不公平で差別的な
格差税制
「非正規労働者数」(右肩上がりの白点線グラフ)
上図は、ブログ「トヨタで生きる」さんより引用。
http://toyotaroudousya.blog135.fc2.com/blog-category-30.html
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B)一般会計税収、歳出総額および公債発行額の推移(財務省)
<ピンクの線グラフ>:歳出総額(国の支出の総額)
<黒色の線グラフ>:一般会計税収(国に入ってくる収入の総額)
<みどり色の棒グラフ>:公債発行額
(国が発行する債券など。債券発行という形で、おカネを借りる)
http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/003.htm
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D) 実質GDPの推移グラフ図(1980~2012年)
「世界経済のネタ帳」より引用。
http://ecodb.net/exec/trans_image.php?type=WEO&d=NGDP_R&c1=JP-
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ここ20年間ほど、私たち日本国民は、「財政危機」論や「財政破綻の危機」論を、<財務省など官僚>や<政治家>や<識者>また<新聞やテレビなどマスコミ>から、聞かされてきました。
そうした「財政危機」や「財政破綻」の危機論を受け入れて、「一般消費税増税」や「年金・社会保険料の引き上げ」、「社会保障負担増」や「各種控除廃止」などといった様々な”痛み”をガマンさせられている中、”ムダづかい”や”天下り”をしている、とされる<官僚/省庁利権>に対する改革と言われていた「構造改革」や「規制緩和」や「規制改革」を許してきました。
しかし、そもそも「構造改革」や、その一環としての「行政改革」は、「公営・公共事業」を「民営化(市場開放化)」するための一環でしか無かったようです。
庶民が「構造改革」で、貧しくなり、生きづらくなり、”痛み”ばかりを味わされる中、安泰で肥え太っていったたのは、誰にでも入手閲覧できる上のデータを見れば、少なくとも間違いなく<日本経団連>に名を連ねるような<有名な大企業>であることが、見えてきます。
そしてまた「構造改革」や「規制緩和」、そして「1989年の消費税導入以降の日本の税制」というものは、どれも、<官僚>に対してや<国民>のために、ではなく、ひとえに、ごく少数の<大企業>や<その役員の高額所得者>そして<大資産家>の利益拡大ためだけに、行なわれてきているものであることを、見ていきましょう。
「構造改革」とは、「新自由主義」の日本名の一つで、企業が、政府の規制などを解放されて、自由に経済活動をさせるための政策(自由化)です。
自由に経済活動をさせて、何が悪いの?と思うかもしれませんが、企業が自由に活動するのに、<中小企業>や<零細事業者>が、商売を続けられるように、「保護するための保護規制」も無くしてしまったり、また、企業が経済活動を”自由に”行なうのに、<そこで働く人>が、「職場環境」や「労働条件」や「雇用」、「働く人の生活」を”保護する”ための「保護規制」を無くしてしまうことも含まれており、
さらには、「コスト」さながらに、企業の経済活動の差し障りとなる「税金」すら”縮減してしまう”ことも、「構造改革/規制緩和(=新自由主義)」の一環として見てもいいかもしれません。
その「自由化=自由主義化」の一環として、「労働者基準法」自体が改悪されたり、また「労働者派遣法」が制定され、その「労働者派遣法」が改悪される度に、それに伴って、<企業>による<非正規労働者>の使用が増大し、それと同時進行で、正社員の”リストラ”や、パートやアルバイトや派遣労働者や請負労働者など<非正規労働者>に”仕事を脅かされて”、<正社員>の「職場環境」や「労働環境」や「賃金・労働条件」も”蝕まれ”ていきました。
その「構造改革」や「規制緩和」の素になっている「新自由主義」を正当化する思想に、「トリクル・ダウン・エフェクト」というものがあります。「トリクル・ダウン」というのは、「ぽたぽた滴(したた)り落ちる」ことを意味し、”大企業や富裕層が儲かれば、その富のお零(こぼ)れが、下層にも滴り落ちる”というもで、その事から、<政府>が、<富裕層>や<(大)企業>に、”経済活動を、「自由」に展開できる”ように「保護規制」を”緩めたり無くしたり”、また「所得税最高税率」や「法人税」を”減税”すれば、<大企業>や<富裕層>が”儲かり潤(うるお)って、そのお零れが、その下層も、こぼれ落ちていく”という事なのですが、現実は、まったくそうなっていません。いま実際に起こっているのは、<超富裕層/大企業の一人勝ち>と<中小零細企業/一般庶民の困窮化>との「格差二極化」です。
「新自由主義」政策の一環で、雇用や労働条件を保護する労働諸規制が”緩和された(労働力が流動化された)”せいで、「リストラ」や「非正規雇用の代替増加」で、「雇用不安定化」が起こり、<働き手>の”立場は弱く”なり、「民営化への参入」で儲けようが、「減税」で利益が増えようが、それで儲かる<大企業>の<役員>や<株主>たちが、その儲けを”一人占めし”、下層の<働き手>や<下請け業者>には、”競争激化の不安定化の中”、「買い叩かれる」だけで、そのおこぼれに与(あずか)る事はないのでした。
「構造改革/規制緩和」という「新自由主義」政策と「減税」でもたらされた「大企業の儲け」は、
①「役員の報酬」、②「株主配当」、そしてその残りのほとんどが
③「内部留保(企業内の儲けの蓄積)」になるだけで、
「儲けの公平な分配」は、起こらないのでした。
その事から、「法人税率の引き下げ」と「所得税最高税率(高額所得者に対する課税)の引き下げ」とで”減税された分”、一般会計税収が「減少」し、その税収の減少を「国債発行の増刷」で賄わざるを得なくなるのですが、その「国債増刷」の元凶を、(税制のフラット化による)「減税」政策にではなく、
すべてを<省庁>に帰せてきたのではないでしょうか。いわく”景気が悪く、社会負担増大と切り捨てとで、庶民が苦しんでいるにもかかわらず、省庁の官僚
は、国債発行を増大させてまで、ムダ遣いをしている”と。「予算のムダな使われ方があること」は事実だとしても、「すべて官僚の省庁のせいに帰せて」もいいのか
、という観点を持つために、
押さえておきたい点があります。
ポイント1)
グラフ図Aを見ると、”非正規労働者数が増加”し、
”民間労働者の賃金総額が下降していっている”。
ポイント2)
グラフ図Bを見ると、
1991年(平成3年)以降、
”一般会計税収が下がっていき”、
そして税収減とともに”公債発行額が増大している”。
ポイント3)
にもかかわらず、グラフ図Dを見ると、
日本の実質GDP(国内総生産)は、
ちゃんと右肩上がりに増大している!?
グラフ図Aをもう一度見ると、
棒グラフの「内部留保(企業内の儲けの蓄積)」も、
右肩上がりに増大している!?
ポイント5)
「実質GDP」は上昇しているし、
「内部留保」も増大しているのに、
グラフ図Cを見ると、
<一般消費税>の税収が、
約10兆2000億円とあるように、
税など歳入全体の11%を占めていて、
「内部留保」が右肩上がりに増大している企業に対して課税する<法人税>が
税収など歳入の8.4%しか占めず、
つまり<法人税>よりも<一般消費税>のほうが
”税収が大きい”!?
この以上の一連のポイント群を見ていったことで見つけたこの矛盾を、
国公労連 2012年版「税制改革の提言」による分析報告が、
氷解してくれます。
”資本金10億円以上の大企業は7005社、
全産業のわずか0.27%に過ぎない。(中略)
2010年度における全産業の内部留保は442兆1968億円、
大企業の内部留保は、260兆9260億円となっている。
わずか0.27%しかない大企業の内部留保は、
全産業の59.0%を占めている。
この10年間で全産業の増加額150兆2925億円に対し、
大企業の増加額は91兆4615億円、
大企業の全産業に対する増加額の比率は60.9%を占める。”
(「国公労調査時報」2012年1月号 NO.589、P.26)
それもそのはず、国公労連『税制改革の提言』(2009年度版)によれば、
<大企業>のほとんどが採用している「連結法人」形態だと、
その「連結法人」に対する実質税率は、”1.7%”と、極端に低い課税率になっています。
「連結法人」に限らず、<資本金100億円以上の法人>も、
その実質税率は、”4・8%”というように、
「財務省試算」の<連結法人への「実効税率」>試算の”28.0%”や、
<資本金100億円以上の法人への「実効税率」の”27.7%”という「財務省試算」とは、大きくかけ離れた”<ひと握りの大企業>に有利になる仕組みの”「実質税率」に実態が、暴かれています。
この「実質税率」の実態は、日本における<大企業>を取り囲む「法人税率」が、”国際的に見ても低い”と言えて、”日本の法人税率が高いから、企業が海外に流出する”という理屈の破綻を意味します。
しかし、”「巨悪」や「権力の根源」として悪名高き”「財務省」ですら、
なぜ”大企業に有利な「実質税率」”を、
試算結果で、国民を欺き、隠す必要があるのでしょうか?
「構造改革」など「新自由主義」政策の他方で、
「消費税増税」ばかりか、「各種社会保険料の引き上げ」、
「各種控除の廃止」、「自己負担の増大」など、
”痛み”をともなう政策で、デフレと窮乏に悩み、カツカツだったのは、
”我々庶民と中小企業だけ”で、
<ひと握りの大企業>と<その役員の高額所得者>は、
「大減税」と「減税特別優遇措置」、
「規制緩和」および「構造改革」の新自由主義政策に擁護されて、
かつてない空前の儲けを獲得しています。
たとえば、痛みを強いられてきた<私たち一般国民>の他方で、
”「所得税」での<高額所得者>への優遇ぶり”を確かめるために、
<一般消費税導入前の1985年の「所得税最高税率65%」>と、
<2005年分の「所得税最高税率37%」>とを比較すると、
「課税所得2000万円以上の納税者(所得税申告者の0.03%)」
にあたる約27万7千人もの人々に対する”減税額の合計”は、
1985年と比べると”2兆133億円(減税分だけで2兆円超)”
に達するのでした。
この”減税額分”は、同じく小泉政権時代における<私たち庶民に対する増税(控除廃止・負担増・給付削減。ただし、定率減税の廃止分を除く)の1兆7000億円弱>よりも、大きく上回る減税金額だという事を、税理士で財源試算研究会主査の富山泰一氏は試算しています。
小泉政権の5年間で、「大企業の役員報酬」は2.7倍に拡大、
「株主配当」は2.5倍に拡大しています。
(2005年度「証券優遇税制」導入(税率20%→10%))
”一般国民や弱者を困窮させる”一方で、
”大企業・高額所得者・資産家たちには優遇して富ませる”だけの、
現状の財政構造をして
富山泰一氏は、”上流にいる<ひと握りの金持ち>に、ダムを作らせて、カネを貯めさせている」構造であり、
「一般消費税」は、<大企業や高額所得者や資産家>が、
”税・社会保障負担を免れさせる”ために、
<庶民や中小企業>に犠牲を強い、負担させることの一環でしかないことを指摘しています。
「一般消費税導入の1989年」を境にして、
税や社会保障の在り方や体系が、
まったく変容してしまいました。
それは「グローバル化 以前以後の日本」
あるいは「規制緩和・構造改革 以前以後の日本」さらながらに、
まったく構造論理が異なるものなのです。
少なくとも、生存権を保障する<憲法25条>を日本国憲法は保障していますが、「弱者切り捨て」社会保障政策ばかりか、「一般消費税」自体が、この「憲法25条」に接触しさえしています。
しかも、一般国民だけを犠牲にして、大企業や高額所得者や資産家などの”さらなる富裕化・権力増大化”のために、です。
それを、参政権の負託を受けて国会で実現してきたのは、誰ですか?
それを、さらに進めようとしているのは、誰ですか?
憲法25条など日本国憲法は、
じつは「累進課税」税制による「所得の公平な再分配」がとられてこそ、
はじめて成り立つものではないか、と思われます。
所得税や法人税など「直接税への課税」を中軸とし、
(赤字経営には法人税は取りようがない)
それでこそ、
はじめて社会保障の財源が賄われるようになっているはずです。
それにもかかわらず、この20年余、
そうした「日本国憲法違反の税制」が進められてきました。
そうした欺瞞的で残酷な税制体系の構築は、
ひとえに、国民を騙したり、本質から他のことに目を向けさせて、
問題をすり替えることで、はじめて可能になってきたのではないでしょうか?
それを物語る一つの例が、
<一般消費税(間接税)>のほうが、
<法人税(直接税)>よりも、税収が高い
という現実の成立なのです。
こうした<国民>と<大企業>とで対応を使い分けた
不公平な税制の実態を、マスコミが、国民に教えれば、
国民の反発や怒りを買い、税制が、
一般消費税導入以前の「累進課税」税制に戻されるなんて、
<大企業>からすれば、
広告料を大量に投入して買収している<マスコミ>という
”飼い犬に手を噛まれる”ようなものです。
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補足資料チラシ)
使い分け「二極化不公平」税制の実態(補足チラシ用)