小説(?) 『室町幕府開創期のあれやこれや』 4 | 日本中世史を楽しむ♪

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―武士道と云は極道と見付たり。―

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  『室町幕府開創期のあれやこれや』


  第5話 「貞和元年(1345)のある日の出来事の続きの出来事」


直義 「ごちそーさまでした」
少年 「ごちそーさまでした」
師直 「ごっそさんでした」
 直義は少年の顔を見た。
直義 「さて」
少年 「・・・・・・」
直義 「さっきも言ったように、お前は、今日から、オレの子になれ」
師直 「すいませ~~~ん! 水くださ~~~い!」
直義 「にィちゃん(尊氏のこと)は、いろいろ立場があるから、
    すぐに、お前と会うことは難しい」
少年 「はい」
 侍女が水を運んで来た。
師直 「あれ? お前、初めて見る娘(こ)だね?」
直義 「オレは、今」
侍女 「はい。昨日からお仕えしてます」
直義 「幕府の政務を執る立場にある」
師直 「そーなんだ? オレのコト、知ってる?」
直義 「だから、オレの子になれば」
侍女 「執事様ですよね?」
直義 「お前も幕府でチャンとした」
師直 「そー、そー。征夷大将軍家執事様」
直義 「立場を得られるし」
師直 「それにしても、かわいいね」
直義 「朝廷からも」
侍女 「まあ、ご冗談を」
直義 「官位・官職も戴ける」
師直 「マジ、マジ」
直義 「お前の今後を考えれば」
師直 「肌も真っ白でキレイだね」
直義 「うるさいな!」
師直 「わあ! びっくりした!」
直義 「だいじな話! してるンだから! 空気! 読んで!
    少し! 黙ってろよ!
    だいたい! オレの目の前で! オレんちの侍女!
    ナンパするって! どーゆー神経だよ?!」
師直 「すいません。んじゃ、オレは、この娘と、あっちの部屋に」
直義 「行くンじゃねェーーーよ!
    ウチの侍女に! ナニする気だよ?!」
師直 「じゃ、帰ります」
直義 「帰るなよ! ただメシ喰って! 侍女ナンパして!
    帰ったら! やりたい放題じゃねェーか?! ナニ者だよ?!」
師直 「じゃ、どーすれば、いいンすか?」
直義 「だから! 黙って! チョット! 待ってろよ!」
師直 「はあ」
直義 「これから! オレが! 烏帽子親になって! この子を!
    元服させるの! お前は! 見届け人! わかった?!」
師直 「わかりました」
直義 「じゃ! チョット! 待ってて!」

少年 「・・・・・・」


 その夜、足利尊氏の庶長子である少年、新熊野丸(いまくまのまる)は、叔父足利直義を烏帽子親として元服し、実名に直義の偏諱(へんき 実名の1字)を与えられた。
 その儀式を見届けたのは、高師直ただ一人であった。


 直義の烏帽子子、そして養子となったこの甥こそ、後の室町幕府分派「佐殿方(すけどのがた)」の首領、足利左兵衛佐直冬である。



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題 「知らないおじさんたちが恐かった」(by Jさん)


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