。
これは一人ひとりが考えるしかないことだが、
ただ、後者の道を走り出した場合、「もう二度と後もどりできない
ということだけは覚悟しておく必要がある。
(同書 P.93-94) ※強調は引用者。 枯葉剤などは除く)”


その吉田敏浩氏を中心としたシンポジウムで、
全日本造船機会労働組合三菱重工支部の
久村信政氏が、
次のような発言をしたようです。


“「若い人がどういう思いで兵器をつくっているかというと、
兵器といのは最先端の技術なんです。
そういう意味では非常にプライドのある仕事なんです。
ところが、その誇り何で支えられているかというと、
国を守る』ということなんですね。
だから『守るものならいいが侵略するのはだめだ』と、
はっきりそうは言わないけれど、そんな意見があるのは間違いない
ところがそういうことを議論していると
(会社の内部が)ガタガタになりますから、
それをいろいろな方法で押さえこむ
職場で自由にものが言えないわけですから
精神障害の疾病ぐ~んと増えましたここ二三年
それから内臓疾患
そんな状態がいま
兵器生産に限らずどの職場にも蔓延している
(同書 P.72-73)


2006年秋のこと、
島本慈子氏の講演会での、ある青年の発言が
紹介されています。

“「派遣社員で工場に勤めています。
そこには自衛隊部品納入しています
基本的に『憲法九条が大事だ』なんて言える状況じゃありません
工場の上司から
反戦集会なんかで新聞に顔が出たらクビにする』と言われました。
 こういう僕って哀れですか。
家族にも力がないし、どうしても僕の収入が必要なんですよ、
どうしても、ずっとずっと仕事がなくて、その間は恐ろしくて、

やっと月十数万の派遣の仕事につけた
だから、顔をさらして反戦集会をするなんてことはできない・・・」
 簡単にクビを切られる派遣社員という立場の弱さ
さらに・・・・軍需関連企業に特有の厳しい言論統制
その青年は、二重の圧力に苦しんでいるらしい。
それでも彼は、戦争について考える集会があることを知って、
わざわざ足を運んだのだ
。”


この悲鳴の軋みをあげている良心を、
私たちは、この動画でのインタビューでも触れました。

黙殺された抵抗~映画「標的の村」


若い子たちの沖縄への支援参加には、
自分たちは「加害者にはなりたくないんだ
という意識があることが、
このインタビューから分かります。


自分の仕事が殺人(への加担)に繋がる」ことに
ヒトは強い抵抗感があり、
そうした健全な感覚からくるリアクションが、
『労働と戦争』には出てきます。

ひとつは、
無関心そうした現実から目を背ける」反応。

そして先ほどの「精神疾患内臓疾患」。


この「良心」や「悲鳴」を
経済ジェノサイド政策》や《壊憲》で、
選択肢を奪って殺す”というのは、
昨今における「残酷の最たる一つ」なのでは
ないでしょうか?


そしてまた共通するのは、
財界〉や〈経営者〉また〈閣僚たち〉は、
軍需生産」や「戦場への出兵」に
従事させられる苦悩とは無縁”だということ。


“「広げられた格差によって、
ますます多くの子供たち選択肢を狭められているんです。
ワーキングプアの子供たち戦争にいくのは、
この国のためでも正義のためでもありません
彼らは政府の市場原理に基づいた弱者切り捨て政策により、
生存権をおびやかされ
お金のために
やむなく戦地に行く道を選ばされるのです」”
(堤未果『ルポ 貧困大国アメリカⅠ』(岩波新書)P.107)

グローバリゼーションによって形態自体が様変わりした戦争について、
パメラは言う。
「もはや徴兵制など必要はないのです」
「政府は格差を拡大する政策次々に打ち出すだけでいいのです。
経済的に追いつめられた国民は、
黙っていてもイデオロギーのためではなく、
生活苦から戦争に行ってくれますから。」”(同P.177-178)


“「アメリカ社会僕から奪ったのは25条です。
人間らしく生きのびるための生存権失った時
9条の精神よりも、目の前のパンに手が伸びるのは
人間として当然ですよ。
狂っているのはそんな風に追いつめる社会の仕組みの方です。”
――2000年12月に米軍入隊し、
イラク戦争に派兵された加藤秀樹(仮名)さん言葉――
(同書Ⅰ P.187)”



軍需生産に選択肢なく従事させる」にしても、
選択肢なく戦地に送りこむ」にしても、
新自由主義型コーポラティズム》や《壊憲》が、
絡んでいるのは、一体どういうことなのでしょうか?





(参考記事)
○ 鎌田實 「人間の心のなかには獣がいます」
○ “レプリカント化”に追い込まれていく人類!?