走・攻・守の三拍子が揃った若トラは、今のタイガースにはいない。
みんな、発展途上人だ。
つまり、これからの人だ。

どこかに問題や改善の余地があるからこそ 二軍にいた訳だから、使う側も 見る側も そこを分かった上で 新井良や上本、坂、柴田などのプレーを見てあげる必要がある。

彼ら若トラが試合でミスをするのは、将来 タイガースを背負って立つ中心選手になる為に、避けて通れないプロセスである。

「ミスをしないと覚えない事がある」
「失敗をして覚える事がある」

それを、1つや2つ ミスをした位で 鬼の首を獲ったように騒いだり ミスをしたらダメだ、ミスのない野球とか、目先しか見えないマスコミ報道は、関西のマスコミの悪い所だ。

若いから、ミスをする。

若トラが成長するには、数多くの失敗や成功体験を通してしか得られないモノが たくさんあり、みんな、そういう過程を経て、一流へと育つ。
見る側も、ある程度、覚悟して見て欲しい。

「若い選手に、取り返せないミスはない」
「失敗は、成長への過程」
未熟者なのだ。

むしろ、試合でミスをした若トラを責めるのであれば、本当に責められるべきは、今までの指導者達だろう。

上本にしろ、坂にしろ、柴田にしろ何年もプロの世界にいながら 今のレベルである。
中谷、伊藤などは、プロ野球界に入って悪くなってる。

本人達だけの問題では、決してない。

実戦に繋がる練習をしているか、疑問である。

例えば、内野ノック。
試合で内野に飛んでくる打球は、普通 トップスピンの回転で飛んでくる。
ボールの上っ面を叩く為、強烈なトップスピンになる事が多い訳だが、阪神の内野ノックの打球は 大方 バックスピンである。
ノッカー(ノックを打つ人)の打ち方が、カット打ちなのだ。
また、試合で外野に飛んでくるクリーンアップの打球は、芯に当たると、瞬間の飛び出し速度が150キロを超える。
阪神の ノッカーが打つ打球とは伸びも質も違う。
つまり、若トラにとって、練習していない打球が、試合では飛んでくるのだ。

しかし、阪神のコーチは、ノックを打ちたがる。
若トラは、守備練習の大半をノックの時間に取られる。
そして、試合で、ミスをすると、又、ノックの時間が増える。
まだ、内野手は、ノックで覚える事があるから良いが、外野手だったら、試合とは、全く、違う打球の練習を延々としている事になる。

試合で結果を出す為に練習するのである。

“何の為に”“誰の為に"
練習とは、誰かの自己満足の為ではなく、ただの体力の消耗でもない。

「理にかなう練習」

若トラに、今 必要なのは 批判ではなく、正しい道を照らしてくれる指導者だ。




(野球評論家)
広澤克実